1話 新人冒険者の登録生活
馬車に揺られて2週間。
その間、立ち寄った村で洗礼や成人の儀の手伝い
経路にて魔獣や盗賊の撃退等
ちゃんと仕事をしましたよ。
「グロップ神父のところで冒険者志望の成人がいるときは、護衛費用が浮いて助かります。」
とのこと。
そこいらの冒険者たちより腕が立つということだ。
ただ、オーサ兄曰く
「腕が立つだけじゃあ冒険者にはなれねぇ」
とのことだ。
そうそう、オーサ兄はS級になりました。
州都に着いたらギルドで冒険者登録後は、オーサ兄のクエストの手伝いをしながら冒険者としてのノウハウをオーサ兄から教えてもらう約束をしていたのだが…
「「えっ!オーサ兄がいない?」」
「はい。オーサン様は急遽国からの依頼にて旅立たれました。なお行先については国秘となっておりますのでお教えできません。」
ギルド窓口で、いきなり梯子を外された。
「確認いたしますがあなた方はシルド=グロップ様、レード=グロップ様でお間違いないですか」
「はい」「そうです」
と教会発行の身元保証書を受付のお姉さんに見せた。
「…確認いたしました。あなた方の手続き等は私が責任を持って処理するようオーサン様より言付かっております。申し遅れました。私、オーサン=グロップ様を担当していますレニーア=ジラールと申します。」
「改めまして。シルド=グロップといいます。」
「レード=グロップといいます。兄がいつもお世話になっております。」
「クスッ<微笑>…オーサン様が言っておられたように礼儀正しい子たちのようね。」
「えっ?兄貴が何か…」
「さて、まず冒険者登録を終わらせましょうか。少々お待ちください。あっニャルムちゃん、こっちの窓口をお願い。」「はいですニャ。」
窓口担当は猫獣人?に変わった。新人っぽいな。
「登録は君が担当してくれるの?」
ぴこぴこ動く耳が可愛いな、と見ていたらレードにつつかれた。見るぐらいいいだろ、見るぐらい。
「私はまだ見習いなので…お二方の手続きはレニーア先輩がニャされます。」
「そうか。あっ俺はシルドという。それでこっちは相棒のレードだ」
「レードです。よろしく。」
「ニャルムと言いますにゃ。よろしくお願いしますにゃ。シルド様、レード様。」
「こちらに来てください。」
レニーアさんは窓口カウンターを出てきた。
「じゃ!」
「ニャ!」
こちらが手をあげれば手をあげて答えてくれた。
仲よくなれそうな娘だな。
で通されたのはパーテーションで区切られた一角。
事務所の応接スペースみたいなところだ。
「冒険者の心得、規則については説明が要りますか?」
「いえ、兄に送ってもらった説明書きを読みました。」「大丈夫です。」
「君が手に持ってるそれね。それ、私が書いたのよ。」
どおりで、兄の字にしては綺麗でとても読みやすい文体だと思った。
「教会発行の身元保証書がある場合ならこちら用紙に必要事項を書いて下さい。」
その用紙は名前、所属欄、職欄のない、特技等だけを書く形式となっている。
…
…
「書けましたか。ではこれより冒険者証発行手続きに入ります。まずはシルド様」
用意されたのはエピスコープ状の魔道具?
横のボックスにカードを挿入した後はテーブル上の線に沿って書類を置いてゆく。
もしかして転写機?
ちょうど身元保証書の名前、所属・職欄 と今書いた書類で 1枚の書類になるようになっている。
「では、この水晶玉に手を置き少しずつ魔力を流し込んでいってください。オーサン様がおっしゃられていました。『少しずつ』と」
やけに念を押すな。そんなに念を押されると反発したくなるじゃないか。
いやいや、これだけ念を押すってことはそれだけデリケートな機械なんだろう。
そうっと、そうっと
<パシャ!>
1秒も立たずに起動した。そのあとはポラロイドのようにカードが出てきた。
「確認します。書類内容は…転写されているわね。属性は…ッ!」
…
「シルド様…ちょっとこの部分、このペンに魔力を込めながらなぞってもらえっませんか?」
示された場所に書かれているのは『闇』の文字…
「これってかなり…ですか?」
「はい、…です。ですのでこのペンでちょこっとなぞってもらえるかなぁ」
凛とした事務姉さんの仮面がはがれかけてる。
<すぅっと>「これでいいですか?」
ペンでなぞった箇所が消えた。修正ペンか。
「ハイ、オッケーです。ちなみにこの事を知っているのは?」
「オーサ兄も含め同じ孤児院で育った兄弟のみです。」
<フー(汗)>「いいですかこのことは他言無用ですよ。」
「兄弟にも言い聞かせているので大丈夫です。」
「ほんとにぃ?」
「ハイ!」
「まあ、シルド君のことを信じましょう。オーサンの弟君だしね。」
『様』⇒『君』に。親密度が上がった。
「じゃあ次はレード君」
同じように、ボックスにカードを挿入し書類を置き
「じゃあ、この水晶玉に手を置き少しずつ魔力を流し込んでいってね。」
<パシャ!>
これでレードのカードもできた。
「オーサンは『D級っからでも大丈夫』って言ってたけどちょっとそれは無理なの。でも特例でE級からのスタートよ。」
E級というと森での薬草採取まで。魔物討伐は NGだっけ。
「とまあ、ここまででわからない事ない?」
「「ないです。」」
「そうそうオーサンから手紙を預かってるわ。あとで読んでね。あと、もしなんかトラブルでもあったらお姉さんに言いなさい。オーサンから頼まれている以上、できるだけ力になるわよ。」
「はい」「その時は「お願いします。」」
「よろしい。」
<コホン>
「シルド様レード様、手続きは以上になります。お付き合いありがとうございました。」
なんとか事務姉さんの態で閉めたな。
「で、オーサ兄の手紙にはなんて書いてあるんだ。」
「えっとねぇ『シルド、レードすまない。急遽仕事が入った。まあ俺より地頭のいいお前たちのことだ、俺がいなくても何とかできるだろう。もし何かあったらレニーアを頼れ。あいつはギルマスの娘だから多少の無理は聞くはずだ……が、あんまり頼るな。その分の貸しが怖い…なんとかギルマスに頼んでE級からにしてもらったからな。後、宿は10日ほど予約してある。冒険者の集いっていう宿だ、じゃあ行ってくる』だって。」
「レード、オーサ兄の物まねうまいな。しかし頼っていいのか頼っちゃ悪いのかどっちだ?」
「きっと兄はあのお姉さんに頭が上がんないんだよ。でも私たちのことが心配で…オーサ兄はやっぱりオーサ兄だよ。」
「そうだな。じゃあオーサ兄の言葉に甘えて『冒険者の集い』に行きますか。」
「そうだね。」
…
…
しかし
…
「えっ、予約が入っていない?」
「は、はい。今朝方、オーサン=グロップ様の使いの者という子供が来て予約はキャンセルだと…」
「じゃあ新たに部屋を取って…」
「すみません、本日は満室でして…おそらくほかの宿屋も同じ状態ではないかと…」
「…予約していたとすれば前払いがあったはずだ。その料金はその子供に渡したのか?」
「いえ、大金ですので返金は本人確認できない場合渡さないようにしております。」
とりあえずお金は無事か。
「わかった。とりあえずその『使いの子供』の顔はよく思い出しといてくれ。明日、冒険者ギルドから使いを出す。」
俺たちは『冒険者の集い』を後にした。
ちょっと脅し風に言ったら青ざめていたな。




