14話 兄の巣立ち生活
朝、レードと二人で
「「父さん、母さん、おはようございます」」
って挨拶したら、一瞬驚いた後、微笑んで
「「シルド、レード。おはようございます」」
って言ってくれた。
そんな俺たちの影響か、オーサ兄とアルデ兄も「オヤジ」「オフクロ」と呼ぶようになった。
なんかうれしいな。
それから数日して、孤児院に貴族が訪ねて来られた。
隣の領主のバラン子爵らしいのだが、執務室前で盗み聞きしているところをシスターに追い払われたのだった。
「なんの話だろう?」
「俺たちは『グロップ』の姓をもらっているしお前たちは弟と思っている。」
「俺も、オーサは兄ちゃんだし、シルドもレードも大切な弟だよ。」
「しかしな、アルデ。忘れているようだが俺たちは孤児だ。いくら神父でも貴族様から引き取りたいと言われれば嫌とは言えんだろう。」
「私、シルドと別れたくないよう。」
しんみりした雰囲気になったが、
「まだ引き取られるって話になったわけじゃないしそんな悲観しなくても。それに僕らはどんなに離れようとも兄弟だよ。」
「シルドの言う通りだな。俺たちはグロップ神父の息子。それだけは変わらないさ。」
「おや、みんなこちらに集まっていたのですね。」
神父様と子爵様が執務室から出てきた。
「こちらは隣の領地を治めておられるバラン子爵です。皆さんご挨拶を」
「「「「バラン子爵様、こんにちは」」」」
「こんにちは。さすがグロップ神父様の御子たちですな。皆、礼儀正しい。」
「いえ、この場だけですよ。普段は手を焼いております。」
そんな手を焼かせた覚えはないんだけど…まあ…やらかした覚えはあるが…
「して、この中で14歳となるものはアルデ君かな。」
「…はい、お、私がアルデです。」
「君がアルデ君か。実は儂には娘がおってなもうじき14歳となる。娘の従者として君を引き取ろうと思うのだが、どうだろうか」
実に腰の低い貴族だ。
貴族なら『従者となれ』と命令すれば平民それも子供なら拒否権はない。
(さらに『断る!』などという猛者もいない)
やはり神父様の手前。少し引いているのか。
それよりもアルデ兄だ。
「子爵様、ちょっと待っていただけますか?」
「ああ、いいとも。」
少し間をおいて振り返り
「オーサ兄、シルド、レード。俺たちは兄弟だよな。」
「ああ。」
「もちろん。」
「兄さん…」
「子爵様…そのお話、御受けいたします。」
「ありがとう。バラン領主ミルディン=バランがアルデ=グロップを従者としてグロップ神父より預かり受ける。よろしいかな?」
貴族特有の契約の言い回しだ。アルデ兄、ちゃんと返せるかな。
「グロップ神父が一子、アルデ=グロップ。従者としてミルディン=バラン様に奉公いたします。」
「グロップ神父様、アルデ君は儂が責任をもって立派にいたしますぞ。」
「よろしくお願いします。」
「オーサ兄。あと一年だけど弟たちを頼む。」
「任せろ。アルデもネをあげるんじゃねえぞ」
「わかってるよ。シルド、レード。また会おうな。」
「旅に出れるようになったら絶対、会いに行くよ。」
「私も会いに行く。」
「約束だ。」
餞別らしい餞別は用意できなかったが、俺の作った小盾だけは持っていってもらった。
何度か試作して強度マシマシにした三角盾だ。
剣盾ほどではないがそのエッジは十分武器になる。
「シルド!盾、ありがとな!」
馬車から手を振るアルデ兄の左手にはその盾が光る。
これが少しでも、アルデ兄やバラン令嬢を守ってくれますように。




