002話 見つめ合う私と魔王様
「とにかくネフェルを部屋にお連れしろ」
赤髪の精悍そうな青年が侍女に命じました。
「それと医者も呼んでください。我が国で最高の名医をお願いします」
次に金髪の優しそうな顔立ちをした糸目の青年が、そう執事に命じました。
「僕は祈祷師を連れてくるよ! あと回復薬や解毒剤、それに魔力強壮剤も持ってくるから!」
人懐っこそうな笑顔の黒髪の青年はそういって走り出しましたが、「あ、でも祈祷師ってどこにいるんだっけ?」と右往左往し始めました。
私は状況の整理が追い付かず、青年たちがあれよあれよという間に事を進め、侍女や執事、それに人懐っこそうな黒髪の青年がバタバタと走り回る喧騒を呆然と眺めることしかできませんでした。
しかし、そんな私はあることに気づきました。
それはこれ程までに慌ただしい喧騒の中で、ただひとり、時が止まったかのように静止している人がいたのです。
それは玉座にお座りになった男の子でした。
年は六~八才くらいでしょうか。
薄水色に近い銀髪に、幼さが残りつつも利発そうな凛々しい顔立ち───。
この男の子が高貴な生まれの御子であることは容易に想像できました。
その為、私はこの男の子こそお母様が仰っていた魔王様であると確信しました。
魔王様と目が合った私はしばし見つめ合いました。
その事に気づいた三人の青年は、取り乱していた自分たちを省み、魔王様の前に片膝をついてかしこまりました。
そして三人とも、魔王様のお言葉を待ったのです。
しばらくして魔王様は震える声でお言葉を発しました。
「……お、おか……、い、いや……ネ、ネフェルよ。きゅ、急に倒れたが、だ、大事ないか?」
どうやら私を気遣って下さっているようです。
「あ、はい。あの、すみません。自分ではよく覚えていないのですが、大切な式典の最中に倒れてしまったようで……。ご迷惑とご心配をおかけしました。でももう大丈夫です」
私がそう答えると三人の青年が怪訝そうに私の方を振り返りました。
三人とも一様に「あり得ないもの」でも見ているような顔をしておられます。
「そ、そうか……。な、ならばよい。だが念の為だ。部屋に下がって休むがよい」
魔王様はそう仰ると、三人の青年に私を託し、玉座を降りて奥へとお戻りになりました。
私はそんな魔王様の様子に大きな違和感を覚えましたが、三人の青年にされるがまま部屋に戻され、医者の診察を受け、祈祷師の祈祷を施され、そして山のような栄養剤を飲まされました。
「どうだ? 少しはマシになったか?」
「まだ気分が悪ければ遠慮なくいって下さい」
「まだ魔力強壮剤が残ってるよ。これも飲んでみる?」
代わるがわる青年が介抱をしてくれましたが、私は考えを整理する時間が欲しかったので、疲れたので休みたいと言って皆さんに部屋から出て行ってもらいました。




