15話 兄の成人の儀生活
アルデ兄が旅立ってから、たまに手紙が来て頑張っていることがうかがえる。
神父様やシスターの教えは、しっかりしてたとしても、従者には従者の教えというものがあり苦労しているようだ。
あと、ちょっとした襲撃(襲撃のどこがちょっとしただ!)があり、俺の盾で令嬢を守り領主様から褒められたそうだ。
そのことがきっかけとなり令嬢にも気に入られてるらしいのだが…あっと、これはシスターからの情報。
どうやらシスター同士のネットワークがあるようで…こんな田舎でどんな情報交換手段があるのやら…
そんなこんなで1年が経ち、今日はオーサ兄の成人の儀だ。(他、村の青年3名含む)
成人の儀専門の巡回司祭が儀式を行い女神様が『職』を与えてくれる。
『職』といっても、その職業に関する加護が強化されるのであって、絶対その職に就く必要はない。
極端な例では、指揮者の職を賜った青年が軍に入り将軍になった話がある。
本来、指揮者は演奏者に指示をし曲を構成する者だが、戦場を譜面にたとえ兵を演奏者に見立て戦を構成した結果とか。
吟遊詩人が語っていたので本当か嘘かわからないが。
こちらも洗礼の儀同様、聖玉を用いる。
この場合、被験者と司祭が同時に手を置き二人に聞こえた言葉が被験者の『職』となる。
ただし、この時に聞こえる言葉は神の言葉であり、通常使っている言葉とは異なるので、職業辞書で調べる必要があるのだ。
まずはモッコスさん家の隣に住んでいる、ディラック君だ。次男坊だから家を出るか新たに土地を開拓するかだけど、職で何か変わるかもしれない。
「ディラック=ラックよ。私と一緒に手を置きなさい。」
ディラック君と司祭が聖玉に手を置くと聖玉は輝き…
「ディラック=ラックが賜った職は『ミヤダイク』」
(神の言葉ってもしかして日本語?)
司祭が告げると助手が辞書をめくる…
『ミヤダイク』という言葉がなかったようだ
さらに検索……そして
[司祭様こちらになります]
「改めて告げる。ディラック=ラックが賜った職は『大工』です。」
辞書に載っていない言葉ははしょられるのであった。
ディラック君はしょっちゅうモッコスさんの手伝いをしていたのでそのまま弟子入りとなる可能性が大きいな。
『ミヤダイク』⇒『宮大工』ならば『大工』と大差ないのであまり問題にはならないだろう。
後の二人は『ノウカ』⇒農家。『チクサン』⇒畜産。と家業に沿った結果となった。
通常告げられる『職』は、家業やその者の性格に合ったものが多い。
最後にオーサ兄となる。
「オーサン=グロップよ。私と一緒に手を置きなさい。」
オーサ兄と司祭が聖玉に手を置くと聖玉は輝き…
「オーサン=グロップが賜った職は『トウソツシャ』」
えっ?統率者?それって職業?
助手が辞書をめくる……そして
[司祭様こちらになります]
「改めて告げる。オーサン=グロップが賜った職は『トウソツシャ』です。」
辞書には載っていたようだ…が翻訳されていないぞ。
それに司祭様の顔色が悪い。
「これにて成人の儀を終了するものとする。」
司祭様(および助手)と神父様シスターとともに控室へ移動した。
「「オーサ兄」」
「おう、シルド、レード。俺の職は『トウソツシャ』だってよ」
「兄はその意味わかるの?」
「わかんね!」
えらくあっさり…
「わかんねけどよう。それで俺の過ごした16年、お前たちと過ごした日々がなくなるわけでもねえだろ。」
この前向きな考え。間違いなく『統率者』だ。
「オーサン、こちらに入ってきなさい。」
控室入り口でシスターが呼んでる。
「お、もしかして俺の職の説明か?ちょっくら行っ…」
「僕も聞きます。」
「私も。」
「…そうか、じゃあ一緒に入ろう」
控室にて
「失礼します。」
「「しつれいします」」
オーサ兄は普段は粗野でも、こういったときはしっかりしている。
「二人も入ってきたんですね。…まあいいでしょう。オーサンはそこに掛けなさい。」
呼ばれたのはオーサ兄だけだから僕らは立っています。空気なので気にしないでください。
「オーサン君が受け賜った職『トウソツシャ』は今まだ検証中の職で、まだ詳細が判明していないのですよ。」
職判定のスペシャリストでも解んないとは…職のシステムはまだ若いのか?
「司祭様、この件は以前私も文献を調べたことがございますので、補足させていただきます。」
お、神父様が何か知ってるっぽい。
「私の調べでは『何かのまとめ役』『リーダー』としての適性があることまではわかっているようですね。」
それってやっぱり『統率者』では?
「さすがはグロップ神父殿。この件は本部に上げさせても?」
「かまいません。少しでもお役に立てましたかな。」
「大変貴重な意見ありがとうございます。」
司祭様恐縮しているなぁ。確か司祭は神父より上の位じゃなかったっけ。
「さて、オーサン。あなたは冒険者になりたいって言ってましたね。『まとめ役』となるまでは苦労すると思いますよそれでも冒険者になりますか?」
オーサ兄は少し考えた後。
「はい!俺はなります。冒険者に。ゆくゆくは弟たちを引っ張って行く存在になりたいと思っています。」
「ということです、司祭様。職は職、個人は個人です。何も心配なさることはございません。」
「は、はい。さすがはグロップ神父の育てられた御子ですね。ご立派です。」
解らない職を告げたことに不安を感じているようだが俺らのオーサ兄に心配は無用だ。
「司祭様は今日はお泊りになるのでしょう。この後は宴になります。どうぞごゆっくりお楽しみください。オーサン、シルド、レード。手伝いに行ってきなさい。」
「「「はい!」」」
そのあとは成人祝いの宴だ。
宴が終われば、オーサ兄は司祭様の馬車に乗せてもらい州都まで行ってしまう。
さみしくないといえば嘘になるが、笑って送り出そう。まずはどんちゃん騒ぎだ。
朝、出立の時
「シルドの盾。ありがたくもらってゆくよ」
俺たちとの模擬戦で辛勝したのを機に大盾の使い方をトイナさんから改めて教えてもらっていた。
トイナさんからは太鼓判を押してもらっていたので、俺は大盾を作成し渡したのだった。
「オーサ兄。木より[ちょっと]強い盾だからね。痛んできたら新調してよ。」
「わーってるよ!そーだな、この盾がくたびれる前に一人前になってやるよ!」
「「それは無理!」」
「おいおい!」
「だから無理しないで。」
「私たちもすぐ追いつくからね。」
「「行ってらっしゃい」」
「おー!」




