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影の盗賊(シャドウ・シーフ)  作者: アイライト


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633/700

第498話 「失われた記憶」

 午前零時。


---


 月影美術館。


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 閉館した館内には、


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 非常灯だけが灯っている。


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 中央展示室。


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 そこに、


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 一枚の絵が飾られていた。


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 タイトル。


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> **『失われた記憶』**


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 作者不明。


---


 制作年不明。


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 所有者不明。


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 ただ一つだけ、


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 説明文が添えられている。


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> **この絵を見た者は、忘れていたものを思い出す。**


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# ◆警備室


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 モニターを確認する警備員。


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「異常なし。」


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 その瞬間。


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 画面が、


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 真っ黒になる。


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# ◆警備員


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「……?」


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 次の瞬間。


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 モニターに、


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 一枚のカードが映る。


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> **今宵、失われた記憶を頂戴します。**

>

> **怪盗アルト**


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# ◆警備員


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「怪盗アルト……!」


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 館内に警報が鳴り響く。


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# ◆中央展示室


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 アルトは、


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 天井から静かに降りてくる。


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 黒いコート。


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 白い手袋。


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 いつもの怪盗姿。


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# ◆クロ


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『警備システム、完全に切ったよ。』


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# ◆レイン


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『監視カメラもループさせています。』


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# ◆アルト


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 絵の前に立つ。


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「さて。」


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「記憶を盗ませてもらおうか。」


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# ◆異変


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 絵の表面に、


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 文字が浮かぶ。


---


> **本当に盗めると思う?**


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# ◆アルト


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 笑う。


---


---


「盗めないなら。」


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---


「怪盗失格だ。」


---


# ◆異変


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 絵の中の景色が、


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 突然変わる。


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 美術館ではない。


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 古い街。


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 雨。


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 燃え上がる建物。


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# ◆アルト


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「……!」


---


# ◆映像


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 幼いアルト。


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 アキラ。


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 そして、


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 若いゼロ。


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 三人が、


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 燃える建物の前に立っている。


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# ◆ゼロ


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『走れ!』


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# ◆幼いアルト


---


『アキラは!?』


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# ◆ゼロ


---


『先に行け!』


---


# ◆アキラ


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 首を横に振る。


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『僕は残る。』


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# ◆幼いアルト


---


『嫌だ!』


---


# ◆アキラ


---


 笑う。


---


『約束しただろ?』


---


---


『どっちか一人でも怪盗になる。』


---


# ◆アルト


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 映像へ手を伸ばす。


---


---


「待て……。」


---


# ◆異変


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 映像が、


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 突然崩れる。


---


 黒いノイズ。


---


 そして、


---


 別の映像へ切り替わる。


---


# ◆???


---


 黒い影。


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 顔は見えない。


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『計画を変更する。』


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# ◆ゼロ


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『子どもたちはどうする?』


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# ◆???


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『一人は消す。』


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『もう一人は利用する。』


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# ◆アルト


---


「……誰だ。」


---


 映像の人物が、


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 ゆっくり振り返る。


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 顔が見える直前。


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 映像が停止する。


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# ◆静寂


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 アルトは、


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 絵を睨みつける。


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# ◆クロ


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『アルト……。』


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# ◆アルト


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「今の映像。」


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---


「本物か?」


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# ◆レイン


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『映像データを解析しています。』


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『でも……おかしい。』


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# ◆アルト


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「何が。」


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# ◆レイン


---


『これは映像じゃありません。』


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---


『記憶そのものです。』


---


# ◆静寂


---


 その時。


---


 展示室の奥から、


---


 拍手が聞こえた。


---


 パチ。


---


 パチ。


---


 パチ。


---


# ◆アルト


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 振り返る。


---


 誰もいない。


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 だが、


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 床には一枚のカード。


---


 黒いカード。


---


 そこには、


---


> **盗めた?**


---


 とだけ書かれていた。


---


# ◆アルト


---


 カードを拾う。


---


 裏返す。


---


 そこには、


---


> **次は、君自身の記憶を盗む。**


---


# ◆ラスト


---


 美術館の照明が、


---


 一斉に消える。


---


 完全な暗闇。


---


 そして、


---


 アルトの背後から、


---


 聞き覚えのある声が響く。


---


「久しぶり。」


---


 アルトが振り返る。


---


 そこには――


---


 誰もいない。


---


 ただ、


---


 幼い頃のアキラが描かれた、


---


 一枚の写真だけが置かれていた。


---


 写真の裏には、


---


 短い一文。


---


> **『次は、僕を盗んで。』**


---


――続く。


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