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007話 グランダム・サタン・アスタロッド②

「俺も少し疲れていたのかもしれん。お前のようにな。何せお前さえも倒れる程だ。俺が少し疲れたと弱音を吐いても責めてくれるなよ?」


 そういってグランダムさんは苦笑いをされると、肩をまわして関節をゴキゴキとならされました。


 確かにグランダムさんはお疲れのご様子で、私の見立てでは「肩(・)こ(・)り(・)」を患っておられるようでした。


(あ、あの。お母様。どうしてグランダムさんはこんなにお疲れなのでしょう?)


 屈強な肉体をお持ちのグランダムさんが、ここまで肉体疲労に苛(さいな)まれていることが不思議でした。


(グランダムは我が魔王軍の騎士団長で、最高司令官の軍団長でもある。そして今、我が魔王軍は戦時体制にあってな。その為、魔王軍を束ねるヤツは多忙なのじゃ)


 戦時体制。なるほど。どこかと戦争中なのですね。

 そういった情勢下であれば最高司令官のグランダムさんがお疲れになるのも頷けます。


「あ、あのグランダムさん───じゃなくて、グランダム。見たところ肩こりが酷そうじゃな。妾(わらわ)がほぐしてやろう」


 「───なんだと?」

 (───なんだと?)


 グランダムさんとお母様のセリフが重なりました。


(なんじゃ? 何をする気だっ?)


(大丈夫です。お母様。少しグランダムさんのお疲れをほぐすだけです)


 そういって私はタオルをお湯に浸しました。


「な、なんだ。ネフェル。何をする気だ?」


 グランダムさんも戸惑っておられるようですが、私は彼の背中を押して椅子に座るよう促しました。

 グランダムさんは素直に椅子に座られました。


「顔を上げて天井を向いてください」


 そういうとグランダムさんは怪訝そうにしながらもお顔を天井に向けて下さいました。


「では目を閉じてください───じゃなくて、目を閉じるのじゃ」


 グランダムさんが観念して目を閉じると、私はグランダムさんのお顔にお湯で温めたタオルを被せました。


「───!?? ───!!!? ネ、ネフェル! なんだこれは!?」


「ホットタオルです。みたところグランダムさんの肩こりは眼(・)精(・)疲(・)労(・)が(・)原(・)因(・)のようです。温かいタオルで目元をほぐし、リラックスされれば肩の凝りもほぐれますよ」


 グランダムさんはホットタオルが初めてだったようで、最初は居心地が悪そうにされてましたが、すぐにホットタオルの効果に気づかれたようです。


「ぐ……ぅう~……。な、なるほど。これは確かに心地よいやもしれぬ」


 私は拳を握って小さくガッツポーズをしました。

 グランダムさんがホットタオルを気に入ってくれたのが嬉しかったのです。


「さらにここをこうグリグリとすると、もっと気持ちいいですよ」


 そういって私は優しくグランダムさんのこめかみをマッサージしました。


「お……おお……。頭がしびれる様だ。確かにこれは心地よい」


 グランダムさんは身体から力が抜け、溶けるように椅子に沈まれました。


 こめかみのマッサージが終わると、私はグランダムさんの肩を揉みました。


「ほら。だいぶ凝りが解消してますよ」


 グランダムさんの肩をひと揉みした私は強張っていた肩がほぐれていることがすぐにわかりました。


 ───が、次の瞬間、グランダムさんが椅子から飛び起きました。


「ネ、ネフェル……! 今、何をした……!?」


 グランダムさんは目を見開き、とても驚かれている様子でした。


 私もとても驚きました。

 あまりにもグランダムさんが勢いよく椅子から飛び起きたからです。


 そしてこの驚きよう───。


 何かただならぬことを私はしてしまったのだとすぐに気づきました。


「し、失礼しました……! あ、あの、肩こりを治そうと肩を揉んだのですが……。いけませんでしたか?」


「か、肩を……。俺の肩を揉んだというのか……?」


 グランダムさんは自分の両肩に両手を充て、信じられないといった様子でした。


「本当に───本当にお前が俺の肩を……俺の肩を揉んだのか?」


 やばいです。これはやってしまったようです。どうやら地位の高い殿方の肩を断りもなしに揉むのはとてもいけないことだったようです。


「す、すみません……! 本当に失礼しました……!」


 私は平謝りをしましたが、グランダムさんはそんな私の前に倒れ込むように跪(ひざまづ)きました。


「───え? あの、グランダムさん? な、なにを?」


「ネフェル・パトラ・アスタロッドよ。最高の敬意に我も最大の敬意で応えよう。我が肩を揉んでくれたこと、とても光栄だ。このグランダム・サタン・アスタロッド、心より感謝申し上げる」


 ええ~!? な、なに!? どういうこと……!?


(お、お母様~……)


 私は半べそ状態になりました。


(これは一体……?)


 するとお母様の深い溜息が聞こえました。


(やってくれたな……。よいか。魔界で相手の肩を揉むという行為は相手に対し、好意を持っているという意思表示だ。同姓であれば刎頸(ふんけい)の交わりの申し出に等しく、異性であればプロポーズにも匹敵するのじゃ)


 な、なんですって~!! プ、プロポーズ!?

 はわわわわ……。えらいことをしてしまいました……。


(まあ、安心せい。グランダムも妾(わらわ)が人妻であることは承知しておる。今のおぬしの行為はグランダムの労(ろう)を労(ねぎら)う最高のおもてなしとヤツも受け取るであろう)


 そ、そうですか、それは何よりです。


 私は心底ほっとして胸を撫でおろしました。


(但しっ!! もう二度とするな!! 絶対じゃぞ!!)


(───っ!! は、はいっ!! しませんっ!! もうしませんっ!! 絶対に絶対にしませんです~っ!!)


 私は平謝りし、お母様に固く誓いました。



 ※ ※ ※


 肩を揉んでからというものグランダムさんはとても礼儀正しく、紳士的な振る舞いで私に接してくれるようになりました。

 その所作はまさに「王者」そのもので、威光に満ち、近寄りがたいオーラに包まれながらも、万人から慕われる稀代の名君のようでした。

 私はグランダムさんの男前がさらに数段跳ね上がったと思いました。


(ふぅ。やれやれ。まあヤツにバレることなく部屋から追い返せたのでよしとしてやろう)


 お母様がそう仰ったので、私はお母様の寛容さに感謝しました。


(さあ、それでは聞かせてもらう。魔王の件じゃ。昨晩、魔王が部屋を訪ねてきた後はどうしたのじゃ?)


 お母様がそう仰ったので、私はお母様の記憶力の良さに脱帽しました。


 ダメでした……。話を反らせていませんでした……。

お世話になっております。柳アトムです。

ここまで私の小説を読んでいただき、本当にありがとうございます。

( ᵕᴗᵕ )ウレシイデス


グランダムさんのお話はどうでしたでしょうか?

(,,•﹏•,,)ドキドキ


グランダムさんは見た目は俺サマ王者ですが、しかしその実、中身は素直で聞き分けの良い熱血漢で、さらにちょっとだけ脳筋ポンコツという殿方にしてみました。

ふだんは俺サマぶってオラついているのに、身勝手が過ぎて彼女に怒られると急にオロオロするような、そんな「俺サマくん」の可愛らしさを描ければいいなと思っております。

気に入っていただければ幸いです♪

( ᵕᴗᵕ )


さてさて、そんなグランダムさんの登場で、お母様の追及を上手く誤魔化せたかと思ったんですがね~(あははははは汗

駄目でした(涙

お母様は忘れておられませんでした(涙


さてさて、心優がこのピンチをどう乗り切るか?

どうかどうかお楽しみにしていただけますと幸いです。

皆さまのご期待にそえるよう頑張ります~!

୧(˃◡˂)୨

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― 新着の感想 ―
お母様、覚えていたのですね(^_^;) 侮れませんね(^_^;) アトム様の作品は読んでいて楽しいです(^^) また、続きも読みに伺いますね(^^)
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