#27
(ここなら今の時間帯は大丈夫だな)
さっきの場所から少し離れた場所に移動した後、俺達は一息つくことにした。村に戻ろうとした直後のこのトラブル、流石に心臓に悪い。
「一体なんなのじゃ、あれは」
「分からない。でも何かがあそこにいて、グローリータイガー達を押し潰したみたい」
押し潰した……確かにそんな感じに見えた。
「リタには姿が見えたのか?」
「見えなかったよ。でも、何と言うか……魔物の気配がしたから」
姿の見えない魔物……ん?
(姿の見えない魔物、ホロウストーカー!?)
ホロウストーカーは伏魔の森でまれに遭遇するレアモンスターで、常時透明なせいで姿が見えないらしい。
(感知するには視覚以外の手段が必要。もしくは……)
降りてきた原作知識を元に必要なものを考えていると……
ガサッ……
鬼人が姿を現した。
「!!!」
思わず身構えるリタを背にするようにして俺は鬼人に話しかけた。
「来てくれてありがとう」
「……」
鬼人は声を発さないが、小さく頷いた……ように見えた。
「リタ、アイツは撒けたかな?」
「ううん。ちょっとずつだけどこっちに近づいてる」
やはりか。ホロウストーカーは赤外線視の能力を持っている上にしつこい性格らしいからな。
「聞いてくれたか? 君の目的は分からないが、僕にとっても君にとってもアイツは邪魔だ。とりあえず共闘するってことでいいか?」
鬼人は今度はハッキリと頷いた。なら……
「とりあえずこれで傷の手当てをしてくれ」
僕は中級ポーションを二本取り出した。そしてそのうちの一本を鬼人に選ばせて封を開け、飲んで見せる。毒じゃないってことを証明するためだ。
“相変わらずお人好しじゃな、ロイドは“
(……だよな)
鬼人には死んで欲しくはないが、今はまだ敵対関係なんだ。そんな相手の傷を癒すなんて馬鹿と言われても仕方ない。
“じゃが、ロイドらしくて妾は好きじゃぞ“
そう言って擦り寄ろうとしたオーレリアをリタの鋭い視線が止める。今は見えてないはずなのに……
(と、今は鬼人の方に集中しなきゃ)
俺には悪意がないつもりだが、それを鬼人がどう受け取るかはまた別の話だ。さて、素直に受け取って貰えるか……
「……」
鬼人は少し迷った後、ポーションを飲んだ。傷口は塞がなくて大丈夫なのかな? あ、鎧を脱いでる暇はないと思ったんだろうか。
「もしもっと必要なら渡せるけど」
俺がそう言うと、鬼人は首を振った。あれで全回復したとは思えないけど……まあ、今はここまでで良いのかな。
「じゃあ、作戦を説明するぞ。リタ、そこからで大丈夫か?」
「大丈夫だよ」
ホロウストーカーの様子をうかがうため、そして鬼人と距離をとるために少し離れた位置にいるリタが聞こえることを確認した後、俺は皆に作戦を説明した。
”ロイドの罠……元々あやつに使うつもりだったやつじゃな”
(ああ)
鬼人との戦いで使うつもりだった罠を使った上で薬で俺のステータスを上げればこの伏魔の森の魔物とも何とか戦えるはずだ。
”しかし、それでパラメーターの差は埋められてもあやつが見えないことは変わらぬのではないか?“
「そうだよ! 今の作戦だとホロウストーカーと戦うのはロイドになるんだよ!?」
俺の作戦というのは単純だ。唯一ホロウストーカーに姿を見られている鬼人には罠の近くで囮になって貰う。そして、罠にかかったら俺が姿を現して倒す。何かあって仕損じた時にはリタに隙を作って貰うつもりだ。
「相手の姿が見えないんだから罠にかかったかどうかも分からないかも知れないよ」
確かにリタの言う通りだ……普通なら。
「大丈夫。秘策があるんだ」
秘策というか、“コウリャクホウ”って奴が。
(要は相手がそこにいるって分かれば良いんだよな)
俺は鬼人の近くに浅い穴を掘り、罠を設置した。かかった瞬間、ホロウストーカーは足を取られて動きが鈍る。その瞬間が狙い目だ。
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