9話 騎士との再会生活
次の宿場町で手に入ったチキンの肉で照り焼きチキンを作ったらすごく好評だった。
この世界ではラプトル系の竜の事を『チキン』という。
だから『チキン野郎』というと『臆病者』ではなく『獰猛な奴』という意味になる。
朝方、馬クッキーのアレバージョン作っていたら。
[ニーチャ、いいにおいがするよう]
[がまんだ。今動いたら、俺たちだけでなくアニさんも叱られる]
[わーにおいの暴力だー]
[たべてーよー]
今度は防臭結界も張って焼こう。
「ごめんね、レードにばれないように黙って食べてね」
4頭とも首を縦に振ったので、新作馬クッキーをあげたら
<!>
<!>
<!>
<!>[…うまいぞー!]
最後の1頭のせいでレードにばれてしまった。
俺は朝食の準備という名目の元、説教を免除されたが…馬の正座、初めて観た。
高台の道を走行中、下の平原で騎士たちが演習しているのが見えた。
旗印から見ると一方がコウフィン公爵家、一方はルーフィン公爵家のようだ。
「演習終了。各部隊、損害報告」
「緑:軽傷者2名 重傷者5名 死者2名」
「黄:軽傷者10名 重傷者なし 死者1名」
なんとも物騒に聞こえるが、実際には怪我人がいるようには見えない。
どうやら、使用している剣に細工がしてあり、鎧やアンダーウエアに当たると色がつく仕組みで、その数で判断しているようだ。
「双方とも引き分けのように見えるが、傷者0、死者0が望ましいことは解るな。ではそれぞれ撤収に入れ。」
騎士たちが兜を脱ぐ中、見知った顔を見つけた。
「リル姉さーん、ケル兄さーん。」
二人とも片手をあげて応えてくれた。
そして副長らしき人に何か言った後、リル姉さんは『マギクキャノン』ケル兄さんは『速度強化術』で文字通りすっ飛んできた。
「久しぶり、元気してた?」
「こんなところで会うなんてね。」
「そうですね。」「ケル兄さん。私たち『ソニックブレード』マスターしたよ。」
「すごいじゃないか。」
「そんな事よりさ、この時間だと次の馬車塚で野営でしょ。私たちの夕食、用意できる?」
「できるけど…どういうこと。」
「じゃあ決まりね。マイケル。演習総括に許可もらうわよ。」
「わかった。この後、馬車塚で合流しよう。」
二人とも来た時と同じように戻っていった。
で、馬車塚で野営準備中に二人は馬に乗ってやってきた。
「ヤッホー。来たよ。」
「『来たよ』じゃないでしょう」「演習中じゃなかったの?」
「演習自体は終わっていたので、問題はないです。」
「そうそう。『武術を教えた者と久しぶりに会ったのならその者の成長を見定めるのも騎士の務め』ってね。」
こじつけだなぁ
「クライフさん。この方たちは俺たちの剣、盾の師匠…とまでは言いませんが、教えてくれたお姉さんとお兄さんです。」
「私はルーフィン騎士団、黄部隊所属部隊長 リゥエル=ライセル と言います。この場では身分など気にせず気軽に『リル』とお呼びください。」
「私はコウフィン騎士団、緑部隊所属部隊長 マイケル=ウェドゥネス と言います。この場では私の事は『マイケル』とお呼びください。」
「ご丁寧なあいさつ痛み入ります。私、ロレンス領で行商人を営んでおりますクライフ=ローレンと申します。」
「目的地は王都とお見受けします。同行させてもらってもよろしいでしょうか。」
「それは構いませんが、対価など払えませんよ。」
「いえ、弟分と一緒に居たいだけですのでお気になさらずに。」
「そういうことでしたら、よろしくお願いします。」
「ということでシルド君。今日の献立は何かな?」
「リル姉さん。はしたない。」
「シルド君の腕はシスター仕込みよ。一口食べたらそんな事言ってられなくなるから。」
「それより、クライフさんの奥さんと娘さんもいるんだからちゃんと挨拶して。」
「礼儀を知らない人にシルドの料理はあげない。」
「それは困るので挨拶してきます。」「私も」
「こんばんは。私はマイケルと言います」「私はリルよ」
「こんばんは。私はホロウ。こちらは娘のミリです。」
「ミリちゃんこんばんは。」
「そうだミリちゃん。お兄さんたちの小さかったころの話。聞かせてあげようか。」
リル姉さんは何を言い出すやら。
「わぁ聞きたい。」
「ご飯の用意できるまであっちでお話しましょ。」
「レード[リル姉さんが暴走しないように]頼む。」
「ん、解った[話もりあげとくね]」
違う!そっちじゃない!
…
…俺の黒歴史なんてなかった…はず…だ。
「君がニャルムさんかい?」
「はいですニャ。」
「シルド達の世話。大変だろう。」
「とんでもないですニャ。確かにシルドさんたちの仕事量は半端ニャいですし関連書類も多いですけど、私はやりがいを感じてるニャー。それに…街のみんなから好かれているお二人の専属担当になれて幸せですニャ。」
ニャルムさんにそこまで言われると俺でも照れる…よし!気合入れて作るぞ!
「いやあ、シルドさん。気合いれたねぇ」
「一応、最終日ですからね。」
テーブルには、ポークとアソの合挽ハンバーグにアノロヒラメエビと小クラーケンの炒め物、レイシとアレのサラダと湯通し菜っ葉、などなど、色とりどりだ。
「こっちに合流して正解だったな。」
「そうよ。私の思い付きに感謝しなさい。」
「いやこの場合、これを用意したシルド君にだろ。」
「それより、温かいうちにいただこうか」
「「「聖クッタベルタ様、今日の糧を与えていただきありがとうございます」」」
クライフさん一家は普通の聖句なのに対して、俺たちは
「「「「「いただきます。」」」」ニャ」
だ。最近ニャルムさんも『いただきます派』に変わりつつある。
後片付けの段になり、俺は早々に寝るように言われた。
見張り番はリル姉さんケル兄さんもしてくれるということで助かるのだが…俺だけ早朝番なのは変わらなかった。
朝食も頑張らせていただきます、ハイ。
とりあえずおやすみなさい。
あっレード。アレ入り馬クッキーあげるの忘れないでね。
「お前ら、少しは話をしろよ」
「我々は軍馬なので」「余計な話はしない。」
「面白くねー奴らだな。」
「ニーチャ、ほっとこうよ。」
「サンダたち。アレ入り馬クッキーだよ」
「「「「アネさん!ご馳になりやす!」」」」
「…それは」「何でありますか?」
「馬クッキー。あなたたちの分もあるよ。」
「なんで我々と」「会話が?…」
「そんな事より、食べないの?」
「いただくで」「あります」
<バリボリ><バリボリ>
「「!!!!!!!!」」
…
…
「これはもっと」「いただけるでありますか?」
「これからの働き次第ね。」




