5話 猫猫警報機生活
クライフさんが宿場町に泊まらないのは、単に足元を見られないため…だけではなかったのだ。
「シルド~。魔導線かしてくれるぅ?」
「いいけど何に使うんだ?」
「ないしょ♡」
宿場町カノンも過ぎ、2泊目の夜だった。
「レードさん、シルドさん起きてくださいニャ!」
ん?魔物か?
「ニャルムちゃんセンサーに反応があったニャ」
今夜はニャルムさんが深夜番担当だった。
『なんだ、ニャルムちゃんセンサーか』と再び寝落ちしかけたところで、頭の中で警鐘が鳴った!
『ニャルムちゃんセンサー』はただの中二病発言ではなく、はっきりとした野生の感なのだ。
俺は魔力が見えるし、レードも魔力感知には優れている。が、人の悪意までは見抜けない。
レードも俺もテント内で得物だけを装備し
「ニャルムさん何を感じた?」
「同じ塚にいる3人組の冒険者。」
俺はとっさにアクティブマナーを放った。
確かに変だよな。3人ともテント内で装備を付けている。
「ニャルムさんはそのまま火の番を。あいつらがテントから出たら俺が後ろから、レードは前から挟撃する。」
「了解ニャー」
ニャルムさんが火の番に戻ったところで。
「俺は先に背後を取る。レードは皆を頼む」
「了解」
「で、なんで魔導線手に持ってるの?」
「ないしょ♡」
「…行ってくる。『転移扉』」
俺は、連中のテントの後ろ側へ音もなく現れた。
「おい、準備はいいか。」
「今は猫獣人の女の子のみ。服装から戦闘職じゃないと見た」
「まずはあいつらを襲って無力化。その後、荷馬車を奪って逃走、だったな。」
「そうだ。じゃあ行くぞ、3、、2、1、ゴー」
飛び出してきたな。後ろから呼びかけて驚かしてやろう。
「お…」
「「「「ヒヒーーーーーーン!」」」」<どどどどどどど!>
「わー!」
「なんだ?」
「何で馬がこっち走ってくるんだよーーー!!!」
3人とも馬の気迫でおびえてるな。
とりあえず馬に聞いてみよう
[アネさんがこいら出てきたら脅かしてやれって]
[こいつらわるいやつなんでしょう。けっていい?]
[もう相棒につれー思いさせねーぜ。]
[あいぼうぅー]
最後の2頭は青春ドラマやりそうだな。
「『馬けしかけ作戦』成功だね。」
「レード。そんな策があるなら先に教えておいてくれ。」
「こんなにうまくはまるとは思わなかったから。」
なるほど、魔導線を馬のどこかに結びつけて指示してたんだな。
「やっぱり来ましたか。」
「クライフさん。やっぱりって」
「今回の積み荷はアクドーイ侯爵にとって非常に都合の悪いものらしくたびたび積み荷強奪されかけているんですよ。
ただ宿屋だと積み荷から離れざるを得ないので、積み荷と一緒に寝れる馬車塚となっている次第です。もちろんぼったくり対策でもありますけどね。」
「とりあえず連中を気絶させて縛っておきましょう。」
と気が付いたらすでにレードがやっていた。シスター並みの手際の良さだ。
周りにはほかに人もいないし
「クライフさん、ぶっちゃけません?その積み荷が何か?それをどこへ運ぶのか?を」
本来なら護衛対象にそれを聞くのはタブーだが、それを知る知らないで難易度は変わる。守るなら秘密を共有しないと。
とその前に
「俺の秘密はこれです。実はこの盾は神器で俺の意思で出したり仕舞ったり<盾が消える>できます。」<再び盾を出す>
「おーこれ、神器だったのか。」
「後レードの剣もそうです。」
…
「君たちが秘密を打ち明けたなら、私も秘密を打ち明けなければね。積み荷はロレンス伯爵家の家宝だよ。」
家宝を狙うのは解るが、それをわざわざ侯爵がする事か?
「そして私の本当の名は、クライフェルト=ロレンス。ロレンス伯爵家の長男だ」
…
「…えーと…俺…言葉改めたほうがいいですか?」
「いや、こっちは10年も行商人としてやっているんだ。いまさら貴族に戻るつもりはないよ。」
ふー。
「貴族が嫌だったわけではないが、民衆と関わっていきたかった思いがあった。そんな時に賜った職が『行商人』だった。俺は『家は弟に継がしてくれ』と書置きを残し家を出た。それから何年かしてクライフ領内を回るいっぱしの行商人となった。」
苦労したんだろうな。
「妻も娶り、娘もでき、順調に商いをしている中、領に来ていた弟に会ったんだ。」
偶然。というわけでもないか。領内で活動していれば領主家族と会うことも有るだろう。
「そこで初めて知ったのです。次期領主の座が、いまだに空席になっていることを。」
===
「兄さん。戻ってください。父はずっとあなたの帰りを待っているんですよ。」
「しかし今更、どの面下げて会えというのだ。」
「でも、父はずっと待っているんです。死ぬまで待たせる気ですか」
「いやでもな…」
「あれは奥様と娘さんでしょ。一度、父に見せてあげてください。兄さんの家族を。そして兄さんの一人前になった姿を。そうすれば父も跡継ぎの件はあきらめるでしょうし……それに孫がいるって知ったら大喜びしますよ。」
「お前はどうなんだ」
「暇を見つけては兄さんを探している僕が結婚できるわけないでしょう。」
「私のせいだというのか?」
「じゃあこうしましょう
ロレンス領主代行アラブール=ロレンスが行商人クライフ=ローレンにロレンス家家宝をロレンス家王都邸までの運搬を依頼する。よろしいかな?」
「くっ!痛いところを……仕方ない。
行商人クライフ=ローレンはロレンス家家宝のロレンス家王都邸への運搬、承りました。
これでいいか。」
「領邸執事には伝えておくから、準備が出来たら取りに行って。僕は一足先に王都で待ってるから。」
「わかった。」
===
「いい弟さんですね。」
「ああ。私にはできた弟だよ。」
キンド、故郷で元気にしてるだろうか?
「しかしそれのどこにアクドーイ侯爵が絡んでくるのですか?」
「家宝運搬途中で聞いた話では父が危篤になったらしい。貴族の事なのではっきりわからないのだがそのことで次期領主の件を巡って、アクドーイが騒ぎ立てているらしい。ロレンス家とは親戚筋なんで無下にできない、と弟が手紙で教えてくれたよ」
子供の時にやった暗号遊びが役に立ったとのことだ。
「多分…弟が運搬依頼した家宝を紛失すれば、それを管理責任や領主としての能力を追及する材料とするつもりじゃないかな。そのうえで家宝は自分が取り戻したことにして、自分の息のかかった者を伯爵家へ…」
「…なんか…浅はか?…」
「私もそう思うよ。タイミングよく家宝運搬の話を知ったんで家督相続に必要なものだと勘違いしたんじゃないかな。まあ、悪人の考える事なんて碌なことないのは事実だ。」
「そうなりますと王都までは、野盗や冒険者に気をつけつつ随時撃退ということになりますか。」
「護衛を請け負ってくれた君たちには、厄介ごとに巻き込んでしまってすまないと思っている。」
「何を言ってるんですか。俺たちはそれを覚悟で護衛を請け負ったんです。」
「シルド。あいつら面白いもの持っていたよ。ほら。」
『強奪依頼書……アクドーイ侯爵㊞』
…もしかしてこの貴族、頭悪いのかな。
こんな書類で依頼してたら失敗した時に足がつく事に気が付かない?
もしかして野盗も自己防衛のためではなく、単純に依頼書で依頼されたから書類が残ってた?
もしかして黒幕がいて、俺たちにミスリード…
「シルド。複雑に考えないで。私たちはクライフさんたちを王都に送り届ければいいだけ。私とシルドがいれば無敵。」
「私もいるニャー。」
…
「そうだな。…3人で無事、クライフさんたちを送り届けよう。」
「うん。」「ほいニャー。」
「ありがとう、本当にありがとう。」
「まだですよ。お礼は王都に着いて…いえ、ロレンス邸に到着してからです。」
「シルド。馬たちのご褒美に何がいいかな。」
「馬なら人参…魔人参かな?」
「じゃあそれ、馬さんたちにあげて。」
「レ、レードが馬にやさしい!」
「てぃ!」
レードに叩かれた。
「このまま一旦寝るのも中途半端だな。レードとニャルムさんは寝てくれ。後は俺が番をするよ。」
「じゃあ朝食は思い切りおいしいにおいのするもの作ってよ。」と襲撃3人組を見る。
「あいつらにもあげるのか?」
「うううん、あげない♡」
レードもえぐい事考えるなぁ。




