俺のとなりにいた編集者。
ふと気が付くと、俺の眼に材木の天井を認識した。重たい瞳をこすりながら感じたのは、俺は寝ていたという事だった。いつここに倒れこんだのか判らないが、ソファの上で毛布をきちんと掛けて寝込んだらしい。記憶が定かではないが、読者の方に何かを叫んでいたような気がする。
それより久々にお仏壇の横で寝ていたせいか、ぐっすり睡眠でき、まるでとん服を使って上手く眠れた朝のように頭が冴えている。
残念ながら過去のことをあまり思い出せやしない。が、俺は本当の姿を誰かには解ってほしくて小説というカテゴリーに手を出したことは知っている。身体能力、発声能力、描写能力がない俺に出来るのは、文章が構成がボロボロでも表現できると信じたから。
それからして、横になった身体の脚をソファーから下ろしたとき、一枚の紙がひらりと意思表示をしめした。まるで俺を誘うように白紙に書かれた紙は、片手で差し伸ばさせ、次第には両手で持ち替えさせるかのような文章で混乱させた。
その置手紙にはこう記されていた。
『作家:鷹弘さんへ
あなたの作品には失望ばかりです。あなたの編集者でいるということは、私に「病気になれ」と命令されているのと同じぐらいの圧力です。デジタル入力なのでまだ訂正しがいがあります、あなたの誤字脱字、描写、読者に対する悪質な態度、そして何よりも編集者としてだけでなく人間というものを侮辱されました。あなたはあなたとして生きるのは勝手です、ですので私も私として勝手に生きさせていただきます。私がこんなに丁寧に言葉を並べているのは、あなたをバカにしているという事なので。それでは、また』
俺は、いい意味で混乱させられた。
だってそれは、あまりにも自分の字に似ていて、そしてとなりでうるさかった編集者は、俺を俺として見てくれながら良い作品を作り上げようとしていてくれたからだ。
作品が作品と生まれなかったら読者は生まれないとも思っていたからだ。
パソコンを立ち上げた俺は、さっそく小説投稿サイトにすぐアクセスをした。




