#12
カンカン!
カンカンカン!
皆の動きは早かった。僕とリタがゴールデントラウトや鉱石、薬草の採取に行っている間にかなりの数の木を切り倒していたのだ。
(凄いな。獣人は魔力が低い代わりに身体能力が高いと聞いてはいたけど……)
ちなみに俺みたいな普通の人間は他の種族と比べて得意不得意はないとされている。それ故に人間族は自らを”万能の種族“と位置づけて優位を強調し、他種族を差別してるけど……
(どうだかな……)
原作知識を思い浮かべるまでもなく、この真偽は疑わしい。大体“自分が完璧”なんて思ってる奴らほど疑わしい存在はないんだ。
「あ、救い主様!」
な、何だって?
(今なんて言ったんだ?)
採取から帰った俺を出迎えてくれた男の子の言葉にびっくりしていると、父親らしい人が慌てて走ってきた。
「こら! 失礼だぞ!」
「でも……」
不満げな男の子を叱りつけ、男は俺に頭を下げた。
「申し訳ありません、よく言い聞かせますのでどうかお許しを」
「いや、びっくりしただけなので……」
一体何なんだ? 何で
「私達の一族がピンチの時、神様が作った安全な世界に連れて行ってくれる救い主が現れるっていう言い伝えがあって……」
ああ、そうか。子どもだから勘違いしたってことか。
「この方は我々を楽土に導く方ではなく、楽土そのものを作られた神。つまり、救済神様だ!」
「そっか! ごめんなさい、救済神様」
何でだ━!
「いや、違うから。もっと普通に……」
「そんな! 滅相もない!」
:
:
こんなやり取りを繰り返して何とか納得して貰ったが、他の人とも同じようなことをする羽目になり、落ち着いて話が出来るようになったのは昼近くになっていた。
「呼び方はとりあえず主様ということにして……とりあえず周りの木を切って材木にしました」
村長はそう言うと、建物の配置図を取り出した。
「このような感じで如何でしょうか?」
規則正しくならぶ家々とそれを囲む壁。それに遠くを見渡すための物見台。うん、良さそうだな。
(真ん中にある大きな建物は集会所かな?
いや……にしてもデカい。他の家を全て合わせたよりもはるかに広いぞ?
「主様には真ん中の建物で暮らしていただきたく……」
え!? 俺の家なのか?
「いや、こんな広くなくていいよ! というか、俺の家まで作ってくれるのか?」
「当たり前です!」「当たり前だよ!」
村長だけでなく、リタまで!
「主様のおかげでこんないい場所に住まわせて頂けるのです。手始めにこのくらいは当然……いや、本当はもっと立派な屋敷を用意したいのですが、資材が足りず」
資材が足りない……?
(まあ、木を切り出すだけでも大変な作業だよな)
おまけに食料だって確保しなきゃ行かなきゃいけない。ここ、伏魔の森のボスの住処の入口──原作知識によればセーフゾーンというらしい──は木の実がなる木がいっぱいあるが、それだけで足りるのか?
「現場に連れて行って貰えますか?」
「主様自ら現場に!?」
村長は恐縮していたが、リタは”私が案内するよ“と言い出し、結局三人で向かうことになった。
「ふぅ……ようやく角材の数が揃ってきたな」
現場では立派な肉体の獣人達が汗をかきながら一息ついている。朝からこんなに頑張ってくれているなんて頭が下がるよ、全く……
「どんな具合ですか?」
「どんな具合って、切り倒した木から角材を切り出したところで──って主様!?」
「わっ! ちょっと!」
その場にいた獣人達はあっという間にその場に平伏した。
「「「一刻も早くお住いを整えばならぬというのに申し訳ありません」」」
「いや、待って待って待って!」
とりあえず顔を上げてもらって現状を聞いたところ、やはり人手が足りないと言うことらしかった。
「角材さえ揃えば後は我々の得意分野なのですが……」
リタ達ソウザ族の獣人は単純な力仕事よりも家を建てたり道具を作ったりする方が得意らしい。
(どっちにしろ力がいると思うんだけどな……)
まあ得意不得意は誰にでもある。それに角材なら……
(よし、〈等価交換〉!)
俺は〈等価交換〉を発動して目の前にある角材とほぼ同じものを出した。
「「「えっ!」」」
あれっ……びっくりしてる。あ、そっか!
(そう言えば〈等価交換〉のことは皆には話してなかったっけ)
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