#31
(そうか、そういうことだったのか!)
降りてきた原作知識が教えてくれたのは全ての謎を解く重要な鍵となる事実だった。そして、それは俺達が今後生き残るためにも大切な情報だ。
(でも、どうやって皆に伝えたらいいか……)
俺が鬼人達がここを目指す理由を突然閃いたというのはあまりに不自然だし、誰も信じないだろうしな。
「ふむ、ロイドの家は随分荒れておるようじゃのぅ……」
俺が考え込んでいる間に話はウェルズリー家の現状へと変わっていたようだ。
(魔物が増加したせいで物流が途切れたことによる物価が急上昇。それにより生活に困る民が増え、治安が悪化。それにより更に物資が手に入りにくくなる……悪循環だな)
だが、ウェルズリー家は原作通り順調に破滅に向かっているようだ。
「今頃父様は兄様の凄さを思い知っていることでしょう」
「確かにロイドがおれば今の苦境も何とかなったじゃろうな」
ウェルズリー家では”行商人の代わりにしかならないクズスキル“とか“誰でも出来ることしか出来ないハズレスキル”とか言われてたけどな……
「まあ、昔のことは良いよ。ここでの生活は気に入ってるしな。今はこれからのことを考えないとな」
「そうだね、ロイド!」
だが、そのためには鬼人達と接触する必要がある。一体どうしたものか……
「しかし、鬼人が来ぬということは急いで村の防御を固める必要はないということかの?」
「確かに……まあ、しておいた方が良いとは思うけど今すぐじゃなくても良いよね」
……!!!
(いや、逆だ。今まで以上に急がないと!)
実はウェルズリー家を襲う魔族の襲来と鬼人達は無関係じゃない。鬼人達が伏魔の森の近くまでたどり着いたということは魔族の襲来が近づいているってことだ。
(伏魔の森には魔族は来ないはずだけど、魔物の動きが活性化する可能性はある)
俺達の村はセーフゾーンに作ってあるから安全なはずだが、それも状況が変われば分からない。それに伏魔の森に魔族が来ないというのもあくまでウェルズリー家が滅びるまでの話。その後どうなるかは分からない。
(だが、どう伝えたら良いんだ?)
いっそ原作知識のことを全て話してしまった方が良いか? だが……
「兄様、鬼人達を助けるわけにはいかないでしょうか?」
「「!!!」」
シンシアがそう言うと、リタの顔に緊張が走った。
「ここに住んでいる方々と鬼人の間には並々ならぬ事情があるのは何となく分かります。ですが、私が見た鬼人達はもはや戦う力さえないほどに弱っていました。あのままでは……」
「同情する気持ちは分からんではないが、奴らが息を吹き返した後に攻撃して来ないとは限らぬぞ?」
「それは……そうですが」
オーレリアの言葉はもっともだ。ましてや奴らはリタ達にとって敵とも呼べる存在だ。助けるなんて考えることも出来──
「行こう、シンシア」
「「「えっ……」」」
リタの言葉に驚いたのはシンシアだけじゃない。俺もオーレリアもだ。
「お主達にとって鬼人は敵……憎いのではないのか?」
「だからこそ鬼人達が何故私達の故郷を襲ったのかが知りたいの」
理由……確かに襲ってきた鬼人達の様子がおかしかったって言ってたな。
「リタ……優しいのね」
シンシアがそう言うとリタは首を振った。
「そんなことないよ……私は鬼人達をちゃんと憎みたいだけ。故郷を滅ぼした相手にも何か事情があったのかも知れないだなんて考えたくないもの」
リタ……
「だから、理由次第では鬼人達は見殺しにする。いいよね、ロイド?」
「……ああ、勿論だ」
俺はリタの言葉にそう答えるしかなかった。例え原作知識に背く結果となったとしても、この決意を無下にすることは出来ないな。
※
次の日、俺達はシンシアが鬼人達と出会った場所に行ってみることにした。
「主様自ら行かれなくても……」
村長を初めとする村の獣人達には止められたが、伏魔の森を安全に抜けるには俺が行かない訳には行かない。それに……
(鬼人の話を聞いて、リタがどうするのか……ちゃんと見届けないと)
それがリタの決意に対する俺なりの礼儀だと思うんだ。
「シンシア、大丈夫?」
案内役をかってでたシンシアだが、万全とは言い難い。シンシアのスキルでは自分自身は回復できない。体調には気遣ってやらないと……
「ありがとう、リタ。しんどくなったら兄様にお姫様だっこしてもらうから大丈夫」
ああ、それくらい何でもない!
「駄目に決まってるでしょ、シンシア。私がおぶってあげるからね」
何でもないやり取りに見えるが、リタの目は笑ってない。何だか先が心配だなぁ……
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