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釣り場であった怖い話集  作者: 小峠 通


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4/5

クソデカ目玉

 深夜、また私は釣りに来ていた。人がいない時間を見計らうとそうなるのだ。だというのに、今日は先客がいるようで。


 その波止場は段になっていて、外からの波を受けるようになっている。その段の上に登って、恐らくコウイカ辺りを狙っているだろう餌木(イカ釣り用のルアー)を竿に着けた人物がいた。


「こんばんは」


 そう声を掛けると、相手も返してきた。それ以降の交流はない。


 こちらはこちらで準備をして、ゴカイ(海釣りのエサの海版ミミズのようなもの)を針に取り付け(きす)釣りを始める。


 釣果は上場だった。腕がいいのではない、場所がいいのだ。




 暫くすると、空気が変わった。まるで近くをバカでかいタンカーでも通りかかっているような、重い感じがしてきたのだ。


 私は気にせず釣りを続けていたが、件の人物はそうしなかった。いやできなかったのかもしれない。


 彼は突然私の近くに足早にやってくると、


「あの、変なこと言いますけど、今海の中の目玉が、クッソ大きい目玉が二つこっち見てたんです」


 そう言った。


 私は引き気味にそうですか、とだけ返して釣りを続ける。そんなことよりも切実な問題があった。ゴカイを使いきってしまわないと保存が面倒だからだ。わざわざ買った物を海に捨てるというのにも抵抗がある。


 彼はまだ何か言いたそうにしていたが、そのまま帰っていった。私は一人釣りを満喫していた。堤防にキャンプ椅子を置いて座っており、段差があるので海面は視界に入らない。


 釣りあげている途中、一回だけもの凄い力が掛かって糸を切られた。多分釣れていた鱚に大物が食いついたのだろう。よくあるよくある。

 私は仕掛けを繋げ直して釣りを続けた。


 陽が上る頃には気配は消えていた。鱚は親戚にも配った。

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