#26
ブン!
鬼人の振る槍をかわしきれずに正面にいたウォータイガーが傷を負う。浅くはないが、まだ倒れる気配はない。
ザンッ! ザンッ!
鬼人の攻撃の隙を突くように二匹のウォータイガーが爪を振るう。爪は身につけていた鎧で防いだようだが、衝撃で鬼人の体は後ろへ下がる。
「っ!」
無防備な背中に別のウォータイガーが飛びかかる! だが、鬼人は再び槍を構えて防御した。
”こやつが鬼人なのか?“
“ああ。俺が見たのはこいつだ”
角や鎧、それに特徴的なマスク。目の前の鬼人はあの時遠目に見た特徴と一致する。が……
”何かこのままやられちゃいそうな気がするけど……“
リタの言う通り、戦況は明らかに鬼人の劣勢だ。
“ん? このままヤツが倒れても別に構わないじゃろ。厄介な敵なんじゃから“
“それは確かにそうなんだけど……“
リタは優しい性格だ。故郷を追われた憎い相手でも魔物に食い殺されるのを見るのに抵抗があるんだろう。
(それにヤツにはまだ死んでもらっては困る……気がする)
原作知識によれば鬼人がこの伏魔の森の中心部、つまりは俺達の村がある場所を目指してやって来ることが分かってる。が、その目的などは分からない。今ある情報だけだとどうも不可解な点が多すぎるのだ。
(もしかして、あの鬼人が新たな原作知識の鍵になるかも知れない)
これにはなんの確証もない。が、今まで幾度となく原作知識に触れてきた経験が俺に警告する。ヤツをこのまま死なせてはいけない、と。
ブン! ブン!
鬼人が連続で振るった槍がグローリータイガーの急所を捉えた。が、それと同時に……
ガブッ! ガブッ!
二匹のグローリータイガーが左肩と脇腹に噛みついた!
「っあ!」
鬼人は槍を捨て、牙を突き立てたグローリータイガーに拳で殴りつけた!
ボコッ!
左肩に噛みついていたグローリータイガーの頭が破裂するように吹き飛ぶ。さらに……
ボコッ!
そのまま振り下ろした拳が脇腹に噛みついたグローリータイガーに炸裂! 二匹の魔物は瞬く間に絶命した。
“な、なんじゃアイツは。あっという間に三匹も倒しおったぞ“
だが、鬼人の傷は深い。残る三匹のグローリータイガーを倒せるかどうか。それに倒せたとしても流石にこれ以上進むことは出来ないだろう。
(割って入るなら今だ)
俺がそう考え、オーレリアに声をかけようとしたその時……
ズン!
腹の底まで響くような音と共にグローリータイガーの姿がかき消えた。
“なっ、消えたじゃと!”
”違う!“
リタがさっきまでグローリータイガーがいた場所を指差す。そこには……
(あれはグローリータイガーの血か?)
消えたように見えたが、実際には何らかの力でぺしゃんこにされたようだ。だが、相手の姿は見えない。やったのは一体どんな奴なんだ?
“ロイド! こっちに近づいてくる!”
リタには相手が見えてるのか?
”とりあえず距離を取ろう。よし、あっちだ!“
俺は今の時間帯に魔物が少ない場所をリタに伝えると、オーレリアから離れ、鬼人の前に姿を現した。
「おい!」
「!?」
マスクをしていても鬼人が驚くのが分かる。が、今はそんなことを気にしている場合じゃない。
「話は後だ。あっちで作戦会議だ」
「……」
俺は鬼人の返事を聞かずに再びオーレリアに手を伸ばす。
“ロイド、いつになく大胆じゃのう……”
大胆? そうだな。敵に塩を送ってるんだからな。
”得体のしれない魔物が相手なんだ。戦力は多い方がいいだろ?”
最も相手が魔物とは限らない。何せまだ俺は相手の姿形さえ目にしてないんだから。
”全く……気づかぬふりをするつもりかの? それともそなたは鈍感系主人公なのかの?“
???
(あれ、柔らかいな……)
手を握ってたはずだったんだけど……
“まあ、良いのじゃ。好きなだけ触ってくれてよいのじゃぞ、ロイド”
”ロイド! 何してるの!“
わわっ! しまった!
“リタ、今ロイドが妾から離れたら相手に見つかってしまうのじゃ”
”分かってる! ロイド、後でお説教だからね!“
本当に不可抗力なんだけどな……
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