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釣り場であった怖い話集  作者: 小峠 通


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2/5

スナメリ

 深夜アナゴ釣りに来ていた。周囲には誰もおらず、小雨が降りだしてきていた。

 この釣り場は断崖になっており、また内海なので流れは穏やかでいる。


 深夜の二時、所謂丑三つ時である。


 穏やかな海面を小さく叩くような雨に紛れて、向かって左側に水の波紋が窺えた。何か大きな石でも海に投げ込んだら起こるのではないかという波紋だ。


 波紋は三度にわたって起こり、私の正面のほうへと近づいてきて、正面にあるホテルの明かりに照らし出される。頭が出ていた。水に濡れた哺乳類独特の丸みを帯びたぬめぬめとした光沢は、恐らくイルカの一種であるスナメリのものだろう。


 スナメリがいると、魚は釣れない。皆逃げてしまうからだ。

 私はすぐに帰り支度を整えて、家に帰った。


 後日、友人にその話をした。


「多分スナメリだと思うんだけど、ああいうのを見て昔の人は海坊主を生み出したんじゃないかねえ?」


「本当に人だったんじゃないのか?」


 深夜の内海で、泳ぐ人間などいるものか。そう断ずることのできない地域ではあった。


 私はその釣り場に行くことを辞めた。

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