6話 止まり木亭の女将困惑生活
「女将さん。冒険者ギルドから肉が届きました。」
「おかしいねぇ人手が欲しいと依頼は出したんだが、肉は頼んだ覚えがないんだけどねえ。」
「あっメモがあります。シルド君とレード君からで『自由に使ってくれ』と。」
あの子ら何をやっているんだか、こんなもの安価で夕食に出しちまったら次からの献立が狂っちまうよ。
まああの子らのことだ、たまたま手に入った肉を私らに役立ててもらおうって気なんだろうけど。
「この肉は3分の1は冷蔵庫に入れときな。残りは肉屋に引き取るようにお使いに行っとくれ」
本日限定のスペシャル定食の献立をシルド坊に考えさせようかねぇ
別料金で特別感ださしときゃ通常献立に影響はないからねぇ。
残った肉は賄い行きさ。働いてる子らにも『うまい肉』がどんなものか勉強をするいい機会さね。
「女将さん。コウフィン商会から支店長が訪ねてこられました。」
あんだって?!なぜにそんな大手が?
「とりあえず事務部屋にお通しして。あと一等いいお茶とシルド坊の焼いてくれたケーキ。あれを出しとくれ。」
「失礼します。私この宿屋を切り盛りしていますテナーと申します。」
「これはご丁寧に。私、コウフィン商会ドゥーブル支店支店長を務めます ヤトワール=テンシュ と申します。」
「失礼いたします。お茶をどうぞ。」
「ありがとうございます。本題に入る前に一口…いいお茶ですな。それにこのケーキ<ハム>……ムムムム。このケーキは!」
「テンシュ様いかが…」
「テナー殿。このケーキはこの宿で出されているものですか?」
「い、いえ。うちに泊まっている冒険者が焼いたものですがなにか」
「もしやもしや、レード様かシルド様が焼かれたケーキでは。」
「はい、シルドb…君が今朝焼いていたケーキですが。」
「オー。『グロップ家のパウンドケーキ』が食べられるなんてなんという幸運。幼き頃食べたケーキがまた食べられるなんて…これだけでもこちらに出向いた価値がありました…」
…
(興奮が冷めるまでしばらくお待ちください)
…
「昔食べたケーキが再び食べれたことで興奮してしまいました。申し訳ない。」
「いいえ、お気ないなさらずに。で、どのようなご用件でこの宿に?」
「今日当店にシルド様が来られて、ブガ紙と弁当箱、香辛料やハーブの話をするようおっしゃられたので参った次第です。何でも弁当なるものの販売を開始したそうで。それでしたらブガ紙が定期的に必要ではないでしょうか。」
「はい、今はシルド 君から購入していますがそれほど在庫を持っているとは考えられませんでしたので仕入れをどうしようかと考えていたところですの。」
「そうでしたか、ブガ紙の価格はこのサイズですとこの価格となります。」
「あら、それでしたらシルド君から購入する価格と大して変わりませんよね。利益は出ますの?」
「それはご心配なく。こちらの商品はこうして透かしてみますと…このように当商会のロゴが浮き出る形となっております。これで商会の宣伝にもなりますし、この商品の品質保証にもなっております。」
「よく考えられていますのね。」
「また、こちらよりしなやかなセブガ紙も用意しております、ハーブに香辛料、弁当箱に水筒もご用意できます。」
「わかりました。まずはブガ紙を100枚お願いします。後は必要になった際、相談させてくださいません?」
「承知しました。」
「…テンシュ様。つかぬことをお聞きしますが、もしかしてシルド君とレード君は、商会の御曹司でらっしゃるのではございませんか?」
「…それは違いますが…[それに類するものとお考え下さい。]」
「[なんと…]…そうですか。」
「いや、いい取引が出来ました。今後ともよろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いいたしますわ。」
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丁寧言葉は疲れるよ。
ただのおばちゃんがマダム言葉を使うなんてね。うちの子らが聞いたら笑われちまうよ。
しかし、あの二人がねぇ。
まあ急にへりくだった態度にしたらレード坊は泣きそうな顔するだろうし(見たくないねえ、そんな顔)シルド坊は困った顔するだろうし(こっちは少し見てみたい)。
どっちにしろ私にとっては『坊』は『坊』だよ。




