01 ゴーレムを作ってみた!
これからの生活を無事に進めるため、まずは支給品を取りに行く事にした。その支給品は玄関の隅に置かれ、段ボールを模した木箱に入れられていた。まずは食料と日用品と書かれた不透明のビニール袋を取り出し、中身を確認する。それらは、元の世界と同じものから微妙に違うものまであった。これらを使って少しずつ慣れていく事が必要なのだろう。
次に、銀貨を取り出す。巾着袋に入れられた銀貨は少し重く、かなりの量の銀貨が入っていた。これが「最低限」と書かれていたのは、この世界で少しだけインフレが進んでいる証拠なのかもしれない。
最後に、ゴーレムの外殻、基本パーツ、工具が出てきた。とりあえず工具の種類は全て理解する事が出来た。ゴーレムの外殻についても、スライムかコウモリくらいならギリ倒せそうな小型のものが同封されており、内側の突起やネジ穴が基本パーツと対応している事も分かった。そして基本パーツを一通り並べてみたのだが……これは想像以上に大変そうだ。少しずつ内容を見てみよう。
まずは動力部分、ガラスの円筒に黒いフタが付いており、そこから銅線のようなものと推測される黒いチューブが何本か伸びている。中は液体で満たされており、ずっしり重い。ただし、中を見る事は出来ない。おそらく心臓か何かなのだが、見たいものではないのでそっとしておく。
次に、かなり大きめの白い水晶が出てきた。本当に水晶そのもの。これはおそらく半導体の役割を持つものだと勝手に推測してみる。p型とかn型とかロジックとかメモリとかパワーとかの区別はあるのか、どう配線するのか、どこに入れるのか、どうやって機能を実装するのか。
その謎をほんの少しだけ解消するパーツが、小さな水晶とその水晶の台座(パソコンに繋ぐケーブル付き)だ。おそらく、これらの小さな水晶が半導体のチップの役割をしており、パソコンで入力したデータを台座経由で入力するのだろう。試しにメインの水晶に当ててみると、マグネットのように吸着した。
最後に、各種動力パーツとケーブル類とその他諸々。細々としたパーツが種類ごとにビニール袋に入っており、似たようなパーツも多かった。せめて全て判別出来るようになるまでは絶対に開けないと誓うのだった。
それぞれの水晶と台座を持ち、パソコンの前に座る。台座とパソコンを接続すると、すぐに画面上に開発環境が表示された。ゴーレムの外殻やシリアルナンバーを選択する画面が表示され、その次にメイン水晶の色を選択し、さらに画面の配置を選ぶと、ようやく作業できる状態になった。コードを書く場所、実行結果予想が表示される場所、小さな水晶を取り付ける場所などが表示されたメイン水晶の図などを確認できる場所があった。
試しに小さな赤い水晶を選んで台座に置くと、動力系統の水晶である事を示すライトが台座に点灯した事を確認し、コードを打ち込む画面を見た。既にいくつかのテンプレートが入力されており、コメントアウトされた文字列は「前進する」とだけ書かれていた。……ところでこの異世界語をどう理解しようか?初めてのプログラミングでコードが全部英語だったのを見た時の戦慄に似た感情を思い出しつつ、つい目が泳いでしまうのだった。「水晶を取り外す」ボタンを押し、水晶を台座から外した。
次に、黄色の小さな水晶を台座に置くと、〈不明な水晶を確認 水晶の種類:行動パターン〉というエラーメッセージが表示された。「詳細」ボタンを押すと、2つ以上の水晶を同じメイン水晶に接続する場合は、相互の対応を定義する必要がある、と表示された。「定義する」「非同期で実行」「キャンセル」のボタンが出たが、とにかく定義する方を選んだ。
定義画面では、赤と黄色それぞれの機能一覧とかが出たが、予想以上に黄色は複雑だった。だが、この画面は全て日本語だったので問題無かった。おそらく何らかの善意で、任意の名前指定は日本語で登録されているのだろう。ついでに青い小さな水晶も置きつつ、それらの関係を眺めた。
水晶:赤
[パーツの生存を確認(足パーツの画像)(追加ボタン)]
[もし前進可能なら前進(足パーツの画像)(黄色のコネクタ)]
水晶:黄色
(前略)
[感知情報を取得(複数の青色のコネクタ)]
(中略)
[前方の障害物の有無を送信(赤色のコネクタ)]
(以下略)
水晶:青
[パーツの生存を確認(目パーツの画像)(追加ボタン)]
[視覚情報を送信(黄色のコネクタ)]
なる……ほど?とにかく、壁に近づくまで前進し続けるだけのゴーレムが(コードとしては)作れる事が分かった。
《サイトが更新されました》
唐突に表示されたメッセージには、このように書かれていた。どうやら、次の段階に進む準備が出来たようだ。サイトを見に行くと、このような文章が追加されていた。
「ゴーレムの作成方法」
以下の資料を参考に、ゴーレムを組み立ててください。
〈ゴーレム制作Lv1.exe〉[ダウンロード]
ダウンロードして、それを実行すると、組み立ての過程やパーツの種類や使う工具や注意点などが書かれた画面が表示され、「次へ」「戻る」でページを変えながら順番に組み立てていくようだった。組み立てが完了すると、ガワだけは完璧なゴーレムが完成した。後は規定の場所にメイン水晶をはめ込み、電源を入れるだけだ。
試しに地面に置き、電源を入れてみた。トコトコと歩き出し、前に進む事だけを考えて動いている。試しに前で手を振ってみると、ゴーレムは動きを止める……止めるだけなのでバランスを崩してしまう。慌てて受け止めつつ、一旦電源を切っておくのだった。
初めてのゴーレム、それはこの世界のチュートリアルのような存在であり、この世界を共に過ごす仲間でもある。ゴーレムの技術体系は深く、理解するのは大変な事だが、ここで生き残るためには、目の前の小さな生命体を理解する必要がある。既に暗い空を見上げつつ、眠りについた。




