#15
俺の目に止まったのは妙に大きなスペースだ。これってもしかして……
「主様、そこで作物を育てようと思っております」
「なるほど……それは良いな」
「はい。この辺りでは木の実は採れますが、それ以外は主様から頂いたものばかり。いつまでもそれではいけないと思いまして」
食料品を出すのに必要はアルはさほどでもないが、畑で作物を作るのは良いことだ。大事なものの供給源が一つってのは心許ないしな。
「水はどうするんだ?」
「川から水を引いてくるには森に入らねばならないので、井戸を掘ろうかと」
伏魔の森の魔物は原作知識によれば推奨討伐LVが50以上の奴らばかりだからな……井戸を掘るのが現実的だな。
「畑に必要なものがあったら言ってくれ。俺も何か考えてみる」
「ありがとうございます」
とりあえず現地を見に行こうと思って歩いていくと、リタが後ろから着いてきた。
「今度は何を考えてるの、ご主人様!」
「おいおい、ご主人様って……」
「照れない照れない。」
リタは昨日から何かにつけて俺の世話をしてくれている。専属メイドって言うのは半分冗談だって言ってたはずだけど……
「あっ、主様!」
「いや、いいから普通にしてよ」
跪こうとする皆をリタの力も借りて何とか押し止め、作業の様子を聞くと……
「農地の開墾は主様が出してくださった農具のおかげで順調なのですが、井戸の方がちょっと手詰まりでして……」
十メートルほど掘り進めたところで硬い岩盤が現れて掘り進むことが出来なくなったらしい。
「見せてもらってもいいかな?」
「勿論です。こちらへ」
案内されて現場へ行って見ると……
(……確かに硬いな)
スコップで軽くつついてみたが、びくともしない。それどころかスコップの方が欠けてしまいそうだ。
(場所を変えれば……いや、でもまた同じような岩盤に当たるかも知れない)
原作知識でもどこを掘れば水が出るかなんて良いのかなんて分からないからな……
(井戸は諦めて魔道具を出すか?)
実は貴族の家には良く水の魔石を使って水を生む魔道具がある。バカ高い魔道具だが、250万アルもある今なら〈等価交換〉で出すことが出来る。
(……ん?)
その時、俺は端の方の暗がりに何かを見つけた。あれは……
「どうされましたか、主様?」
「どうしたの?」
「いや、何かあるなあって」
俺はここへ案内してくれた獣人とリタに見つけたものを指差した。
「本当だ」
「何でしょうね?」
近づいてみてみると、それは石板の端っこのようなものだった。
「石板の一部でしょうか……?」
「何で地面に埋まってるの?」
さらに奇妙なのは、その石板らしきものが足元の硬い岩盤と同じもので作られているっぽいことだ。
(地面に埋まってるだけでも謎なのに……)
一体何なんだろう?
「悪いがあの辺りの土をどかせて見てくれないか?」
「かしこまりました。主様は上でお待ち下さい」
数分後……再び穴のそこに降りた俺達の目の前にはびっしりと文字が書かれた石板があった。
「読めないね……」
「見たことのない文字です」
〈等価交換〉で出したランタンで照らした石板を見ながらリタとこの村で一番物知りな長老が首をかしげる。
(確かに読めな──あれ?)
見たことない文字なのに分かるぞ!?
「”かつて大いなる災いあり“」
文字や文章の一つ一つの意味は分からない。が、何が書いてあるのかは何となく分かる。ひょっとしてこれも原作知識なのか?
「ロイド、読めるの?」
「何と!?」
二人が驚いた声を上げるが、びっくりしているのは俺も同じだ。
「“永き戦いの末、災いをここに封ず。決して触れることなかれ”か……」
災い……
(何のことだろう……)
こう言う時には大抵原作知識が降りてきてくれるんだけど、今は全然その気配がない。
(原作知識っていつでもなんでも教えてくれる訳じゃないんだよな……)
原作知識には多分何か鍵のようなものがあって、俺がそれに触れたり、考えたりすると降りてくる。そんなイメージだ。だから、もし原作知識が応えないんだとすると……
(まだ足りないんだ。何かが)
それが何かはまだ分からないけど……
いつも読んで頂きありがとうございます!
次話も頑張って書くのでよろしくお願いします!




