#21
ブブブッ!
何だ? この音は!
「魔虫だよ、ロイド! 薬草を狙ってる!」
バッタのような姿をした魔物、ブラッディローカストが薬草を食べにやってきたんだ!
(くそっ、やっぱりか!)
超促成剤で急激に育った植物は虫を寄せやすい。しかも、ここ伏魔の森は魔物の巣窟みたいな場所だからやってくる虫もただの虫じゃない!
「虫は俺が!」
俺は〈等価交換〉で火を出す魔道具、バーナースティックを出した。攻撃用の魔道具は必要なアルがめちゃくちゃ多く、バーナースティックを出すのに七十万アルも消費する。が、今はそんなことは気にしてられない!
ボゥゥゥ!
魔虫に向けて火を放つと、火に焼かれた虫がボタボタと落ちてくる。が、倒しきれなかったり、火が届かなかったりした奴らがまだまだいる。
ブブブッ! ボゥゥゥ!
ブブブッ! ボゥゥゥ!
俺は虫が寄って来る度に魔道具を放つ。が、寄って来る魔虫は中々減らない。いや、むしろ増えてないか?
(くそっ、森中から集まってきてるのか。一体どうしたら……)
まとめて一気に倒したいところだが、レッドアントと違い、ブラッディローカストは弱点になるようなアイテムはないみたいだ。
「これじゃキリがないよ!」
リタも剣を振って牽制してくれているが、確かにこれじゃキリがない。
「せめてこれ以上数が増えなければ……」
「この薬草が食べたくて寄ってくるんだよね。嫌いになってくれたらいいのに!」
嫌いになる……
「リタッ! どうした!」
「何事ですか、主様!」
騒ぎを聞きつけた獣人達がこっちへやってくる。駄目だ、このままじゃ!
「駄目だ! 離れてくれ。リタも早く!」
「ロイド?」
俺は降りてきた原作知識のままに〈調合〉を発動。そして……
「そっか! あいつらを倒す方法を思いついたんだね!」
リタが遠ざかっていく。それを確認した俺は〈調合〉で作った薬品を……
バシャ! バシャバシャ!
俺は薬草にたっぷりとかけると、全力でその場を離脱した!
「ロイド、あいつらをやっつけるんじゃ……」
「大丈夫! 見てて!」
邪魔をしていた俺達がいなくなったことで、ブラッディローカストは薬草へと飛びついていく!
ブブブ! ……ブッ
が、ブラッディローカスト達はあと一歩というところで迷うようにその場に留まった。
「え、何で!? 薬草を食べないの?」
「今だ!」
俺は隙だらけのブラッディローカストの群れにバーナースティックを向ける。すると、炎が迷うようにウロウロしていた奴らに直撃した!
「ギギギッ」
「ギッ! ギッ!」
炎と獣人達に追い立てられたブラッディローカスト達は次々と森へと逃げていく! よし、これでひとまず大丈夫か……
「凄い! あいつら逃げていっちゃった! 薬草も無事だし……」
リタが詳しく確かめようと薬草に近づいていく。あ、ヤベッ
「駄目だ、リタ!」
「ッ!」
次の瞬間、リタが鼻を押さえて薬草から飛び退いた!
「い、痛……ロイド、これって」
「奴らの苦手な匂いを薬草につけたんだ」
ブラッディローカスト達を一気に倒すような薬品はない。が、奴らを追い払うような薬品はある。リタの一言を聞いた瞬間、デスハバネロペッパーについての原作知識が降りてきたんだ。
(デスハバネロペッパーは本来調味料だけどな)
材料は赤龍の息吹といわれる激辛の香辛料と胡椒、それに水だ。それを〈等価交換〉で出して〈調合〉して薬草にかけたって訳だ。
(けど、鼻が鋭いリタ達にはキツイよな……)
何せ名前に“デス”とついているくらいだ。その匂いだけでも相当なはず。一度口にすると、見るだけで舌に痛みを感じる人もいるらしいからな。
(だからこそブラッディローカストでさえ食べるのを躊躇したんだけど……参ったな)
この調味料のことを知ったのはついさっきだ。けど、最初から知っていたところで使う気になったかどうかは分からない。何故なら……
(これを使うと飲む時に辛くなるんだよな)
辛い調味料をふりかけたんだから当たり前だ。何でも食べる魔虫でさえ食べたがらない辛さになった薬草を飲む……無事でいられる気がしない。
(一応水で洗い流せばマシにはなるらしいし、大丈夫だよな?)
まあ、背に腹は代えられない。だが、それより今はリタ達の力を借りられなくなったことの方が問題だ。
「大丈夫……慣れてきたから……」
リタは目を涙で赤く腫らしながらそう言ってくれるが、そう言うわけにはいかない。薬草は俺が一人で世話することにしよう……
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