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勉強会Ⅱ

本作品はカクヨムにも投稿しています


「ごめんごめん、お待たせ」

 

 お母さんに安奈あんなとのことを釘を刺し、部屋に戻ると2人は興味深そうに室内を眺めていた。

 部屋の真ん中には、普段は置いてないテーブルを置いてある。


 僕は学習机でいいとして、2人の勉強スペースを確保するためだ。


「片付いてんのな、しっかり」

「2人が来るってわかってるのに、掃除しないわけないでしょ」

「ま、そりゃそうだ」


 がさがさとワークやノートやら取り出して、坂本さかもとくんは意外にも真面目に勉強する構えを見せる。

 いや、そういう会なんだからそうあってくれる分にはなにも文句はないんだけど。


なばり先輩! これってルミレセンセーションの初回限定版じゃないですよね!? 持ってたんですか!?」

「あれ、言ったことなかったっけ」

「ソフト持ってることは知ってましたけど!」


 一方の久瀬くぜさんは僕の持ってるゲームソフトに夢中だ。


「ルミセンってあれか、お前が1年生のときにめっちゃ欲しがってバイトして買ったやつ」

「そうそう」

「私もあと1年生まれるのが早ければ、バイトでもなんでもして買ったのに……!」

「お小遣いで買えなかったんだ?」

「いろんなソフトや立体物を予約してて、ちょっとお小遣いが……」


 言いながら、久瀬さんは楽しそうに僕のコレクションを眺めている。

 楽しそうなのは良いんだけどさ。


「そろそろ始めよ? 久瀬さん、中間テストでもう赤点取ってるんでしょ?」

「うげっ、その話だれから……って、鈴奈すずなしかいないか……」


 久瀬さんは苦虫を嚙みつぶしたような表情を浮かべ、ここにはいない友達を恨むかのように窓の向こうを睨みつけていた。


「マジ? 1年の中間で赤点は相当ヤバくね? なんの教科?」

「数学です。私、中学の数学で既に3、40点台でしたからね? 高校数学なんて赤点余裕ですよ、ヨユー」

「なんで高得点側の構文なんだよ」

「そのパターンで点数低いことあるんだ」


 これは期末テストも相当マズいことになりそうだなぁ。

 そんなことを思いながら僕もワークを取り出し、手を付ける。


 それを見て、久瀬さんもため息をつきながらノートを取り出した。

 夢野ゆめのさんのリークいわく、教室では真面目に見えるように板書をしっかり写しているらしい。


 現代文とか社会科とか、覚えゲーの科目はそれである程度点数を確保しているみたいだけど、数学については公式の理解すら怪しいんだとか。


 数学は積み重ねの科目だから、中学校の数学で一度つまずいて、そこから全部ダメって感じになっちゃったんだろうなぁ。


 これは高校数学も苦労しそうだけど、残念だからそれを解決してあげられるほど僕の成績も要領もよくはない。


 今はただ、祈るばかり──。


「……隠先輩」

「なに? どこかわかんないところある? 僕も数学は得意ってわけじゃないけど」

「安奈ちゃんって誰ですか?」

「っ!? げほっ、げほっ……!」


 いきなりきたな……!

 ワークを進める手を止めて、僕は久瀬さんの方に振り返った。


 するとノートを開いたまま、僕を半目で見つめてくる。


「だって気になるじゃないですかー! さっき先輩、結構焦ってませんでした?」

「い、いや? そんなことないけどね?」

「むむむむ……怪しい、乙女の勘がなにかあると告げています」

「乙女の勘て」


 今どき言わないでしょ、そんな言葉。

 いやそんなことはどうでもよくて。


「別に大したことじゃないよ、安奈っていうのはそのー……幼馴染なんだ」

「幼馴染?」

「そうそう。小学生の頃によく遊んでたんだけど、今は引っ越しちゃってね。その子以外家に呼んだことある友達なんていないからさ、お母さんもあんなこと言い出したんだよ、きっと」


 ──嘘である。

 一部本当のこともあるけど。


「ふーん……よく家に呼んでいた、女の子の幼馴染ですか」

「今も仲いいわけ?」

「いや、今はもう疎遠になっちゃったよ」

「なぁ~んか怪しいなぁ。その幼馴染の写真ってないんですか?」

「ないない」

「ますます怪しい」

「2人も別に友達の写真とかないでしょ」

「ないな」

「ありますよ私は!」


 失礼な、と言いたげにぷんすこして久瀬さんはスマホを見せてくる。

 夢野さんと出かけたときかなにかの写真らしく、アニメキャラの等身大パネルと一緒にポーズをとっていた。


「まぁ女子はそういうのあるけど、男子はねぇだろ。まして異性の幼馴染の写真とか……あぁいや、でもお前が持ってなくてもお母さんが撮ってたりするんじゃね?」

「それです! さっそく聞きに行きましょうそうしましょう」

「ま、まずは勉強会! それが終わったらいいから!」


 さっそくリビングへ突撃しようとする久瀬さんを制止して、どうにか引き留める。


「えぇ~? 仕方ないですねぇ……」


 ぶつぶつ言いながら、久瀬さんは再びノートと向き合う。

 なんとか耐えた……かな?


 今のうちにお母さんにメッセージを飛ばしておこう。

 小学生の頃の安奈の写真、できれば今のイメージと結びつかないやつ。


 ……そんなやつあるかなぁ。

 いや、小学生の頃の今より明るい安奈なら誤魔化せるか……?

 誤魔化せると信じるしかないか……。

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