10話 馬車塚での夕餉生活
たった二人で野盗を制圧するとは。報告書にどう書けばいいか…。
「じゃあ、まず竈作っちゃいましょう。『アースクエイク』からの『リュウキ』『アッシュク』」
「わぁすごい。お兄ちゃん魔法が使えるんだ。」
あれ?…確かシルド君は土属性ではなかったはずだが?
「ミリちゃん。ちゃんと手は洗ったね。じゃあこのボウルの中のものをこねてくれるかい?ホロウさんも」
「いいよ」「はい」<コネコネ、コネコネ>
「薪をくべて、一気に『ヒート』」<ボッ!>
『チャッカ』じゃなくて『ヒート』?
「焚火も用意しておこう『ヒート』」<ボッ!>
「鍋に水を入れてきましたニャ。」
「ありがとうニャルムさん。竈に置いて」
「ハイですニャ!」
「先に魚の下ごしらえを。魚屋さんが鱗と内蔵を取ってくれたんで助かる。切れ目を入れて塩とハーブを刷り込んで。」
手際がいいな。
「野菜の皮むき♪カットして投入♪野菜の皮むき♪カットして投入♪」
「お兄ちゃんちょっとこねるの疲れてきた。」
「もうちょっとかな。そういう時は歌を歌うようにするんだ『コネコネコネコネ♪おいしくな~れ♪』」
「コネコネコネコネ♪おいしくな~れ♪…楽しい!」
「後5回ほど繰り返したらもういいよ。」
子供の扱いもうまいな。
「捏ねた生地はこうやって棒に巻き付けて焚火で焼くんだ。ホロウさんお願いします。」
「はいはい、シルドさん…こんな感じですか。」
「はい、ちょっと焦げ目がついたら回してまんべんなくこんがりとお願いします。さて、竈の空いたスペースに鉄板を置いて」
はて?鉄板積んでいたかな?
「魚を置いて、ここに森で積んだ香草をまぶし、蓋をします」
はて?蓋…(以下略
焼く作業をしながらも同時に鍋の灰汁取りも行い、さらには焚火で焼く作業にも指示を出す。
シルド君。それは厨房でのシェフの動きだよ。
「さてさて、煮えたかどうだか食べてみよ♪…OK。あとはスレイブ塩で味を調えて」
『スレイブ』…塩?…そんな塩、聞いたことないぞ。
「ミリちゃん、パン焼けた?」
「えっこれパンだったの?」
「そうだよ。棒を抜き取れば」
「わー向こうが見える。」
「どんどん抜き取ってね。ホロウさん魚の盛り付けとスープをよそってください。すぐテーブルを出しますから。」
というが早いか、板を組み合わせて台を作りその上に板、シーツをかぶせテーブルが完成。同じ要領でベンチも完成。
はて?板…(以下略
<パカラッパカラッパカラッ>
「ただいまシルド!」
「お早いお帰りで」
「遅い方がよかった?」
「いいや、予想より1時間早かったからどうしたのかなと思ってね。」
「そりゃシルドの晩御飯食べたいからに決まってるでしょ。指名手配犯だって聞いたからアジトの場所教えて丸投げしてきた。」
指名手配犯を丸投げ?
「もちろんギルド証は見せたよ。帰りに寄るとも言っておいた。」
「それならまあいっか。手を洗って…の前にハイ、馬クッキー。ガイ、頑張ったんだからご褒美ちゃんとあげて。」
「ハ~イ」
「レードも帰ってきたことですし、夕食にしましょう。」
本当にシルド君。君はどこを目指してるんだ?
「シルドさん、このスープすごくおいしいんだが、なぜクラーケンの味がするんだい?具は野菜だけだよね。」
「スレイブ塩を使ったからですよ。」
「ちょっとなめさせてもらえるかな?」
「どうぞ。」
<ペロ>「!!! これはどこで売ってるんだい!」
「売り物ではありません。先日スレイブを討伐する際に弱らせるために塩を使ったんですよ。そしたら塩がスレイブのエキスを吸い取ったので回収しておいたものです。」
「う~ん、偶然の産物か。今度、海の方へ行った際、似たものがないか探してみよう」




