12話 二人組冒険者の馬車塚朝生活
「おはよう。」
「オウ。おはよう。」
「朝っぱらから甘めえ匂いがしてるじゃねーか。」
「あそこの一団の竈から流れてきてるんだよ。おかげで腹の虫がグーグーなりやがる。」
「ほんと、食いたくなる匂いだな」
「塚では不干渉がルールだが文句の一つも言いたくなるよ。」
「と、その一団から青ジャケの若いのが走ってくるぞ。」
「匂い洩らしちゃってすいませーん。これさっき焼いたケーキです。お詫びとして受け取ってください。」
「おっ、おう。」
「あちらの一団にも渡してきますね。すいませーん…」
「文句言う前に詫びに来たよ。」
「しかしこの馬車塚でケーキ?」
「俺たち、化かされてないよな?」
「ああ、どう見ても普通の人族だよな」
====隣の一団から
「おいしいケーキをありがとう。君の名は?」
「ドゥーブルで冒険者をしていますシルドと言います。」
「私たちはアライ商会の者だ。毛皮の事で何かあれば私たちの店に来てくれ。」
「その際にはお世話になります。では。」
「君たちに聖アライン様の加護があらんことを。」
====
「どうやら本物らしいな。」
「食ってみようか」
「そうだな」
<<パク…>>「「うめぇ~~~」」
「そうそう、今朝方おかしなものを見たんだ」
「何を見たんだ?」
「さっきの青ジャケの若いのがな、どこからともなく丸太を出したんだ」
「見間違いじゃねーのか。暗がりだろ。見えてなかっただけじゃねーか」
「そうかもしんね。でもな、そいつ、ショートソードで薪を作り出したんだ。」
「ショートソードで作れなくもねーが、刃がガタガタになるんじゃねーか。」
「いや、音もなく丸太を三等分にしてそれから音もなく割っていったんだよ。」
「寝ぼけてたんじゃねーの?」
「『サムライ』って連中は音もなく鉄を切っちまうって噂聞いたことねーか?」
「あれが『サムライ』てか?」
「もしくはあのショートソードが魔剣とか…」
「魔剣持ちならどこかの御曹司か?」
「御曹司が野営なんてするか?」
「でも冒険者にしては言葉遣い、丁寧だったぜ。」
「じゃあ、お忍び旅ってか?」
「ケーキなんてもん、俺たちには無縁のもんだ。それをほいほい渡してくるしよう。」
「あのベテランっぽいのが護衛か?」
「そうなると行商人ぽいのが旅の金庫番?」
「あの馬たちのなつき様。家はどこかの牧場も経営してるとか?」
<パカッパカッパカッ…>
「『ニャルムちゃんセンサー』異常なしニャー。」
「次の休憩が楽しみね。シルド君」
「シルド、後ろの警戒は任せて。」
「お兄ちゃん。れっつごー!」
「あっ、お二方、お騒がせしました。良い旅を。」
「「…ああ…良い旅を。」」
…
…
「なあ」
「なんだ」
「きれいどころいっぱいいたなぁ」
「そうだな」
「やっぱり」
「「どこかの御曹司か?」」




