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俺のとなりの編集者  作者: 作者
第2章
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9/19

俺のまわりで、表彰されるやつ。

 気付けばもう半日ほどパソコンと小説投稿サイトと会話をしている。脚に根っこが生えたように、俺は居座っている。親に呼ばれても妹にご飯の要望を訊かれても上の空の返事をして、小説に向き合っている。同じような言葉回ししかできない自身に頭を掻きむしりながら、キーボードで母国の日本語を打ち込んでいく。この足りない頭脳で小説を綴り上げていく。


 もしの話。

 俺のように自分の体験談などを主人公に投影させた小説家が他にいるのなら…。

 それに、俺の人生は…、この人生はもしかしたら、次元を超えた何者かによって綴られているのなら。いや何者ではなく、俺にそっくりな、俺の人生と似通ったやつが、俺の物語を左右させているんじゃないのか。…考えすぎだ。座り過ぎて頭に血が行き渡っていないだけだ。身震いを子犬のようにして、正気をつかもうとする。が、そう簡単な話でもなかったため、こびり付いたご飯粒が厄介になるまえに流し台に立つことを選択をした。久々に立ち上がった俺の姿は、歳を重ねたかのように猫背で小さくなっていた。




 ・・やっぱり、もし、俺の人生を描いた脚本家が居るなら伝えたい。



 『幸せを幸せとして捉えられなくて、ごめんなさい。でも、この人生捨てたもんじゃない』と。





 まだ卸したてのスポンジの泡立ちは心地いい。油を使った料理の皿も洗剤が文句なく役割を果たしてくれる。シャワーと化しているお湯は食器を輝かしてくれる。流れる泡水だけは、ゴゴゴゴ‥という声を発して姿を消していくが。俺の思考の域外でのその泡水たちは、長い配水管を潜り抜けて微生物と戦った。勝利を進めたものだけが、仲間に会うことや天に昇ることが許された。



 【さて、小説を綴り続けよう】


 俺は勉強したことがない。

 

 雨はどうして降るのか判らないし、なぜ川に集まり海に溜まるのに、自分の住む街が浸水しないのか。

 なぜ、同じ年なのに勉強できるやつがいて出来ないやつがいるのか。

 昼間を歩くことが許される子がいて、俺は何故ダメなのか。その話の流れで、その人が言う神様とあの人の言う神様、まるっきり違う。その人は「みんな同じ」と神様をあげながら、あの人は「人、それぞれなのです。」と神様の名をあげる。黒い分厚い書を抱えた人も現われた。同じ書名を名乗りながら、解釈の仕方が違っていた。同じ書名なのに、それを伝えてきたふたりはお互いにお互いの話を否定して聞き入れる事すらしなかった。


 だから引っ張り出した。同じ学年の同じ科目の教科書を。時代違いのものを。俺と10コ違う俺の妹の時代とで。

 「円周率は・・・3.14ですか?3ですか?」

 俺は勉強したことがない。だから解らないのだろう。


 これは、さっきの話と当てはめたら話を聴いてくれないんだろう。 


 でもそもそも、大人に尋ねたところで、判るわけがない。



 なぜなら神様すら一致していないのだから。



 この時代は面白い。俺たちが必死に生き抜いている人生を、失敗作と言われ続けている。産まれてきた時点で失敗作ということだ。大人たちは言う、なんだあの姿は「最悪だ」と。ゆとりを教育したのは、は、お前たちだ・・・。


 この時代は本当に面白い。


 自分が生きる人生の上で相手の動きが予定通りじゃないと、監督のように鋭く指摘する。構成作家のように厳しく筋書きを押し付けていく。自分の人生設計すらままにならないのに、レッドカーペットを勝手に敷き、道路交通違反の忠告を聴かず、自分の名を刻印されたオスカー像を手にして笑っている。



 俺は勉強をしたことがない。



 だけど勉強出来ない俺でも、これだけは知っている____。




 『この世界は面白い。』


 【思いが募るうちに文章化として、綴ってしまっておこう。】



 金色に輝いたオスカー像の写真を観ながら、綴りたての話を保存させてネットを閉じた。予約投稿された朝の日を考えることもなくパソコンの電源も落とした。





 そして、その朝は数日後にやって来ることとなった・・

 

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