10話 新人冒険者のパティシエ生活
今朝は皆の邪魔にならないよう早起きした。
「シルドぉどうしたのこんなあさはやく。」
「レード。まだ眠いだろ。も少し寝てていいよ。」
「ん…おやすみ。」
寝ぼけてるレードも可愛いな。
よしそんなレードのために頑張ろう。
昨日はギルドからの帰り道に少し遠回りした。コウフィン商会に寄るためだ。
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コウフィン商会
「「ごめん下さい。」」
「シルド様にレード様ですね。こちらへどうぞ。」
いきなり応接室へ案内された。
「少々お待ち下さい。」[支店長、シルド様レード様がお越しになられました。]
なぜにVIP待遇?
「ようこそお越しくださいました。今日はどのようなご用件で?」
「その前に…止まり木亭とのお取引。ありがとうございました。」
「いえいえ、当方にも利があること。お礼をいただくには及びません。」
「そういっていただけると助かります。お聞きしたいのですが、こちらでドライフルーツと重曹、あとデ麦粉、乳脂、砂糖、卵を取り扱っていないでしょうか。」
「その材料ですとパウンドケーキを御作りになられるので?」
「はい、そうですが。」
「わかりました。材料はすべてこちらでご用意できます。必要なだけおっしゃって下さい。それにお代はいただきません。」
「いえ、そこまでしていただかなくても…」
「そうおっしゃられるのでしたらその焼けたパウンドケーキを一つ、当店に納入していただくのはいかがでしょう。」
「それですとそちらがかなりの損になりませんか?」
「いいえ、あなた様のパウンドケーキの味は、昔、グロップ様にいただいた思い出の味にございます。それこそいくら富を積もうとも替えられるものではございません」
神父様とシスターに恩義を感じてるんだな。これ以上粘るのも悪いな。
「わかりました。焼けましたらこちらにお持ちいたします。」
「ありがとうございます。ではこちらに必要量をお書きください。後ほど止まり木亭に配達いたします。」
[注文書]
<かきかき…かきかき>
「これでお願いします。後もう一つ相談が。」
「何でございましょうか。」
「ギルドに納入したジャケットですが、色違いってすぐ作れますか?」
「私シルドとおそろいがいい。」「レードは黙ってて。」
「なるほど、お二方専用のものをご所望なのですね。」
「いえ、まだギルドには相談していないので発注ではないです。明日ギルドで決まれば発注となりますがすぐにできるかどうか確認だけでもと思いお聞きしたまでの事です。」
「結論を言えば数着なら発注の次の日の納品も可能です。」
「そうですか。わかりました。明日相談してみます。」
「またのご来店お待ちしております。」
「明日はまたシルドのケーキ食べられるんだね」
「今度のはシスターがたまに焼いてくれたドライフルーツ入りだ」
「たのしみぃ。」
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厨房朝
「朝から甘ったるいにおいすると思ったら、また今日はいっぱい焼いたね」
「レードに食べさせようと思ったら調子に乗って焼きすぎちゃったよ。」
「余ってるんなら1本置いてってくんないかい。この前肉屋に無理言ったからねぇ。お詫びに持っていきたいのだけれど。」
「いいよ。じゃあ2本置いとくから1本は皆で食べてよ。じゃ俺はこれから弁当に取り掛かります。」
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ギルド受付にて
「おはようニャルムさん。」「おはようございます。」
「おはようですニャ。シルド様、レード様。」
「これ、御届け物です。いつもの。」
「ありがとうございますニャ。ニャッ!今日はにゃんだか甘い香りが…もしかして…」
「シルド様、レード様。おはようございます。」
「「レニーアさんおはようございます。」」
「お二方にお話があります。ギルマス室へご同行願います。」
俺たちなんかやったっけ?
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ギルマス室にて
「あなたたちねぇ。何ギルドに許可なく発注しちゃってるの」
「「へ?」」
…
「な、なんのことでしょうか?」
「これよ、これ!」
と出されたのは、濃い青色のジャンパー
「わぁ2着ある。これならシルドとおそろいになるね。」
「だまらっしゃい!」
レニーア姉さんが怒るのは解るがここは弁明させてもらおう。
「レニーア姉さん。確かに昨日、コウフィン商会に行って色違いジャケットの相談はしましたが、あくまでも相談だけでしたよ。」
「はい?」
…
…
「レニーア。ちょっといいか。」
「なによ、父さん」
「これを受け取ったのは俺だ。支店長さんが直々に訪ねてこられてな。作業着かジャケットを、等級か貢献度で色分けしてみればどうかと提案を受けたんだ。昨日この二人が相談に来た時にひらめいたんだとよ。そんでもって試作品をこの二人に着せてみては。ってね。確かにただのカード記号より貢献度=ジャケット色なら外見でわかりやすからな。前向きに検討する、と答えた次第だ。」
「えっ、あの…まぁ…ごめんなさい。早とちりしちゃって。」
「それにこいつらの貢献度なら文句あるめぇ。なんたって★10個だからなぁ。がっはは! 検討前のテストパターンだ。二人とも、受け取ってくれ。」
「ありがとうございます。」
「ありがとうございます。これでシルドとおそろいだね。」
俺にはレードの喜んだ顔が何よりご褒美です。
「では、レニーア姉さんを困惑させたお詫びにこちらをお納めください。」
と、取り出したのはパウンドケーキ(ドライフルーツバージョン)を3本。
「そ、そういうことなら『皆』でいただきますわ。」
姉さんもわかってきたなぁ。
「おっ、それがシルドのケーキか。辛党の俺でも欲しくなる味だぞ。」
「いえ、シスターには負けますけど。あっ火酒をしみこませたケーキも作れますよ。」
「そんなケーキもあるのか?」
「神父様が好きでして。作る機会があればお持ちしますね。」
「オゥ、楽しみに…て受け取れねえなぁ。ギルマスが賄賂など…」
「みなで食べればいいじゃないですか酒好き職員で。」
「…うん、そうだな。みんなで食べれば怖くない。」
いえ、怖いです。当たり前にならないよう注意しよう。
「そうそう、シルド君たちに受けてもらいたい依頼があるのよ。」
「なんですか?」
「ネズミの駆除よ」
「レード様はシルド様とおそろいを希望されています。しかし発注を待っていたらレード様の悲しみが増えてしまいます。
…そうですね。ギルドへの貢献度による色分けを提案してみましょう。その試作品としてシルド様レード様へ提供すればこれは営業の一環として面目が立ちます。
主任。今のギルド納入ジャケットの色は何色でしたか」
「カーキ色です。」
「それでしたらそうですねぇ。濃い青色としましょう。作業着なので目立つのはいけませんが、この色なら一目でお二方だとわかるでしょう。皆さんには残業させてしまいますがお給金は弾みますので頑張ってください。」
「任せてください支店長」「大恩あるグロップ家のため」「…「頑張ります。」…」




