003話 お母様になった私
皆さんが部屋を出て、一人になった私は鏡の前に立ちました。
今の自分の姿を確認したかったのです。
恐る恐る鏡に映る自分を見てみると、そこには私ではなく魔王のお母様───ネフェル・パトラ・アスタロッド様が映し出されていました。
私が右手を挙げると鏡の中のお母様も右手を挙げます。私が微笑むと鏡の中のお母様も微笑み返してくれます。
「私……本当に魔王のお母様になってる……」
私は本当に驚きました。
このような事が現実に起こるなんて……。さすが異世界転生。凄いです。
そして私は恐る恐る視線を下ろしました。
そうすると少し目線を下げただけですぐに大きな胸が視界に入ってきました。
お母様のお姿になる前の私は細身で線が細く、全体的に真っ直ぐな感じでした。
そして身長だけは百七十cmと女としては高身長だったので、より一層ヒョロっとした感じが強く、母親から「心優ってほんと割り箸みたいね」と言われてしまう程でした。
因みにその時の言葉の短剣は今も胸に刺さったままです。
そんな私が急にこのような大きな果実を手に入れたので、どう扱えば良いのかとても困ってしまいました。
ひとまず上から軽く押さえてふかふかの感触を確かめたり、下から持ち上げてタプタプと揺れる重みを楽しんだりしていると───
(───おい。そうあまりいじくりまわしてくれるな。さすがに少し気恥ずかしいわ)
「───っ!!! ええっ!? お、お母様っ!? ど、どちらにっ!?」
私はびっくりして部屋の中を見渡しました。
(どちらも何も、妾はここにおる。おぬしと同じく妾の中じゃ。まあ、この身体が妾の身体なのじゃから当然じゃろう)
い、言われてみればそうですが……。
それなら一言そう言っていただきたかったです……。
「お母様の御身体を弄んですみませんでした……」
私は頭の中で土下座をしてお母様に謝罪しました。
(よい。妾の身体を預けるのじゃ。恥ずかしがっても仕方ない。隅々まで確認して委細を把握するがよい。それよりおぬしも疲れたであろう。今日は早々に休め。妾も寝るゆえ)
「あ、あのお母様とはいつでもお話しできるのでしょうか?」
(いや、妾も四六時中意識があるわけではない。何せ妾も倒れて死にかけたところじゃからな。ふだんは眠り、何かあればその時だけ起きる。それ故、些事についてはおぬしが良しなに対応せねばならん。頼んだぞ)
そう言われるとお母様は眠りにつかれようとされました。
私は全く眠くありませんでしたが、夜も更けていましたのでお母様の仰る通り今日は寝た方が良さそうだと思いました。
そこで豪奢な天蓋付きベッドのフカフカ具合を確かめようと思いましたが、その時───不意に部屋の扉がノックされました。
とても小さなノックで、恐る恐るといった感じでした。
一瞬、気のせいかとも思いましたが、確かに扉の前に誰かがいるようでした。




