11話 馬車塚での見張り番生活
「今日の見張り番だが、ニャルム嬢。できますか?」
「えーと、12時までですニャ。だいじょうぶですニャ。」
「シルド君の希望は3時から明け方までなので、私が12時から3時までを担当することにする。」
「私も番できますけど。」
「レード君。馬に乗って走ってきた、ということはそれなりに疲れているものだ。だから今日は休みなさい。」
「ハイ。」
本来、時間割は俺たちの仕事なのに、レードの事を考えドコウさんが差配してくれた。その上難しい中の時間を担当してくれた。
「査定役とはいえ旅の仲間で、これでもベテランを自負している。当然の役回りだよ。」
ベテランの言うことは違うなぁ。そうだ、
「ドコウさん、ニャルムさん。これキャルフィーセット。お湯を注ぐだけでキャルフィーが飲めるから使って。」
コウフィン商会はすごいな。インスタントコーヒーも開発していたなんて。
粉じゃなくて砂糖、ミルクを混ぜん込んだキューブ状のものがセブカ紙で包まれ、瓶に何個か入っている。
「あと、時計です。3時間でベルが鳴るようにセットしてあります。では俺は先に寝かせてもらいます。おやすみなさい。」
ギルド馬車の飼葉ベッドの中身はすでに馬の腹の中。現在は新しい飼葉で作り直され、ホロウさんとミリちゃんが眠っている。
後でニャルムさんも潜り込む予定だ。
男連中はテントで寝袋が基本。ドコウさんも一人用テントに入っていった。
そして俺はレードと共に俺たちのテントで寝るのであった。
「シルド君。3時だよ。交代の時間だ。」
「あ、そんな時間なんですね。今起きます。」
俺はレードを起こさないようそっと寝袋を出る。
「私のできる範囲で警戒していたが魔物が近づく様子はなかった。一緒にここにいる2組も怪しい動きはなかったよ。」
「報告ありがとうございます。ご苦労様です。」
「私は一旦寝るよ」
ドコウさんを信用していないわけではないが一応、『アクティブマナー』で索敵……うん、問題なし。
さて、重曹を使った無発酵パンだがやはり寝かせたほうがふんわりするので先に捏ねておく。
次に薪の使用量は…薪置き場の減り方からして、丸太半分かな?
『収納』から、野盗退治の時に倒した樹(10シャックンカット済み)を取り出しこれをショートソードで1/3にカット。
本来ショートソードで丸太は切れないのだが刃に闇魔力を纏わし『切る』意識を乗せれば石や木は簡単に切れてしまう。
動物などは動物自身の魔力で保護されているためか、ただの刃物となってしまうから討伐には使えないが。
同様に細く割ってゆき…(目測)使用量の倍の薪を、薪置き場へ補充する。
馬車塚の薪は自由に使っていいが。余裕のある人は使った分以上を補充するのがマナーだ。
パンを焼くついでにパウンドケーキも焼いておこう。まぜて焼くだけの簡単なものだ。
まずは竈に火をおこし十分熱しておく。
パン生地を四角い型に入れておき、ケーキ材料を混ぜ、こちらも型に流し込んでおく。
竈自身が200度超えたくらいで薪をかき出し、パン型、パウンド型を並べ、余熱で焼く。
俺は魔視力で温度が解るが、シスター(水属性)は生地の水分から温度判断しているとのことだ。パン職人さんは…きっと門外不出の技があるに違いない。
パンとケーキが焼けるころ、ホロウさんが起きてきた。
「おはようございますホロウさん。」
「おはよう、シルド君。早いのね。」
「見張り番ついでに朝の準備もしてましたから。これから弁当を作るところです。」
「昨日言ってたあれね。見せてもらえるかしら。」
「はい。作りなれているんで四角いパンを用意しましたが柔らかければ丸いパンでも構いません。ふつう数時間たった冷めたパンを使いますので。冷ましますね。『ファイス』」
「あら?『ファイス』って氷魔法じゃなかったの?」
「俺の場合、主に冷やす魔法として使ってます。」
「…そうなの?…」
「次に具材を用意します。今回はアレは細切りにして、葉菜もちぎっておきます。アレはさっと塩ゆでして下さい。……(鍋から少し取って)どうぞ」
<パク>「あら、シャキシャキしておいしい。」
「街の葉菜は生で食べられるものが多いですが、地方の葉菜は火を通した方がいいでしょう。洗った後、こちらもさっと塩ゆでして下さい。」
野菜はざるに上げておき
「ハムは薄切りにして、昨日ミリちゃんが残した魚の半身はほぐして、油、酢、塩で和えます。」
ツナのほぐし身代わりの出来上がり。
「パンを適当な厚さに切ります。丸パンなら上下半分にするか、縦に切れ目を入れて裂け目を作るかですね。…そのあとは片面に乳脂を塗って。野菜とハム、魚を挟み込んで…完成。簡単でしょ。」
「簡単だけど……夕食もそうだったけど…手際がいいわね。」
「シスター仕込み、と世話になってる宿屋の手伝いのおかげでしょう。あっ、今日はケーキも焼いたので途中休憩の時に食べましょう。」
「なんか、甘いにおいしてると思ったらケーキなのね…えっ?ケーキ?」
「まぜて焼くだけの簡単なケーキですよ。あっ屋外ってこと忘れてた。甘い匂い拡散しちゃったな。俺、お詫びにおすそ分けに行ってきます。」




