001話 異世界転生で魔王のお母様に会う
気が付くと真っ白な部屋にいました。
私こと杵築 心優は、この部屋が「異世界転生の部屋」だとすぐに気づきました。
「まさか私が異世界転生するなんて……」
おそらくこの後、女神様があらわれ、私はスキルを授かって異世界に行くことになるのだと思います。
「女神様ってどんな方なんだろう……? 私はどんなスキルをもらうことになるのかな? あと私って現実世界で死んじゃったのかな? どんな風に死んだのか全く覚えてないんだけど……」
そう独り言を呟いていると「おぬしは死んでおらんぞ」と後ろから声をかけられました。
私は飛び上がるほど驚きました。
どうやらすぐ後ろに女神様がおられたようです。
「す、すみません、女神様! 後ろにおられたとは気づきませんでした!」
私が振り返ると、そこには黒いドレス姿の女神様が立っておられました。
女神様のドレスは胸元がとても開放的で、スカートのスリットも大きく、光り輝くおみ足が露わになっていました。
ちょっと妖艶な雰囲気もあり、私は想像していた女神様とは少し様子が違うなと思いました。
女神様は清らかな聖女のような方だと想像していたからです。
「あの、女神様……私は死んでいないというのはどういうことでしょうか?」
「そのままじゃ。おぬしはまだ死んでおらん。じゃが、妾が力を貸さねば遠からず死ぬことになるじゃろう」
「そ、そうなんですね。あの、まだ死にたくないので、是非お力添えをいただきたいのですが……」
「よかろう。では妾の頼みを聞いてもらおう」
よかった。ちゃんとこの展開になりました。
女神様が想像していた方と違ったので少し不安になりましたが、これで私はスキルを授かり、異世界に転生して任務を果たせば現実世界に戻れそうです。
分かり易いテンプレ展開で助かりました。
「はい。喜んで依頼をお受け致します。私はどんなスキルをいただき、異世界で何をすればよいのでしょうか?」
そう言うと女神様は片方の眉をクイッと引き上げられました。
「スキル? なんだそれは? そんなものは与えんぞ?」
───え? ま、まさかスキルなしで異世界に放り込まれるパターンですか?
私は慌てました。
「あ、あの、女神様。私は異世界が初めてなので、どんな能力でも構いませんので何かスキルをいただきたいのですが……」
すると女神様はますます眉を引き上げられました。
「まず先ほどから妾のことを“女神”というておるが、妾は“女神”ではない」
そう言われて私はとても驚きました。
「えっ?! そうなんですかっ?! そ、それは失礼しました……。あの、それでは貴女はいったい……?」
「妾は魔王の母じゃ」
「ま、魔王の……お、お母様……?」
「そうじゃ。妾こそ大魔王マルフィス・ベルフェゴル・アスタロッドの母───ネフェル・パトラ・アスタロッドである」
な、なるほど……。魔王のお母様だったのですね。
確かに黒の妖艶なドレス姿は、言われてみれば「魔王のお母様」といった感じです。
女神様とイメージが合わないことに納得できました。
「女神様と間違ってしまって失礼しました。あの、ところでお母様……」
「なんじゃ?」
「その……。少し寒くありませんか……?」
「……なんじゃと?」
「あ、いえ、このお部屋ですが、ちょっと寒いなと思ってまして……。お母様は素敵なドレスをお召しですが、胸や背中が開放的で、おみ足も大胆に出されています。ですのでもしかすると私と同じく───いえ、私以上に寒いとお感じなのではないかと思いまして」
私は仕事用の白の長袖ブラウスに薄ベージュの膝下タイトスカート、それにジャケットを羽織っていましたが、それでもこの部屋は少し肌寒いと感じていました。
そんな私より遥かに薄着のお母様は、きっと寒いとお感じなのではないかと思ったのです。
「こんなこともあろうかと私はショールをいつも持ち歩いております。宜しければどうぞお使い下さい」
そういって私はショールをお母様の肩にまわしました。
お母様は何も言わずにショールをお召しくださいました。
「……ふむ。おぬしは聞きしに勝る気遣いっぷりじゃな。見込んだ通りじゃ」
「ありがとうございます。……───え? 見込んだ通り? それはどういうことでしょう?」
「おぬしのように気遣いができる者を探しておった。何せ妾は気遣いが全くできぬからのう」
確かに仰る通り、お母様はとても威厳に満ちておられ、下々の者をいちいち気遣うという事とはご縁がなさそうです。
「スキルが欲しいと申したな?」
「は、はいっ。是非ともいただきたいと思っております」
「スキルはやれんが妾の身体はやれるぞ。好きにするがよい」
「………………へ?」
私は一瞬、お母様の仰った言葉の意味が理解できず、気の抜けた返事をしてしまいました。
「す、すみません、お母様。今、なんと……?」
「妾の身体をやるから好きにせいと言ったのじゃ」
───……御身体を好きにして良い……?
───そうお母様は仰ったのでしょうか?
───それはアレでしょうか……?
───つまり大人の世界のお楽しみ的な方面の……?
私は改めてお母様の御身体を拝見しました。
お母様はすらりとした長身で細身の方でしたが、胸はとても豊かでドレスからこぼれ落ちそうな程でした。
優美な腰のくびれ───その先に伸びるおみ足は光り輝き、目が眩むほどの眩しさでした。
───……この御身体を好きにして良いと?
事態を理解した私は鼻から盛大に鮮血を噴き飛ばしました。
ショックと出血多量で危うく本当に死んでしまうところでした。
「し、失礼しました、お母様」
私は鼻血を噴き飛ばした醜態を謝罪しました。
「御身体を好きにしてよいというのは、そ、それはつまり……対価を御身体で支払うということでしょうか?」
「まあ、そういうことであるな」
お母様はなんの躊躇いもなくあっさりお認めになりました。
思わず鼻血を噴き飛ばしましたが、しかし私は同姓なので、できればそういうお申し出は異性である殿方にされる方が効果的かと思いました。
おそらくお母様にそのように申し出られて拒絶できる殿方はこの世におられないでしょう。
「あ、あの、お母様。お申し出は大変嬉しいのですが、残念ながら私はそういう百合的な属性は持ち合わせておりませんで……」
「百合の花がどうしたというのだ? そんな花のことなど今はどうでもよい。それよりおぬしは妾となって、魔界で我が子の世話をするのじゃ」
「……はい? え? 私がお母様となって魔王様のお世話を……?」
「そうじゃ。残念じゃが妾はおぬしと同じく、今、魔界で死にかけておる」
「───っ!? そ、そうなんですか? お母様、それは大変ですね……」
「そこでおぬしが妾の身体に入り、妾の代わりを務めるのじゃ。そうすればその間、おぬしは妾の中で生きながらえることができるじゃろう。そして妾もしばし休眠し、力を貯え、機が熟せば復活し、おぬしを元の世界に返してやることができる。どうじゃ? 悪い話ではなかろう?」
「えっと……。すみません、ちょっと理解が追いついていないところがあって幾つか質問したいのですが、宜しいでしょうか?」
「宜しくない!!! 時間がないのじゃ! つべこべ言わず、さっさと妾となって魔界に行くのじゃ!」
「───っ!!! は、はいっ! 失礼しましたっ! では不肖・杵築 心優っ! 魔界に行ってお母様となり、魔王様のお世話をして参りますっ!」
先ほど「分かり易いテンプレ展開で助かりました」なんて言ってすみませんでした。
少し……いえ、かなり思っていた異世界転生とは違うようです。
私はどうなってしまうのでしょうか……?
魔界行きを了承した私は俄に落下するような浮遊感を覚えました。
それと同時に視界が狭くなり、意識が遠のき始めました。
私が完全に意識を失う直前に、お母様が何かを叫んでおられたように思います。
「よいか! 魔界の三人の王子! 奴らにだけは気をつけるのじゃぞ! 何せ奴らは□□□の事を□□□□より□□じゃからじゃ! 決して□□するでないぞ!」
最後の方の言葉は聞こえたような聞こえなかったような……そんな感じで詳細を記憶できませんでした。
とにかく魔界には三人の王子がおられるということだけは認識することができました。
私は眠りにつくかのように意識を手放しました。
どのくらい意識を失っていたのかわかりませんが、私が目を覚ますと、三人の若い男性が私の顔を覗き込んでいました。
「目が覚めたか」
「大丈夫っ!?」
「気分はどうです? どこか痛みますか?」
「こ、ここは……?」
「意識が朦朧としているな」
「ここは魔王の城の謁見の間だよ」
「記憶が定かじゃないみたいですが、今は無理に思い出そうとしなくていいですからね」
代わる代わる何かを言われましたが、私は状況を確認すべく上体を起こしました。
私の目の前には赤髪の精悍そうな青年がいて、私の眼を真正面から見据えていました。
その左には金髪の優しそうな顔立ちをした糸目の青年がおられ、そして反対の右側には人懐っこそうな笑顔の黒髪の青年がおられました。そして皆一様に私の顔を覗き込んでいました。
「あ、あの、先ほどここが魔王の城と仰いましたでしょうか───うみゅ?」
私が口を開くと赤髪の精悍そうな青年が人差し指と親指で私の顎を挟み、頬をキュッと摘みました。そうされると口が自ずとアヒル口になってしまいます。その為「うみゅ?」などという間抜けな声が漏れてしまいました。
「他を見るな。俺の眼を見ろ。俺の眼だけ見ていればいい」
赤髪の精悍そうな青年はそう言って私の顎をクイッとあげました。
そしてじっと私の眼を見つめました。
「ふむ。瞳に曇りはないな。何かの呪いではなさそうだ」
まさかの人生初「顎クイ」でした。
驚きましたが、なるほど……確かにこれは悪くありませんね。力強く、少し乱暴な扱いに不快感を覚えるかと思いましたが、意外にも嬉しく思うような感覚を覚えてしまいました。
例えるなら、子供の頃、父親に「たかいたかーい」や「ひこうきごっこ」をしてもらっているような感覚でした。自分では決して抗えない大きくて力強い相手ですが、信頼感があり、そんな相手に翻弄してもらっているというスリルと喜びが混在するような感覚です。
「顎クイ」とは奥が深いものだと認識しました。これは「壁ドン」や「お姫様抱っこ」もそのようなものなのかもしれないと楽しみになりました。
「あ、あの、私はここで意識を失って───うみゅ?」
私が喋ろうとすると、今度は黒髪の人懐っこそうな笑顔の青年が飛びついてきました。
そしてくっついてしまうかと思う程、頬と頬をギュッとされてしまいました。そうされると自ずと口が数字の「3」のような形になってしまいます。その為、またもや私は「うみゅ?」などという間抜けな声を漏らしてしまいました。
「よかったー! 急に倒れるんだもんっ! びっくりしたよっ!
香りはどう? くんくん───ふんすふんす───。
うん。香りは大丈夫。いつもと同じでとてもいい香りがするよ!」
「倒れた? 香り? あの私はいったい───うみゅ?」
今度は金髪の優しそうな顔立ちをした糸目の青年です。
そっと人差し指を私の唇にあて、言葉を遮りました。
優しく一押しされただけでしたが、不意をつかれてしまい、私はまたもや「うみゅ?」と漏らしてしまいました。
「今は無理に喋らなくていいんですよ。静かにして額をこちらに向けてください」
金髪の優しそうな顔立ちをした糸目の青年は私の前髪をかきあげると顔を近づけ、自分の額と私の額をくっつけました。
一瞬のことで私は何もできず、身動き一つせず彼を受け入れてしまいました。
「うん。熱はなさそう。額は熱くないですね。
……あれ? でも顔が真っ赤ですね。やっぱり熱があるのかな?」
これは貴方の顔が、文字通り額がくっつくほど近かったからです。
皆さま、お世話になっております。柳アトムです。
この度は私の小説を読んでいただき、本当にありがとうございます。
୧(˃◡˂)୨
本作の第一話はどうでしたでしょうか?
(,,•﹏•,,)ドキドキ
本作は、同名タイトルの作品の改稿版です。
改稿前は、なろ様で「毎日更新!」に挑戦しようとしていた頃だったのですが、毎日更新に挑戦するのが初めてで、ちゃんと更新できるか心配だったので一話の文字数を少なくして投稿していました。
その為、お話が細切れになってしまっていたので、それらをまとめ直し、改稿版として改めて投稿する次第です。
改稿後を読んでくださった皆さま、どうでしょうか?
読みやすい作品と思っていただけましたでしょうか?
改稿前を読んでくださった皆さま、どうでしょうか?
少しは読みやすくなったでしょうか?
(,,•﹏•,,)ドキドキ
この後のお話もまとめ直しつつ、文章のおかしな部分も直しつつ、読んでくださる皆さまに「面白い!」と思っていただけるよう頑張ります。
( *˙ω˙*)و
今後とも、どうかどうか宜しくお願い致します~!
୧(˃◡˂)୨




