13話 伯爵邸での万事解決生活
「…といった感じで野営地近くに手紙と一緒に放置してきました。」
「放置って…」
「会ってしまうと調書やなんやらかでうっとうしくなるので…」
「うっとうしいって…」
「シルドが騎士団につかまってると朝食、食べれなくなるよ。」
「でかしたシルド君。で手紙の内容は?」
「書き損じた分がここに。書いてる最後でインクが垂れちゃって」
『この者たちは、馬車塚で商人を急襲した連中。アクドーイ侯爵の手先の可能性あり。調査を要請する。緑部隊長 マイケル=ウェドゥn●』
…
「シルド君、この手紙の内容じゃぁ……ん、この紙は?」
「えっ神父様がよく手紙に使ってる紙ですけど。」
「うん、これで騎士団も動いてくれるよ。ご苦労様。シルド君。」
「は? はあ。」
「で、目的地はロレンス伯爵邸だったね。そこならよく知ってる。私が案内しよう。」
「よろしくお願いします。」
「レード君。こっちだ。」
ケル兄さんとリル姉さんが先導してくれるが…
えっと、そっちは貴族、騎士用の門では?
門に到着すると、衛兵が駆け寄ってきた。
「ウェドゥネス卿、それにライセル卿。そちらの方々は」
「私の大事な友人たちです。」「通してもらえないかな。」
「はい!ですが一応、身分証を確認させてください。」
「わかった。シルド君!」
「はい!今すぐ」
俺は皆の身分証を持って、衛兵の元へ
「前の馬車はドゥーブル冒険者ギルド所属で、乗員は、冒険者シルド、冒険者レード、ギルド職員ニャルムです。
後ろの馬車はフィーン王国商業ギルド所属、乗員はクライフ=ローレンと妻ホロウ娘ミリとなります。」
…
「身分証に問題ありません。遠路はるばるお疲れ様です。ようこそ王都へ」
並ぶことなくすんなり入れた。
「クライフさん。私が先導しますのでついて来てください。」
伯爵邸に到着。
すると門番さんが寄ってくる。
「こちらの馬車は、どのような御用向きでしょうか。」
「私はクライフ=ローレンと言います。アラブール様より家宝運搬の命を承ったものにございます。アラブール様へのお取次ぎを願います。」
クライフさんは身分証を差し出す
「確認しました。話は聞いております。ですが護衛は三名と聞いておりますが…」
「私はルーフィン騎士団に所属する者である。」「私はコウフィン騎士団に所属する者である。」
「我々はこの御仁をロレンス邸まで案内しただけの事」「我々はこれにて失礼する。」
「はっ!お役目ご苦労様です!」
騎士の口上、かっこいいなぁ。
リル姉さんも凛とした態度が出来たんだな。
「シルド君、レード君。後でね。」「またね~。」
うん、リル姉さんはリル姉さんだ。
二人はそのまま馬に乗って去っていったが、またすぐに会うことになるのだろう。
俺たちは馬車留めに案内された後、荷箱(木箱を修理、中は偽壺破片)を持って中に入るよう促された。
そして案内されたのは応接室…ではなく寝室。
となるとそこには危篤な伯爵が………なんで危篤なはずの伯爵がダンベル持って腕を鍛えてるの?
荷箱を持ってるのも疲れるのでとりあえずテーブルに置かせてもらおう。
「父上!危篤じゃなかったんですか?」
「よく帰った、クライフェルト。まったく10年もほっつき歩きよってからに。……お帰り。」
「…ただいま戻りました。父上。」
「兄上、お帰りなさい。」
「ただいま。」
「実は、この前、騎士の鍛錬中にしくじってな。足をくじいただけなのだが、アラルがの、『危篤』ということにしましょうと提案してきんじゃ。」
「アラル!なんで教えてくれなかった!」
「それよりも紹介してくれんか。そちらが奥方と娘なんじゃろ。」
「…はい、妻のホロウと娘のミリです。」
「お初にお目にかかります。クライフ=ローレンの妻、ホロウと申します。」
ホロウさん。あんまり驚いていないところを見るとクライフさんの事情は知っていたのかな?
「ミリと言います。お父さんのお父さんだったら…おじいちゃん…ですか?」
「そうだよ。おじいちゃんだよ。もうと近くに来て顔を見せておくれ。」
和やかな雰囲気の中、
「いきなり入ってこられては困ります。」
「ええーい、お退きなさい私は侯爵ですよ。」
爵位振りかざせば何でもできると思い込んでる奴がやってきた。
「おや、思ったより元気そうですね、ロレンス伯爵。」
「アクドーイ侯。無礼ではないのかな。先ぶれもなく寝室にまで押しかけて。」
「私はそちらにおられるアラブール殿が次期伯爵としてふさわしくない事をお伝えに来たんですよ。」
護衛としてついてきた騎士は襲撃団のリーダーさんだ。
こっちに気が付いたようなので <ニヤリ> としたら青くなっていた。
「アラブール殿は家宝の運搬を依頼したにもかかわらず、その家宝は壊されたと聞いていますぞ。家宝運搬をどこの馬の骨とも知れない輩に頼むなど次代としての心構えが足りないと言いたいのですよ。」
「ほほう、息子が、運搬を依頼した者の素性がはっきりしていないと言いたいのですかな。」
「はい、その上でさらに、その運搬している家宝が壊されたとあってはその護衛の質もたかがしれてますなぁ。」
[ニャにおー]
レードがニャルムさんの方を<ポンポンと>叩いてくれた。
俺たちの事で怒ってくれるのはありがたいが、もうちょっと我慢してね。
「家宝を運んでくれたのは、もう一人の息子のクライフェルトだが、それを『馬の骨』と侮辱するのですね。アクドーイ侯」
「えっ、でもクライフェルト殿は行方知れずだったはず…。もしや偽…」
「まだ我らを侮辱するおつもりですかな?」
「ヒッ!」
伯爵様って武人系か。
発した覇気に、アクドーイがビビってるな。
「ししししかし、か家宝は壊されたはず。そ、その責任はどう取られるので。」
「家宝については当家のことゆえ口出し無用に願いたいのですがねぇ。」
さて、この辺で追撃に入りましょうか.[レード。頼む]
「伯爵様。発言よろしいでしょうか。」
「君は?」
「今回、クライフェルト様より護衛を任されましたドゥーブル冒険者ギルドの冒険者レードと申します。」
「で、何が言いたいのかね。」
「私ともう一人の冒険者シルドとギルド職員ニャルムとでクライフェルト様の護衛において、何度か襲撃に遭いましたが、クライフェルト様ご一家、積み荷等、何とか守り抜き無事、伯爵邸へとお届けすることができました。アクドーイ侯爵様が言われる『家宝が壊された』という情報。どこから入手されたのでしょうか。」
「え、いや、あの…」
「もし侯爵様が言われるように『壊された』ことが事実ならば、侯爵様はその『壊された』現場にいた方と接触なされたということになります。ね、後ろに控えられてる護衛騎士さん♡」
護衛騎士さん。俺の<ニヤリ>よりレードの微笑の方が効果があったようだ。青を超えて白く燃え尽きかけてる。
「そんなことはどうでもいい。その箱の中は壊れた壺でしょう。見せなさい。」
アクドーイは無理やり荷箱に近寄り荷箱を開けた。
「ほら、壺の破片だ。家宝が壊れてるじゃないですか。」
「伯爵様。あの壺の破片。家宝にお間違いないでしょうか。」
「うむ、家宝の壺にしては青みが強いな。家宝に色味はそなたの着ている上着のような落ち着いた青のはず。もしやこれは偽物?」
「嘘だー!リーダルよ、お前は壺は一つしかなかったと言ってたではないか。その壺を割ったと。」
あ~あ、言っちゃったよ。護衛騎士さんの方向いて言っちゃいけないヤツだよ。
「アクドーイ侯。今の発言、聞き捨てなりませんなぁ。」
「まぁまぁ、伯爵様。もう一つ面白いことがあるのですが…見たくありませんか?」
「うむ…そういわれると見たくなるな。あ奴の処遇は後でいいか。続けてくれ。」
「じゃあ、シルド。」「ホイきた」
俺は破片に白い布をかぶせて、
「ではいきますよ。1、2、3!」
俺はレードの言葉に合わせて布を取ると。
「おおーこれこそが家宝の壺!」
「どうやったのです?」
「そうだ、どうやったのだ?どこから出したのだ?」
「伯爵様。それは…企業機密です。」
…
「…なるほどな。種が解ってしまえば面白みもないか。いや無粋なことを言った。」
「いえいえ。お楽しみいただけましたでしょうか?」
「うむ、今日は良い日だ。息子が嫁と娘を連れて帰って、その上、家宝の件で面白いものを見せてもらっ…」
伯爵様が喜んでいるところに、執事さんらしき人が入ってきて、こう告げる。
「失礼します旦那様!至急お伝えしたいことが。」
「せっかく喜びに浸っているところに無粋な。なんだ?」
「実は…………」
「何!すぐ入ってもらえ!」
「はい!」
『入ってもらえ』ということは誰が来たんだろう。
「失礼します。私はコウフィン騎士団、緑部隊所属部隊長 マイケル=ウェドゥネス と申します。先ぶれも無しにご訪問した事申し訳ありません。緊急案件につきお許しを願いたく思います。」
ケル兄さんだ。一緒にリル姉さんもいる。
「そちらにいるアクドーイ侯の件であろう。進めてくれ。」
「ありがとうございます。アクドーイ侯爵様。あなたはクライフ=ローレン一家襲撃事件の首謀者として証拠が出そろいましたのでご同行願います。」
コウフィン騎士団が動いてくれたんだな。さすが部隊長。
「私は関係ない!関係ないぞー!」
アクドーイも往生際が悪い
「失礼します。私はルーフィン騎士団、黄部隊所属部隊長 リゥエル=ライセル と申します。 今回の最後の襲撃においては、ウェドゥネス卿とその場におり、共に撃退いたしましたので私も当事者ということで同行させてもらいました。その最後の襲撃時、指揮をとられていたのがそちらの、リーダル=チョップス卿です。チョップス卿、ご同行願います。」
護衛騎士さんはもうすでに魂が抜けちゃってる状態だ。
そして
一人は騒がしく
もう一人は屍のように
ドナドナされていった。
「クライフさん、これで一件落着ですか?」
「『一件』どころじゃないよ。こういった場合は『万事解決』というんだよ。」
なるほどいい事言うなぁ
「シルドさんたちはいつ頃ドゥーブルへ帰るんです。」
「3,4日はゆっくりするつもりです。」
「もしよかったら、ロレンス領に帰る際のドゥーブルまでの護衛をお願いできませんか。」
「それは構いませんが、次代申請手続きって3,4日で終わるもんですか」
「それほど難しくはなかったと思いますが…終わらなければアラルに押し付けます。」
「兄上、ひどいです。」
「私をだました罰です。」
「それでは俺たちは失礼します。日程が決まれば連絡くださいその場合出発が5,6日後でも構わないので。」
「わかった、必ず近日中に連絡する。」
「レード君、帰りもよろしくね。」
「はい、お任せください。」
「お姉さん。帰りはもっといっぱいお話ししよう」
「そーですニャねー。楽しみにしてますニャ。」
部屋を退室しようとしたら
「レード君といったか。」
伯爵様に呼び止められた。
「終了証明書を出しなさい。一筆加えておこう。」
いいねコメントは、励みになる。
悪いねコメントは、改善点としてしっかり受け止める。
「よろしくお願いします。」
<さらさらさら><ジュー…ポト、スタンプ>
「さぁ、持って行きなさい。本当にありがとう。」
「はいありがとうございました。」
「これでお前たちとお別れか」「寂しくなるな」
「それは…アニさんのクッキー食べれなくなるからか?」「おいしいもんね、馬クッキー」
「いや、それもあるが…な」「たのしかったぜ。」
「おれたちゃ馬だ。走っていれば」「またあえるよ」
「そうだな」「また会おう」
この数日後、再会するのであった。
「クライフェルト様が帰ってこられたんですって。」
「アラルこちらの方は?」
「ヤスミン=マーリカ子爵令嬢です。私の婚約者です。」
「婚約者いないんじゃなかったのか?」
「結婚はまだ といっただけです。婚約者がいないなんて言ってません。」
「私って御姫様だったの?!」
「ミリ、『御姫様』ではなくこの場合『お嬢様』の間違いですよ。」
「儂にとってはミリちゃんは『御姫様』だー!」
「お義父様は黙っていて下さい。」
「…はい」




