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鈴蘭の魔女の代替り  作者: 拝詩ルルー


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レイのお見合い7(イリアス視点)

 年明けに父から見合いの話をされた時は、どうにかして回避できないかと考えを巡らせた。

 だが今回の見合い話は、いつもと様子が違っていた。


 煩わしい見合いや婚約を避けるために、私も兄も相手の女性の条件をかなり高めに設定していた。


 今までは条件を満たせる令嬢がいなかったため、どうにか見合いを回避できた。


 だが今回の見合い相手の女性は、そんな高条件をクリアしてきた。


 さらには、どうやら私は、見合い相手の女性とは、父と一緒に軽く挨拶まで済ませていたようだった──父が前回の魔術研究報告会に出席するよう、使い魔を使ってまで念押ししてきたのはこのためだったかと、思い至った。


 条件をクリアしてしまった以上、見合いを了承するしかなかった。


 ただ、魔術研究報告会で見合い相手の少女を見た感じ、不思議とあまり嫌な感じはしなかった。

 とりあえず、少しくらい会ってみても良いかとは思えた。



***



 見合い相手の少女──レイ・メーヴィス魔術伯爵が到着したと連絡を受け、迎えに出ると、そこには異様な光景が広がっていた。


 わが家の車寄せで、なぜかラングフォード魔術伯爵が心臓を撃ち抜かれたかのように胸を押さえ、身悶えていた。

 そしてそんな彼に、レイ・メーヴィス嬢は、ずいぶんと白けたような視線を向けていた。


……この状況は一体???


 しかもなにやら「推薦状」という悍ましい単語も聞こえてきたような……

 

 ラングフォード魔術伯爵にはこれまで、とりあえず魔術が使える程度の、大して魔術師をやる気もない令嬢を、王宮魔術師団に押し付けられてきた実績がある──令嬢たちは下手に身分がある分、対応にはかなり苦慮してきた。


 レイ・メーヴィス嬢は、恋に酔ったようなラングフォード魔術伯爵をテキパキと馬車に押し込めると、さっさと帰るように御者を促していた。


 馬車が去り、こちらを振り返った彼女のスッキリとやり切った表情は、やけに好感が持てた。……その分、ラングフォード魔術伯爵に対する日頃の鬱憤が、溜まっていたのかもしれないが……



 本日のレイ・メーヴィス嬢は、黒の塔の制服である真っ黒なワンピース姿ではなく、見合いに相応しいローズレッド色の華やかなドレスを着ていた。

 軍服風のあの制服も凛々しくてよく似合っていたが、本日のドレスはより女性らしく可憐に見えた。


 そして、彼女の長い髪を留めるリボンに目が止まった。


 魔術の煌めきをまとう赤いリボンは、おそらくかなり高級な魔術工芸品だろう──メーヴィス嬢は、王都では実家のバレット家に身を寄せていると聞いていたが、バレット商会の財力がうかがえるようだった。



 わが家の応接室に案内すると、早速、推薦状の件についてメーヴィス嬢に確認してみた。


 どうやら以前、ユルゲン副団長が、ラングフォード魔術伯爵の推薦状が王国魔術師団内で問題になっていると、伝えていたようだ。


 そしてなぜかメーヴィス嬢が、ラングフォード魔術伯爵に、今後は新たに推薦状をしたためるのは控えるよう要望したようだった。


 ラングフォード魔術伯爵の反応は先ほどの通り──あのように浮かれた様子では、彼はメーヴィス嬢のお願いを嬉々として叶えることだろう。


 よくやった、ユルゲン副団長!

 それに、メーヴィス嬢は、王宮魔術師団の救世主か!?


 気を良くした私は、メーヴィス嬢にいろいろと質問をした。

 まずは共通の話題を振ると良いと聞きかじっていたため、見合いの席ではあるが、互いの緊張をほぐすためにも魔術の話をさせてもらった──前回の魔術研究報告会の話題だ。


 メーヴィス嬢は特に嫌がることなく、丁寧に一つ一つの質問に答えてくれた。


 質問に関連して、世にも珍しい微弱魔力の計測器を見せてもらった。計測器には、レイヴン・ポットという幻の魔道具師工房のマークが刻まれていた。

 メーヴィス嬢に出処を確認すると、「私もいただき物ですので……」と言葉を濁された。バレット商会長の妹ということは、このような珍しい魔道具に触れる機会も多いのかと、羨ましくも思えた。


 また、彼女をわが家の訓練場に誘い、無詠唱魔術や、魔術研究報告会の実演で見せてもらった強固な土壁に幻影魔術を貼り付けるという、離れ技も見せてもらった。


 メーヴィス嬢は魔力量が多いだけでなく、かなり繊細な魔力操作もできるようだった。


 彼女の説明はあまり理論的ではなく感覚的だったが、魔術の腕前は、王国内のどんな魔術師もあまり真似できないような素晴らしいものだった──まるでフレデリカ前魔術師団長の魔術講義を受けた時のような、ワクワクとした胸の高鳴りを感じた。


 残念ながら、フレデリカ前魔術師団長は出会った頃にはすでに、実家の侯爵家を継ぎ、結婚もされていた。


 でも、メーヴィス嬢は、まだ婚約者もいない未婚女性だ。

 彼女に師事することができたなら、私の魔術の腕前も、さらに高みを目指すことができるだろう──ひいては、この国の魔術師を、全体的にレベルアップさせていくことも可能だろう。


 知り合ったばかりなので、まだ「好き」だとか「愛している」などの感情はない。だが、穏やかで落ち着いている彼女となら、上手くやっていけそうな気がした。

 何より、魔術の話が合うのは良い。それに、彼女の魔術の腕前は素晴らしい──特段迷う必要はなかった。


「私としては、貴女がもし良ければ、このまま婚約に話を進めたいのですが」


 今の私なりの精一杯のプロポーズの言葉を伝えたつもりだった。


 だが、目の前の彼女は顔色を悪くして、首を左右に振るだけだった。


 これはどうしたものかと考えていると、わが家の執事から来客の知らせを受けた──メーヴィス嬢の実兄の商会長殿が来たようだった。


「ニィーーール!」

「レイ?」


 兄妹仲が良いのか、商会長殿が訓練場に入って来るや否や、メーヴィス嬢はすぐさま駆け寄って行った。

 彼女はそのままぎゅっと彼の腕にしがみついていた。


 メーヴィス嬢は見合いでも落ち着いていたので、かなり大人びているように見えたが、まだまだ家族に甘えたい年頃なのかもしれないな。


 実に微笑ましいものを見せてもらった。



***



 父には、メーヴィス嬢には見合いの場で断られたことを伝えた。

 父はその時は、「まぁ、仕方がないか」というような表情をしていた。


 だが、私がある提案をすると、父は一気に激昂した。「全く、お前は何を考えているんだ!」と叱られたが、「私の魔術上達のためです」と真面目に答えれば、父は怒ることも忘れて、すっかり呆れたような表情をしていた。





※今週は金・土に投稿予定です。


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