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『盾』役者の生活  作者: 愉魅夢
冒険者としての活躍
45/60

5話 新人冒険者のどぶさらい生活

「シルド様、レード様。これより今回の依頼についてご説明いたします。」

「それよりもレニーアさん。口元にソースが。」

「あっ」顔を隠して<ふきふき>


あのソースはサンドイッチの…


「レード様、なにか?」

「い、いえ…なんでもないです。」


うん、俺も見なかった。見てません。


「作業場所はこちらの幅深さともに10シャックン(1.8m)長さ600シャックン(108m)の東区用水路となります。」


レニーア姉さんが地図(一般街なので秘匿事項なし)で示してくれる。


「やってもらいたいのはこの上流側300シャックン(58m)。ここは2シャックン(36センチ)ほどヘドロがたまっていてそれを大水路へ捨ててほしいのよ」

「『水路』ということは、水が通ってるはずですよね。押し流せないんですか。」


レードの疑問ももっともだ。地図ではこの水路は 大きい水路同士をつなぐ形になっている。


「この水路自身、高低差があまりない上に今は水かさが減ってヘドロがむき出しになっている状態なの。」


なるほど、用水路あるある。だな


「う~ん。300シャックンなら結構な日数かかりそうですけど。」

「そこは大丈夫よ。それも想定して期限は切ってあるし間に合わなければ『ギルドからの強制依頼』として冒険者を総動員させるから。まずは『ギルドは依頼放置してません』という意思を見せておきたいのよ。」


そうか、俺たちの働きにはあまり期待はしていないのか。


「今日のところは、どれだけの仕事をしたかこの報告書に書いて持ってきてくれる?」

「わかりました。シルドは何か聞きたいことある?」

「とりあえず現場を見てからだな。」

「じゃあ,行こ。」

「ちょっと待って。かなりの汚れ仕事になるから、途中コウフィン商会で作業着買ってきなさい。後スコップとネコ車もね。この札とギルド証を店に見せたらギルドへのツケ買いにできるから持って行って。」


と渡されたのはギルドの紋章入りの木札。


「まずは、コウフィン商会だな」

「うん。レニーア姉さん、行ってきます。」

「行ってらっしゃい。」





ちょうど冒険者ギルドと今回の現場の真ん中らへんに『コウフィン商会ドゥーブル支店』がある。


大きいなぁ。

見た目ホームセンターっぽいけど、百貨店くらいの高級店なんだろうな。


「いらっしゃいませ。何かご入用ですか。」


おー!冒険者にもこの対応。教育が行き届いているな。


「ギルドからの依頼で作業着とスコップ、ネコ車が必要となりまして、こちらで購入するように言付かってきました。これギルドから渡された札と私と彼のギルド証です。」

「はい、拝見いたします。…確かに冒険者ギルドの札ですね。そしてギルド証は…レード=グロップ様、シルド=グロップ様ですne…しょっ、少々お待ちください!」


なんだろう。俺たちコウフィン商会は初めて利用するからブラックなんちゃらには載ってないはずだが。


なんか上役そうな人が出てきたぞ。


「当店のご利用ありがとうございます。私、コウフィン商会ドゥーブル支店支店長を務めます ヤトワール=テンシュ と申します。」


ん?雇われ店主?


「あなた方はグロップ神父様の縁者であらせられますか?」

「はいグロップ神父は私たちの養父ですが。」

「そうでしたか。グロップ神父様はわがコウフィン商会のオー…恩人であらせられます。その恩人の御子であれば当店の商品をご自由にお持ち帰りください。もちろんお題はいただきません。」


こんな好待遇。神父様(オヤジ)はこの商会に何したんだ?


「そうは参りません。今回はギルドの依頼で立ち寄ったので、料金はギルドにご請求ください。」

「なんと。さすがはグロップ神父様の御子でらっしゃる。オーサン様もそうでしたがグロップ神父様は立派にお子達を育ててらっしゃいますね。」

「兄さまもこの店に立ち寄ったのですか。」

「はい、贔屓にしていただいています。」

「そうですか。今日は作業着と道具が必要なのですがどちらにありますか?」

「それでしたら担当のものに案内させます。ウェス君、グロップ様方を作業着コーナーへご案内して。」

「かしこまりました。」

「レード。」

「なあにシルド。」

「俺は支店長さんに話があるから、必要なものをレードの方で見繕っといてくれ。」

「わかったよ。」



「支店長さん」

「なんでしょうか、シルド様」

「こちらで香辛料やハーブ。ブガ紙かセブカ紙。後、弁当箱は取り扱ってますか。」

「はい、ございます。いくつかご入用で。」

「いえ、南区にある宿屋『止まり木亭』に大変世話になってまして、そちらとの取引を考えてもらえないかと。もちろん儲け度外視とは言いません。ただ少し色を付けてもらえないかと。」

「わかりました。グロップ様の恩人は私共にとっても恩人。精一杯勉強させてもらいます。」

「よろしくお願いします。」


レードがネコ車押して戻ってきた


「シルド。お話終わった?」

「今終わった。そっちは…そろったようだな。支店長、試着室借りれますか。」

「はい、こちらへどうぞ」

「レード。ここで着替えさせてもらって現場へ向かおう」


結果


「わー、シルドとおそろいだ!」

「とてもよくお似合いで。」


いや作業着姿を褒められてもなぁ……うん、確かにレードは似合ってる。


「支店長、お世話になりました。」


レードはご機嫌だな。まあ俺もうれしいが。


「今後とも御贔屓に。」

「また来ます。」「また来る。」



現場にもうすぐ到ちゃ…「臭!」


「シルド、これ!」


レードがマスクを渡してくれ、それをとっさに付けた。


「準備がいいな。」

「必要と思って買っておいたんだ。レニーア姉さんになんか言われないよねぇ。」

「必要経費だ。それにおかげで助かった。」

「どぶさらいの前にこの匂いを何とかしないと。」


『収納』は液体、気体の直接取り込み不可。俺の魔力では流体を直接包み込めないのだ。これは『転移(DOKODEMO)(DOOR)』も同様だ。

それならば直接でなければいい。


「よし!空に捨てるぞ!」

「え、でも私の風魔法じゃ上まで運べないよ。」

「レードだけでは無理だな。でも俺がいる。」


「…うん!で、私どうすればいい?」

「できる範囲でいいからフールドで匂いを集めてくれ。」

「わかった。『フールド』」


レードは半径100シャックン(18m)の半球内の匂いを1シャックンのボール状に集めてくれた。


「できたか。じゃあレードの『フールド』を俺の魔力で包み込んで…『転移(DOKODEMO)(DOOR)』 出口は5テリシャックン(900m)上空。レード、12の3で行くよ。1,2の、3!」


レードは俺の意図を組んで『フールド』を『転移(DOKODEMO)(DOOR)』へ運んでくれた。

転移先の状態は解らないがおそらく『フールド』が解除され、匂いが拡散したことだろう。


「レードの魔力は俺の魔力と相性がいいな。混ざることなくしっかり包み込める。俺とお前の仲みたいじゃないか」


さすがに移動させるには息も合わせる必要がある……いや必要ないな、俺とレードなら。


「…うん!シルドは私のの最高の相棒だよ。」

「よし、この調子で端まで行ってみよう。」

「うん!」


計6回の作業で、充満してる匂いは無くなった。

全体を通してみてみたが下流側もある程度ヘドロがたまっている状態だ。

ちなみに大水路はゆっくりではあるが川のように流れているので水かさがないだけで水量は十分ある。

また、今は開いているが大水路とこの水路の間に水門もある


「シルド。ヘドロは少しづつ運ぶの?」

「いや、見た感じ十分な水量があれば押し流せそうなんだ。」

「でも水かさがないよ。」

「水かさがなければ増やせばいいんだよ。」


ちょうど水門付近は10シャックンほどはヘドロはたまっていない空間がある。

そこに降りて


「結界縮小版『分割デバイディング抉開器ドライバー』」


水路の端っこに大穴を開けた。

外からの見た目、直径10シャックン深さ1シャックンのくぼみだが実際は半径100シャックン、深さ5シャックンの大穴だ。

結界の高さは水路と同じにしているのでどんどん水が流れ込んでくる。


このまま中にいると服が濡れてしまうのでとりあえず外に出た。


「なるほど、たまった水で押し流すんだね。」

「そうだけど、ヘドロの堅いところもありそうだから水が溜まるまでの間でヘドロをほぐしておこう。俺はカミから行くからレードはシモからお願い」

「オッケー。」




さて、ヘドロをほぐすのにスコップじゃあ時間がかるな。ここはひとつ


『アースクェイク』


黒魔力で空間を振動させ土をほぐす魔法だ。これを泥のような水分の多いものに使うと液状化する。

レードも黄魔力と青魔力で同様の魔法を使ってるのが解る。


30分ほどでレードと合流。さて水は?


「十分溜まってるね。」

「よし、水門閉じてっと。レードはヘドロが流れにくそうなところがないかチェックして。魔法解除行くよ」

「オッケー」

「『分割デバイディング解除キャンセル』」」


<ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ><ドッシャー>


水路があふれんばかりの豪流だ。

ちょっと…多すぎたかな?

まあ少なくって流れないよりはいいか。


後はレードの報告待ちだ。


「シルドー全部流れたよー」

「とりあえず依頼達成。かな?」


綺麗になったもんだ。


「でも報告書どう書くの」

「素直に書くしかないだろ。

1.匂いを消臭魔法で消しました。(魔法で消したので嘘ではない)

2.ヘドロが流れやすいようにほぐしました。(魔法を使ったがほぐしたのは事実)

3.大量の水で押し流しました。(魔法を使ったが押し流したのは事実)

と」


「でどうしようか。作業着」

「いくら匂いを飛ばしたからって<マスクを取る>くさっ!、このままギルドまで戻ってシャワー借りよう。」


「二人とも、どこまで進みました。」


レニーアさんが来た。ここは美形のレード君に報告させよう。


「えっ全部終わりましたけど。」

「えっ?300シャックン全部?」

「いえ、水路全部」

「えーーーーーーーー!」


「300シャックン区間だけだとシモが残ってまた更にそこからヘドロが堆積すると思い、思い切って全部やりました。ダメだったですか?」

「……いえ、問題はないわよ。問題は。どのような作業をしたのです。報告書を見せなさい!」

「本当に二人だけでやったの?」

「「はい」」

「…わかりました。依頼達成手続きは私がしておきますから、二人はギルドに戻ってシャワー浴びなさい。ご苦労様でした。」

「「確認も来ていただきありがとうございました。」」


[『ふざけるな』と言いたいとこなんだけど二人とも悪くはないんだよねぇ。やってることが規格外なだけだし。]


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