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『盾』役者の生活  作者: 愉魅夢
冒険者としての活躍
42/60

2話 新人冒険者の止まり木亭生活

とりあえず人通りの少ない小道のわきに座って


「やられた。兄から聞いていたがこれが新人いじめか。」

「どういうこと?」

「新人への自称『ベテラン』さんからの『洗礼』だよ。」

「『洗礼』って」

「さしずめオーサ兄を気に入らない連中だろう。レニーア姉さんの話とオーサ兄の手紙からレードはどう考えた?」

「かなり親しい?」

「まあそこは後で兄に問い詰めるとして、受付を専属担当しているんだ多少なりとも親しくなるだろう。」

「そうだね。」

「ギルマスの娘で器量良し。そんな娘と親しくしてる男がいたら、面白くない連中もいるだろう。」

「でもなんで私たちまで?」

「そりゃ『憎いオーサンの弟達が(俺の)レニーアちゃんに直接対応してもらってるなんて羨まけしからん!』なんてね」

「ぷっ!なにそれ?」

「まあ、今日の件は明日、レニーア姉さんに話をするとして、問題は今夜の宿だ。場合によっては教会に泊めてもらうっていう手もある」

「そうなると神父様(父さん)にばれるよね。シスター(母さん)に心配かけちゃうよ。」

「最悪、野宿かな。野営地ごとに魔力マーカーつけといたからどこにでも転移できるけど…」


「あんたらここで何してるんだい?」


一人のおばちゃんに声をかけられた。


「あんたら新人冒険者かい?宿はどうしたんだい?先輩たちに予約取っておくように言われなかったのかい?」

「いえ、予約は取ってあったんですけど…」

「手違いでキャンセルされてしまって…」


[はは~ん、『ベテラン』さんからの『洗礼』受けちまったんだね]


「わかった。二人ともうちに来な。私の名前はテナーって言ってね、この先の『止まり木亭』っていう宿屋をやってるんだよ。」

「えっ、でもどこも満室って…」

「屋根裏部屋だよ。しかも宿代タダ!」


そんなうまい話…


「ただし、」


やっぱり条件がある?


「手伝ってくれないかい、手が足らなくって困ってたんだよ。」


そういうことなら、


「「よろしくお願いします!」」




ちょうど宿の手伝いを冒険者ギルドに頼みに行った帰りだそうだ。



着いて早々、屋根裏部屋?…

意外ときれい。埃積もってない!

とりあえず装備を外し着替えを持って中庭へ

井戸水は冷たいので『ヒート』で温めて体をふく。

男同士だがレードは肌を見られるのを極端に嫌う。

レードの嫌がることは基本しない。それが俺ルール。

もしかしたら胸に7つの傷があるのかもしれない。いつか打ち明けてくれると嬉しい。


で、俺は厨房での皿洗い。レードはウェイター。


皿洗いはシスター(母さん)からしっかり仕込まれたし、落ちにくい汚れは『ヒート』で温めながら落としている。

レードのあの足運びは…剣舞だな。

体幹はしっかりしているから料理はこぼさないし、皿は落とさない。


「あんたら一人で二人分働いてるね。いやぁ助かる助かる。いい拾い物したよ。」


俺たちは『もの』ではありません『もの』です。


賄の味は…ちょっと微妙だった。





早朝、厨房を借りてお弁当を作っているとテナーさんが


「シルド坊、何作ってるんだい。」


一応使う食材などは断わりを入れていたんだが。

(もちろん材料費も払いました)


「僕たちのお弁当のサンドイッチですが。」

「そのレシピ、売ってくれないかい。」


このレシピもコウフィン公爵が広めていたはずなんだけど…


『弁当』という文化も今は廃れ、昼食は『丸パンを持っていくだけ』となってしまっている。

確かに家と職場が近ければ弁当なんぞ持つ必要がないし、冒険者自身、戦闘職がほとんどで、自分で料理する気がない者が多い。

結局『昼は丸パンのみ』となったんではないかな?


「おばちゃんどうしたの?」

「客に『昼が丸パンのみじゃ味気ない』っていうのがいてね。今、お前さんが作ってるの、手軽でおいしそうじゃないかい。」


主に大量消費の宿屋向けだが一応、食パンというものは売っている。


「しかし、それじゃ昼にはパンがパサついちまわないかい。」


食パンは切って食べるため、保存には向かないのだ。


「そこは、このブカ紙(柿渋紙)で包んでおくと昼までは持つよ。でこの竹籠(弁当箱)に入れて…完成!」

「そのブカ紙っていうのと竹籠はいくつかあるのかい。できれば売ってくれないかい。」


ブカ紙も竹籠も農閑期の大事な村の収入源だ。

もちろん村の物なのでちょろまかしてはいない。

材料を分けてもらい自分用に作ったものだ。


「いいよ。あっ水筒もいる?」


こちらも村から竹筒を分けてもらい…(以下略)


「そんなものまで用意してるのかい?」


背嚢から取り出すふりをして『収納』から5セット取り出した。


「おばちゃん、料金は後でいいから、5つほど俺が作ろうか?」

「じゃあ、お願いしようかねぇ。」


2セットも5セットもあんまり手間は変わらない。

水筒にお茶入れだけは時間がかかるが。

手早く作ると、


「はい、おばちゃん5セット。料金はおばちゃんが決めて。作っても売れなきゃ意味がないからね。レード洗い物終わったか?」

「終わったよ。」


「じゃあおばちゃん。行ってきます。」「行ってきます。」


俺たちは『いっけな~い』という女子高生のごとく、食パン加えてギルドへ駆け出すのであった。



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