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バニーガール神に選ばれたので、学校がダンジョンになった  作者: 浦賀やまみち
第二章 学校国家

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第11話 八十人前後




「俺はやるぜ! やってやるぜ!」

「私、実は小学校まで剣道やってたんだ!」



 夜が明けて、朝。

 ダンジョンへ向かおうとする生徒は、昨日よりも明らかに増えていた。



「宝箱を開けるのにスカウトが必要らしいぜ」

「嘘だろ。絶対に不遇職だと思って、ファイターを選んだのに」

「……俺も」



 五人、あるいは六人のパーティを組むための手続き。

 興奮と不安が混ざった声が行き交い、ざわざわとした熱気が事務室前を満たしていた。


 それを、遠巻きに見ている者たちも多い。



「やっぱ、朝がパンだと違う」

「食パンなんだから、せめてジャムくらい欲しいよな」

「俺も、あいつらみたいに卵かけご飯が食いてぇ」



 昨夜の夕飯は、レトルトのカレーだった。

 肉や野菜も入っていない安いやつだ。


 もちろん、添え物の福神漬やらっきょうもない。



「あの肉、美味そうだったよなー」

「つーか、匂いだけで美味かった」

「いや、海鮮だ! 今夜は、いくら山盛り丼!」



 だが、昨日ダンジョンへ行った者たちは違う。

 自分で稼いだゴールドで肉を買い、校庭でバーベキューをしていた。


 間違いなく、これが変化のきっかけになっている。

 それとなく誘導した甲斐はあった。



「見て見て、この青いの! 彼氏からもらっちゃった!」

「綺麗……。」

「いいなぁ~……。」



 さらに、もう一つ。

 昨日ダンジョンへ行った者たちが持ち帰った宝石も大きい。



「ねえねえ、ゲットできたら指輪とかにしてみたくない?」

「だよねー! 私、ピアスにしたい!」

「そういう道具、アマゾーンにあるかな?」



 小粒ではあるが、ダイヤにサファイア、ルビー。


 もう、ここが地球でない以上、宝石そのものに価値はない。

 真価は、その中に込められた使い捨ての魔法のほうだ。


 それでも、女子生徒たちは色めき立った。



「我が刃に断てぬものなし! 一気闘閃!」

「それ、ただのいい感じの棒だけどな」

「馬鹿! これから村正を手に入れるんだよ!」



 一方、男子生徒たちは単純だ。


 漫画やアニメ、ゲームの中にしかなかった『本物の剣』を目にして、素直にはしゃいでいる。

 その様子に、苦笑を堪えきれなかった。


 だが、よく分かる。

 かつての自分も、そうだった。



「事務長、事務長……。」

「あっ、藤井先生」



 動機がどうであれ、異世界転移二日目としての空気は悪くない。

 無論、現実を知って再び尻込みする者も出てくるだろう。



「どうです? 何人くらいになりそうです?」

「まだ正確な数字ではありませんが……。」

「構いません」



 しかし、昨日ダンジョンへ行った者たちのおかげで、朗報も見つかった。


 全生徒の四割、八十人前後がダンジョンへ毎日挑み続けた場合。

 電気・ガス・水道は従来通り使え、全員がそれなりの食事を三食確保できる。



「たぶん、百二十は超えます」

「おお……。」

「これで、何とかなりそうですね」

「いえ、一週間は様子を見ます。まだ安心するには早いです」



 懸念していたゴールドの管理・運用も問題ない。


 あのバニーガールは、妙に現代的なシステムを用意していたらしい。

 電子マネーのように、全員に配布されたカードに入出金が記録され、本人認証がなければ使用できない仕組みになっている。



「それと、彼女のことですが」

「はい」

「それとなく、うまく取り計らっておきました」

「ありがとうございます」



 そして、税率は90%。


 王様である校長だけがその数値を操作できる。

 生徒たちがモンスターを倒した時点で、ゴールドは自動的に天引きされる仕様だ。


 教師たちからは、さすがに高すぎるという苦言も多かったが、仕方がないことだった。



「でも、意外でした。

 まさか藤井先生が女子生徒と……。」

「違います」

「いいじゃありませんか。もうここは日本じゃないのですから」

「違いますよ」



 八十人前後がダンジョンへ挑めば、毎日は回る。

 だが、それだけだ。


 一か月後に訪れるだろう攻城戦に備え、学校を要塞化しなければならない。


 そのための資材を、アマゾーンで購入する必要がある。

 税率は、体制が整い次第、段階的に下げていけばいい。



「藤井先生ぇ~~!」



 俺を呼ぶ声に振り向くと、校庭でひなたが大きく手を振っていた。

 事務長がにやにやと笑う。



「ほら、呼んでますよ。見送りに行ったほうがいいんじゃないですか?」

「違いますからね?」



 俺は小さくため息をついて、校庭へと向かった。




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