(1)
屋敷の中に入ると、玄関広間の奥の扉を開け放してルシェリが飛び込んできた。そしてそのままスィベルの足に抱き付いて離れなくなる。
「ル、ルシェリ…? どうした?」
すっかり慌ててしまったスィベルだったが、無言でしがみ付いてくるルシェリの肩を一度掴んだものの、引き離すことはできずにそのまま彼は屈み込む。
「友達と遊んでたんじゃないのか? ここは友達もいっぱいいるから家より余程楽しいだろう?」
恐らくネメアが襲ってきていたため、ここに避難させてもらっていたのだろう。だがどうにもスィベルの態度はよそよそしい。折角ルシェリが喜んで抱き付いてきたというのに、彼自身はどちらかというと迷惑そうだ。
「寂しかったんじゃないのか? ほら、他の子供達も親が迎えに来るのを待ってるみたいだ」
ショノアが声を掛けるとスィベルは彼女が飛び出してきた扉の方を見た。そこには大勢の子供がこちらを羨ましそうに覗き込んでいる。皆、親が来るのを今か今かと待ち構えているようだ。
「ルシェリちゃんを迎えに来られたんですか?」
スィベルは足にしがみ付いたルシェリを引き離そうと悪戦苦闘していたが、その間に子供達の中から女性の使用人が現れ声を掛けてくる。とても優しげで如何にも包容力のありそうな女性だ。きっと彼女が子供達の世話を引き受けてくれているのだろう。
「えっと…いや、その…、オルデナ様に会わせたい人を連れてきたんだ」
スィベルは呆れたことにありのままを伝えてしまった。ここに来る前にはショノアもルシェリがいることなど知らなかったが、こうして飛び付いてきた彼女を前にして迎えに来たわけではないとスィベルははっきり口にしてしまったのだ。彼の足下では予想通りルシェリが落胆したように顔を伏せている。
「あら、そうでしたの?」
女性はあからさまに失望したような顔を見せ、少し遅れて入ってきた男性使用人に何かを伝えている。ルシェリはすっかり落ち込んでしまったようで、スィベルの足を掴んでいた手も離し、体まで彼から離してしまった。そして何も言わずにトボトボと元来た場所に戻っていこうとする。ショノアは思わず魔法でスィベルの背中を小突いてしまった。
彼は声を上げて前につんのめると恨めしげにショノアを振り返る。どうやら誰の仕業かはすぐに気が付いたらしい。だったらルシェリを悲しませるようなことをしなければ良いのだ。
「ルシェリ、スィベルは用が済んだらすぐに迎えに行く。だから安心して待ってろ」
駄目押しとばかりにショノアが声を掛ければ、こちらを振り返っていたルシェリは本当に嬉しそうな顔になって駆け去っていった。思わず安堵のため息が漏れる。
「おい、ショノア…。さすがに今のは余計だぞ?」
彼女の姿が見えなくなると、スィベルはすぐさま食ってかかってきた。だがあまり強く出てこないのは、彼自身ルシェリに対する行動がまずかったことを自覚しているからだろう。後ろめたいということは、つまり彼女に本心とは異なる態度を取ってしまったという証拠でもある。
「あんた、あの子のことまだ嫌ってるのか?」
一応確認してみれば、スィベルは居心地悪そうに目線を逸らした。
「別に…嫌い…ってわけじゃねぇよ…。今は色々と役にも立ってくれるしな…。むしろ…自慢の娘…だ」
ルシェリはスィベルがいくら素っ気なくしても懐いてくれる。この前薬の作り方を教えたら1回で覚えて彼を驚かせた。料理の鍋は何も言わなくても食べる直前には温かくなっており、薬草も毎日必要な分量を収穫できる。これほどできた娘はいない。スィベルはショノアが聞いてもいないのにルシェリへの褒め言葉を並べ立て始めた。これだけのことを思っていてどうして一つも彼女に伝えていないのだろうか。むしろ呆れるしかない。
「じゃあさっきの俺の言葉は特に余計でも何でもないだろう?」
「いや、でもだな…。今はちょっと忙しいし…、正直どうやってあの子に接したら良いのかわからないんだよ…」
元々邪険に扱ってきただけに、急に態度を変えるのも恥ずかしい。そんなことを呟くスィベルは要は素直になれないだけなのだ。このままでは彼はまたしても母親にしてしまったことと同じ仕打ちを娘にまでしてしまうだろう。それではルシェリが可哀想だ。
「別に特別に何かしてやる必要はないんだ…。黙って一緒にいてやるだけでも子供は安心する」
とにかくルシェリを避けるような行動だけは改善させなければならない。ショノアが譲歩案を出せばスィベルは少し意外そうな顔でこちらを見つめてきた。
「……そう…なのか?」
「まして…ネメアが街を襲ってたんだろう? もう二度と親に会えなくなるんじゃないかって、みんな不安だったはずだ」
「……」
子供の頃、王都でネメアから身を隠していた時はもっと悲惨だった。ネメアは家を破壊し、親や知り合いを次々と殺した。会えなくなるかもしれないではなく、ほとんどの子供がネメアが去った後実際に親を亡くしていたのだ。
「照れ臭いのかもしれないが、言える時に本当の思いは伝えておいた方がいい。でないと…言おうとした時には既に相手はいなくなってる…ってことにもなりかねない」
ショノアの脳裏を過ぎるセレンとの思い出。彼はこの先時間はいくらでもあるのだからと言って、ファタルの記憶を取り戻したショノアとの語らいを先延ばしにした。そしてショノアもそのセレンの提案を受け入れた。だが結果、もう二度とショノアはセレンと語り合うことはできなくなってしまったのだ。
「言える時に…か」
スィベルはショノアの言葉に静かに考え込む。彼も好きな女性に先立たれ、真実を確かめる機会を失っている。だからこそショノアの伝えたいことも正しく理解できるはずだ。
「……わかった。ルシェリのことは今日引き取って、“いつも助かってる”って伝えるよ…。それからヴァレリアのことも…、事情を知ってる人間に明日にでも会って話してみる」
「それが良い…」
ショノアは何故か自分のことのように嬉しかった。ルシェリのことは自分の子供の頃と重なる点が多く、つい親身になってしまいがちだ。だからこそ彼女が実の親と幸せになれれば、ショノアの中の『ファタル』も幸せになれるような気がするのだろう。
それにしてもここに来てしばらく経つが、2人の訪問はオルデナの耳に無事に入っているのだろうか。先程ルシェリを連れて行った女性が他の使用人に何か伝えていたが、あれ以来何の音沙汰もない。入口の扉付近では先程屋敷の中に入れてくれた使用人が直立しているが、彼が動かないところを見ると待つしかないのかもしれない。
しかしこの部屋の壁からは何かの視線が常に感じられて、居心地は決して良くはない。透視もろくにできないので、他の部屋の中がどんな様子なのかもわからない。スィベルが期待する人物であるからには安心して良いとは思うが、そのスィベル本人が今は落ち着きなく周りを見回し始めている。それはいつもと勝手が違うという証明だろう。どうしたものかと考えていると、奥の扉から1人の男性が現れた。
「オルデナ様がお会いになられます。どうぞこちらへ」
ようやくかと安堵し歩き始めるが、前を歩くスィベルは相変わらず動きがぎこちない。彼は見るからに戸惑っているようだった。
「いつもと違うのか?」
「…ああ。いつもは1階なんだ」
声を掛ければスィベルは少し落ち着きを取り戻してショノアに説明する。それを聞いた使用人が今日の部屋は最上階の4階で一番奥の部屋だと教えてくれた。
「いつもの部屋は普通のお客様をお迎えする部屋です。ですが今日の部屋は…主人がお客様に全てをお見せするための部屋なのですよ?」
「……全て?」
それはファランに対して全てを曝け出すということだろうか。確かにこれから協力し合っていこうという人間同士が隠し事を抱えているようでは話にならない。その行為には好感を持ったが、逆に後ろめたい気分にもなる。ショノアはまだ全てを彼女に打ち明ける決心が付いていないからだ。
しかし話している間にも使用人はどんどん屋敷の奥に進んでいく。周りを通り過ぎていく使用人の質も明らかに変わってきた。下の階ではどこかのんびりと働いている使用人ばかりだったが、4階まで来ると明らかに彼らの顔つきは厳しくなり、何らかの重要な仕事をこなしているらしいことが伺える。
「こちらです」
奥まで辿り着くと大きな両開きの扉の前で使用人は止まった。彼が中に向かって声を掛ければすぐに女性の声が応じ、それに伴い彼はゆっくりと扉の片側を開いた。
前を歩いていたスィベルは自分が先に入るのかと言わんばかりに振り返ってきたが、ショノアが頷いて見せればおとなしく先に入っていった。スィベルに続いて部屋の中に入ったショノアは思わずその部屋の異様さに目を奪われる。なぜなら部屋の壁という壁が動く絵によって埋め尽くされていたのだ。
「驚きましたかしら? この部屋はチェリクスの全てを見通せる部屋になっておりますのよ?」
感心して眺めていると、部屋の奥から美しい女性が歩いてきた。体の線がそれなりにわかるような青の上下に白いレースの上掛けを羽織ったその姿とその顔に、記憶の中の女性との共通点を見出しショノアは思わず息を飲む。
「サフィア…?」
無意識に呟いてしまったその声に女性が反応し、こちらに近付いてくる。
「お若いのによくご存知ですわね? でも私はサフィアではなく、従姉妹のオルデナですわ。お間違いにはならないでくださいね?」
少し棘のある言い方で彼女はショノアに念を押してきた。しかし彼女はどこからどう見てもサフィアにしか見えない。彼女のことはたった1日だけしか顔を合わせていないが、あれほどの美女は後にも先にもショノアは見ていない。だからこそ幼い頃の記憶であってもまだ色褪せずに残っているのだ。
「…す、すまない。あまりにも似ていたのでつい…」
「そうですの? 彼女とは子供の頃以来顔を合わせていませんからよく知りませんのよ?」
ショノアが素直に謝ればオルデナもすぐに笑顔を見せた。一瞬気分を害したように見えたが、そのことくらいで不機嫌になるような心の狭い人間ではないらしい。
「それはそうとスィベル、ここにはファラン様をお連れしてくださったと聞いておりますけれど?」
「…え? あ、ああ、そうです」
スィベルは未だに部屋の壁全体に映し出される光景に圧倒されていたようだったが、慌ててショノアに異空間を開けるよう頼んできた。すぐに異空間を開けると、オルデナが興味深げに近付いてくる。
「まあ、これが『異空間』…? 話には聞いていましたけれど、実際に見るのは初めてですわ」
中を少し覗き込んでオルデナは感心したように呟いた。
「良かったら中に入って見てみるか? ファランも中にいることだし、あんたが出向いてくれたら彼女を移動させずに済む」
ファランは起こしさえすれば異空間から出てこの部屋で話そうとするだろう。だが慣れない場所では恐らく彼女は緊張してしまい、より疲れを溜めてしまうかもしれない。ショノアはできるだけ今のファランに負担をかけたくなかった。それほど彼女の消耗は激しいのだ。
「そうですわね…。ファラン様、随分お疲れのご様子でしたし、その方が良いかもしれませんわね」
オルデナはあっさり話に乗ってくれた。だがその言葉の内容にショノアは思わず彼女の顔を見つめてしまっていた。
「あんた…、どうしてファランの今の状態を知ってる?」
オルデナにはまだファランのことを見せてもいないし、話してもいない。それで何故彼女が動けないくらいに疲れていると知っているのだろうか。疑問に感じていると彼女は美しい声で上品に笑った。
「あなたがファラン様を連れてこの街に入ってきた時、門番が近くにおりましたでしょう? その門番が色々と私に教えてくれましたの。まあ、そうでなくとも…棘花がネメアを取り囲んでいく様はここから確認できましたし、ある程度のことはわかっていますのよ?」
そう言うと彼女は壁に取り付けてある宝石の一つに触れた。すると壁一面が棘花に囚われているネメアを映し出す。
「すごいな…」
かなり自在に見たい場所を映し出すその装置にはショノアも驚く他ない。
「でもガレス人のあなたに比べたら…やはりできることはかなり少ないのです。この街はガレス人の力無くしては存続は難しい」
オルデナは厳しい顔を見せると再び壁を今まで通りの色々な景色に切り替える。
「ファラン様とお話しするのは勿論大切なことですが、私はあなたにも是非とも協力して頂きたいのです。それをお忘れにならないでくださいね?」
「……」
ショノアは彼女の言葉に少し迷い始めていた。オルデナは彼が考えていたよりもずっと有能で頼りになりそうだ。セレンがもうこの世にいないとわかっても、彼女ならファラン同様力強く立ち上がるだろう。ファランのことも彼女が支えてくれるなら今後も安心だ。だとしたら全てを打ち明けるべきかもしれない。
迷いつつもショノアは異空間に足を踏み入れかけたが、ふとあることに思い至りオルデナ達を振り返る。
「ちょっと遅れて入ってきてくれるか? この中だとファランは結構伸び伸びしててな…。いきなりあんた達が入ってくるとびっくりするかもしれない…」
この中はモンドレルからチェリクスまでの道のりで何度かファランも使用している。自然溢れる森の中が良いと言われたので彼女の希望通りに微調整を加え、彼女が集めていた植物を至る所に植えれば、すっかり彼女の理想通りの場所に出来上がってしまったらしい。
本物の珍しい花々に囲まれていればショノアも気分が良く、時には2人で花の手入れに丸一日かけたこともある。何しろショノアも一緒に中に入ってしまえば時間は全く経過しないのだ。どれだけ時間がかかろうと気にする必要はない。偽のセレンと敵対した直後だっただけに、ショノアにとってもその穏やかな時間は良い癒しになっていた。
しかしそこまで長い時間2人で一緒に過ごしていると、異空間の中ではお互いすっかり気安い関係になっていた。チェリクスに着く頃にはショノアもファランもこの中では何の気兼ねもなく自分の部屋の中にいるかのような自由さだ。若い女性が側に男性がいるのに好き勝手に過ごしているのもどうかと思ったが、異空間の中は際限なく広くもできる。しっかり距離を空け、木々で互いの姿を隠してしまえば問題はなかった。
しかしそれはショノア以外この異空間に入ってくる者がいないとファランが信じているからだ。突然オルデナが入ってきたら彼女も驚いてしまうだろう。最悪大の字になって寝ているファランをオルデナに目撃させることにもなりかねない。
「ファラン、入るぞ? まだ寝てるのか?」
一応この中に入る時は声を掛け合うことに決めている。さすがに着替え中に居合わせてしまう訳にはいかないからだ。
中は寝ているファランに合わせて今は『夜の森』だ。星や月の光を受けて、花々は色鮮やかな光を放っていて、漂ってくる芳香は心を穏やかに鎮めてくれる甘い香りだ。川のせせらぎと、虫の音。柔らかく短い草の上は裸足で歩くのが良いのだと彼女はいつもすぐに靴を脱いでしまうのだが、今回はショノアが直接中に運んでしまったのでいつものように靴は転がってはいなかった。
「ファラン?」
再度呼びかけると、木の根元に積み上げられたクッションの中から彼女の体が起き上がる。しかしまだ寝足りないのかファランはぼーっとしたまま動こうとはしなかった。
「髪、ボサボサだぞ?」
何をしていたらこんなにも髪が乱れるのかはわからないが、なかなかすごいことになっている。やはり先に見に来て正解だった。特に絡まりのひどかった花型の髪飾りを何とか外すと、バサリと長い髪が肩まで落ちる。
「あれ…?」
彼女はこんなにも髪が長かっただろうか。確かにモンドレルで再会したファランはずっと髪の毛を一つにまとめているようだったが、元々は少年のように短かった。しかしいくら何でも10日かそこらで伸びる長さではない。
「……もう…やっぱり気付いてなかったんだ…。まあ、私も髪解かなかったから仕方ないんだけどね…。でも最初に気付いて欲しかったなー…」
ファランは不満げにぶつぶつ呟くと、ショノアが持っていた髪飾りを受け取って再び髪に差し込んだ。するとボサボサだった髪がひとりでにスルスルと綺麗に結い上がっていく。どうやら髪が乱れていたのは髪飾りが抜けかけていたからだったようだ。
「……便利な代物だな」
「でしょう? 不器用な私にはぴったり。伯母様がくれた物の中でこれだけは最高。形も気に入ってるし…」
そもそもファランが髪を短くしていたのは自分で結い上げられなかったのが最大の要因だったらしい。それがこの髪飾りのおかげで解決したため、髪を伸ばされてもそのままでいられたのだと彼女は言う。
「ちょっとこう…髪型がドレス向きなのが嫌なんだけどね…。格好良い髪型にしてからこの髪飾りを挿したら次からその髪型になったりしないかな…」
「でな、ファラン」
「え?」
彼女は何かとこだわり出したら止まらないため、適当な所で話を元に戻そうと声を掛ける。オルデナがこの中まで会いに来ることを伝えると、ファランは明らかに動揺してあたふたし始めた。
「お、オルデナがここに来るの⁈ …だ、大丈夫? 私、見られても恥ずかしい物とか置いてない…?」
そういえば彼女はあまり他の貴族と正式に面会したことがないのだ。何か不作法があってはと焦る気持ちはわからなくもない。まして相手は敏腕美女領主のオルデナだ。ただ会うだけでも緊張するような相手だろう。
「あんたの持ち物なんて、ここじゃ花ばっかりだろ?」
「う、うん…。でも…どうしよう…。ドレスに着替えた方が良い?」
「別にそのままで良いだろ? オルデナだってドレスじゃなかったし」
モンドレルを飛び出した時、ファランはエリアナに贈られたというドレスを身に付けていた。本当ならもっと動きやすい服を着たかったらしいが、それはエリアナが許さなかったようだ。しかしゲラントの言い付け通り、彼女は自分の持ち物を常に身に付けていた。『何が起こるかわからないので必要な物は手放すな』というのがゲラントの口癖だったらしいが、それが今回大いに役に立ったようだ。
彼女はそれ以降、元の服装に戻っているがその服は元々ゲラントと一緒に選んで買ってもらったという乗馬用の貴族の服だ。ファランとしてはそんな高価な服は不要だと言ったらしいのだが、ゲラントが頑として譲らなかったのだそうだ。王女としての品位を必要以上に落としてはいけないというのが彼の言い分だったらしく、そのおかげで彼女の着替えはなかなか質の良い物が揃っている。彼はもしかしたら以前から今日のような状況を想定していたのかもしれない。何しろ彼は直属部隊の騎士で、王族や貴族と直接接する機会のあった人間だ。そういう場には一番馴染みがある。
「大丈夫、あんたは今回“王女様”として彼女と会うわけじゃない。“恵みの神”でありネメアを捕らえたこの街の“恩人”なんだ。それはあんた自身の確かな功績だろう?」
「う、うん…。そうだよね…。私自信持って良いよね?」
「そうだ。自信を持って良い」
「…よし、わかった。もう大丈夫」
しっかりと顔を上げたファランを見るととショノアも安心する。しかし彼が立ち上がり、ファランもそれに続こうとするとやはり立ち上がれないらしく、力無くショノアに手を伸ばしてきた。
「ここに連れてくる。心配しなくていい」
泣きそうな顔で見上げられたので、そう声を掛けて安心させる。おとなしく頷くファランを見届けると、ショノアは異空間の入口に向かった。




