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バニーガール神に選ばれたので、学校がダンジョンになった  作者: 浦賀やまみち
第二章 学校国家

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12/12

第12話 完全に真っ黒だ




「じゃーん、どう?」



 ひなたがその場でくるりと軽く回る。

 制服のスカートの裾がふわりと広がった。


 ただし、生足は見えない。

 ジャージだ。


 そして、なぜか得意げな顔で謎ポーズをとった。

 右手に握った麺棒が、びしりとこちらに向けられる。


 本音をいえば、かっこ悪い。



「……いいんじゃないか?」

「あっ!? 馬鹿にした!」



 だが、仕方ない。


 麺棒も、一応は武器として使える。

 ジャージを穿いているのも、生足でダンジョンを歩かせるよりはマシだ。

 転んだだけで怪我をする可能性もある。


 実質的には初日なのだから、これで十分だ。



「柊さんは、まだいいですよ。

 私なんて、跳び箱の一番上ですよ? これでどうしろと」

「や、山口さんは、『タンク』っていう受け専門らしいから」



 皆がダンジョンで武器や防具を手に入れる。

 不用品は購買に流れ、それを他の者が買う。

 その循環が回れば、今の仮装大会のような光景も、そのうち消えていくだろう。


 しかし、こんなでも満足しているやつはいるようだ。



「滅……。我は闇のアサシン。

 光に憧れながらも、漆黒に生きる定め」



 暗幕をローブ代わりに纏い、顔まで隠しているアホがいる。

 武器は黒板用の大型コンパスらしい。


 勇者に憧れ、百円ライターを異世界転移に備えていた、あいつだ。


 事務長はうまく取り計らったと言っていた。

 だが、ひなたをこいつと組ませて、本当に大丈夫だろうか。


 不安しかない。



「周防、藤島、頼んだぞ。

 でも、無理はするな。安全確保は忘れるな?」



 俺の頼りの綱は、あのバイクでゴブリンどもに挑んだ不良二人だ。


 昨日、ダンジョンに挑んで手に入れた、剣とメイス。

 赤と紫の特攻服を着ている。


 背中の『天下無敵』と『勇往邁進』の金文字も実に頼もしい。


 なぜ、特攻服を学校に持ち込んでいたのか。

 それは、あえて聞かない。



「藤井、安心しろって! お前の女は、俺たちが守ってやんよ!」

「ヒュー! 禁断愛! パネっす!」



 思わず目を見開く。

 誤解だし、声が大きすぎる。



「ええっ!? 柊さんと藤井先生って、そういう関係だったんですか!」



 その上、武器が跳び箱の一番上の山口まで食いついてきた。



「あーー……。あの二人、やっぱりそうだったんだ?」

「……だよね。いつも二人でいたし」

「……俺も彼女欲しい」

「ダンジョンだ! ダンジョンで、モテモテのウハウハ!」



 校庭の注目が一斉に集まった。

 顔を引きつらせ、思わず一歩後ずさる。



「違っ……。」

「いや~~、照れちゃうね。先生」



 ひなたが俺の腕を取る。

 そのまま当然のように、俺の腕に絡みつくように腕を組んできた。


 柔らかい。

 とてもまずい。



「うおおおおっ!」

「きゃあああっ!」

「黒だ!」

「認めた! 認めたぞ!」

「完全に真っ黒だ!」

「判決、死刑!」

「我の闇より黒い……。さすが、マスター藤井!」



 校庭が一気にどよめきに変わった。

 校舎の廊下にも、何事かと生徒たちが窓辺に集まっている。


 校長がいた。

 かなりまずい。



「ち、違いますよ!」



 校長に向かって叫ぶ。


 校長が左手で目を覆う。

 ゆっくりと顔を背ける。

 右手で静かに親指を立てた。


 全身から嫌な汗が噴き出す。



「違う、違う、違あああああうっ!」



 俺は、吠えた。



「お前も調子に乗るな! 離れろおおお!」

「……あっ!?」

「えっ!?」



 だが、良かったかもしれない。


 生徒たちはダンジョンへの期待もあるが、不安もあるはずだ。

 少なくとも今だけは、その不安を忘れて笑っている。



「おい、今触ったぞ! 胸!」

「パネっす! 男っス!」

「あわわっ……。す、すごくすごい大胆です」

「や、闇は孤独を……。ふ、藤井先生、どんな感じですか?」



 緊張が解けた、幸先の良いスタート。

 その一役を買えたと思えば、少しくらいは我慢するべきなのだろう。



「……先生のえっち」

「ち、違う……。い、いや、違わないけど、違う!」



 やっぱり良くない。







 ――第一部、完。








 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。




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