第497話 「名を失った怪盗」
暗い部屋。
---
無数のモニターが、
---
静かに光っている。
---
その中央に、
---
一人の青年が座っていた。
---
黒いコート。
---
白い手袋。
---
胸元には、
---
アルトと同じ怪盗の紋章。
---
# ◆???
---
モニターに映る、
---
アルトの姿を見つめる。
---
---
◆小さく
「……大きくなったな。」
---
# ◆場面転換
---
地下施設。
---
アルトは、
---
停止した映像の前に立っている。
---
# ◆アルト
---
「ゼロ。」
---
---
「お前は知ってたんだろ。」
---
# ◆ゼロ
---
答えない。
---
# ◆アルト
---
「アキラが生きていること。」
---
# ◆ゼロ
---
静かにうなずく。
---
---
「知っていた。」
---
# ◆クロノ
---
「なら。」
---
---
「なぜ私には言わなかった。」
---
# ◆ゼロ
---
「言えば。」
---
---
「お前はアキラを探した。」
---
# ◆クロノ
---
「当然だ!」
---
# ◆ゼロ
---
「そして。」
---
---
「彼の居場所を。」
---
---
「敵にも知られる。」
---
# ◆静寂
---
アルトが口を開く。
---
# ◆アルト
---
「敵って誰だ。」
---
# ◆ゼロ
---
視線を落とす。
---
---
「二十年前。」
---
---
「私たちが盗もうとしたもの。」
---
---
「それを今も守っている連中だ。」
---
# ◆レイン
---
「企業……?」
---
# ◆ゼロ
---
「企業だけではない。」
---
---
「警察でもない。」
---
---
「国でもない。」
---
---
「もっと厄介なものだ。」
---
# ◆アルト
---
「何だよ。」
---
# ◆ゼロ
---
一拍。
---
---
「仕組みだ。」
---
# ◆静寂
---
「一人を消しても。」
---
「別の人間が同じことをする。」
---
「証拠を一つ盗んでも。」
---
「別の場所で書き換えられる。」
---
「二十年前。」
---
「私たちは敵を一人だと思っていた。」
---
---
「それが間違いだった。」
---
# ◆アルト
---
「だからアキラを隠した。」
---
# ◆ゼロ
---
「そうだ。」
---
---
「彼は。」
---
---
「その仕組みの中枢に近づきすぎた。」
---
# ◆場面転換
---
青年。
---
アキラ。
---
モニターの前で、
---
一枚の写真を手にしている。
---
そこには、
---
幼いアルトとアキラが写っている。
---
# ◆アキラ
---
写真を指でなぞる。
---
---
「約束。」
---
---
「覚えてるよ。」
---
# ◆異変
---
背後の扉が開く。
---
一人の女が入ってくる。
---
# ◆女
---
「アルトが思い出しました。」
---
# ◆アキラ
---
「ああ。」
---
# ◆女
---
「どうしますか?」
---
# ◆アキラ
---
少しだけ考える。
---
---
「まだ。」
---
---
「会わない。」
---
# ◆女
---
「なぜ?」
---
# ◆アキラ
---
モニターを見る。
---
---
そこには、
---
怪盗アルトの姿。
---
# ◆アキラ
---
「今の僕が会えば。」
---
---
「アルトは選ばなきゃいけなくなる。」
---
# ◆女
---
「何を?」
---
# ◆アキラ
---
静かに答える。
---
---
「怪盗でいるか。」
---
---
「僕を選ぶか。」
---
# ◆静寂
---
アキラは、
---
写真を伏せる。
---
# ◆アキラ
---
「だから。」
---
---
「僕は。」
---
---
「もう少しだけ。」
---
---
「悪役でいる。」
---
# ◆場面転換
---
地下施設。
---
アルトは、
---
古い予告状を見つめている。
---
# ◆アルト
---
「……ゼロ。」
---
「アキラは。」
---
「俺に何を盗ませようとしてる?」
---
# ◆ゼロ
---
静かに答える。
---
---
「真実だ。」
---
# ◆アルト
---
「またそれか。」
---
# ◆ゼロ
---
「違う。」
---
---
「二十年前に盗めなかった真実。」
---
---
「そして。」
---
---
「アキラが今も隠している真実だ。」
---
# ◆ラスト
---
アルトの手元にある、
---
古い予告状。
---
その裏側に、
---
今まで存在しなかった文字が浮かび上がる。
---
> **第二予告状**
>
> **今夜、午前零時。**
>
> **月影美術館。**
>
> **展示品――「失われた記憶」。**
>
> **予告する。**
>
> **怪盗アキラ。**
---
アルトは、
---
その名前を見つめる。
---
そして、
---
小さく笑った。
---
「……そういうことか。」
---
「お前も。」
---
「怪盗なんだな。」
---
月明かりの下。
---
新たな予告状が、
---
静かに揺れていた。
---
――続く。




