話してみると
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昼休み。
いつもなら坂本くんや久瀬さんとお昼ご飯を食べる僕だけど、今日は違った。
僕はクラスの陽キャ男子、小堀くんに連れられて非常階段にいた。
あんまり立ち入りをよしとされていない場所だけど、お構いなしというか、あまり気にしている様子はない。
「まぁ座れよ」
「あ、うん」
階段に腰かけると、少し上の段に小堀くんが座る。
……気まずい、というかちょっと怖い。
これからなにを言われるのかびくびくしていると、小堀くんはおにぎりを頬張ったあと、それを飲み込んでから目線を向けてきた。
「で、だ。お前さっきの話マジらしいけどよ、仲いいのか? 熱莉と」
「……えっと、いや別に、そんなことは……ない、よ?」
「なんで疑問形なんだよ」
「いやだって、そんなの聞くまでもないっていうか、さ」
僕と安奈の関係は知っている人はほとんどいない。
家が小学校の学区ギリギリだったこともあって、同じ中学や高校に進学した同級生が多くなかったからだ。
中学生のころにはもう僕も安奈もほとんど学校じゃ話をしなくなっていたから、本当に数えるほどしか知らないことだし、知っていても「昔は仲良かったよね」くらいだ。
だから当然、本当のことは言わない。
どこかでいつかバレるかもしれないけど、バレずに済めばそれにこしたことはないし。
「全然接点ないからさ、僕と熱莉さん。それに格ゲー教えたのも1回だけだよ」
「そうなのか? ……なんか早とちりしたな」
言うと、また小堀くんはおにぎりを頬張る。
僕もお弁当に手を付け始めた。
「お前最近、よく高瀬と話してるだろ」
「う、うん。まぁね。高瀬さんがよく話しかけてくれるからさ」
「なんつーか、そこつながりで熱莉が会話に混ざることもあるし、もしかしたらって思ったんだよな」
「ふーん……」
「アイツ、結構関りある男子相手でも基本塩対応っていうか、マジで興味示さないのにさ、お前が絡むと話に乗ってきやすいような気がして」
「ふ、ふーん……」
そうかな?
気付かなかったけど、そうなのかも。
僕は高校生活での安奈のことは、教室の中や人伝に聞く話でしか知らない。
僕の目に見えない、耳に入ってこないところでどんな風に過ごしているかは、まるで分らない。
僕の見てない部分を見てるだろう小堀くんが言うなら、それはやっぱりそうなんだろうけど。
「……聞いていいかな」
「なにを」
「僕を呼び出した理由。僕と熱莉さんの関係を聞いて、どうするつもりだったのかなって」
ちらっと窺うような目線を向けると、小堀くんは首をかしげて考えているようだった。
それからため息を吐いて、あきらめたように話し出した。
「まぁ、話の流れっつーか、気付いてるかもしんねぇけどよ。俺は熱莉が好きなんだよ」
やっぱり。
聞いておいてなんだけど、予想通りの答えではある。
席替えのときのリアクションとか、今回の僕と安奈の関係性を疑ったりとか、あとは前に安奈から聞いたちょっとアレな目線のこととか。
そうなんだろうなって思う理由はあった。
「それでまぁ、もしお前と熱莉が仲いいならちょっと、上手いこといけねぇかなってさ」
「そっか。その、なんかごめん。期待にそえなくて」
「なんで謝るんだよ。さっきも言ったけど、俺の早とちりだぞ」
言うと、小堀くんはさっきよりも深いため息をついて天を仰ぐ。
「熱莉さ、1年のときも同じクラスでさ、まぁ他の男子よりかは話す機会もあったし、高瀬とか何人かで遊びに行ったこともあるし、友達くらいだとは思ってるんだけどよ。他の関わりなさそうな連中といつまでも反応が変わんねぇ……ような気がすっからさ」
なのに同じクラスになって知り合ったばかりの僕相手には反応が違ったから、不安になったってところかな。
……なんていうか、こう、これは予想外な部分なんだけど。
「繊細なんだ」
「は?」
「えっ? あ、ごめんつい……!」
つい口に出してた……!
これはさすがに怒られるかも……!
「チッ……うっせーな、別にいいだろうが」
「えっ……」
これまた意外、小堀くんはそっぽを向いて悪態をつくだけで、怒ってはなさそうだった。
「繊細でも奥手でもなんとでも言いやがれ。とにかく俺は、お前が利用できるかできないか、それを確認したかっただけだ」
そういうと、小堀くんはもう僕には興味なんかないように残りのお昼ご飯を食べ始める。
昼休みは有限だ。
いろいろと気になることもあるけど、僕もお弁当の残りを食べる。
小堀くんの方が先に食べ終わって、なにも言わずに去っていった。
非常階段にひとり残った僕は、思わず深く息を吐く。
「変な緊張感あったなぁ……」
それにしても、だ。
安奈を好きな人、か。
安奈は間違いなく美少女で、それこそ小学校や中学校でも安奈に告白する男子は結構いた。
だから今更どうってわけでもないんだけど。
「……小学生や中学生の付き合うとは、意味合い変わってくるもんなぁ、高校生」
子供だけど、ちょっと大人。
高校生ってそんなものだと思ってる。
そう改めて意識した途端、思わずため息が出てしまった理由が僕にはわからなかった。




