第493話 「始まりの記録」
地下施設。
---
最終保管庫。
---
重い扉が、
---
ゆっくりと開いていく。
---
中から現れたのは、
---
宝石でも、
---
金庫でもなかった。
---
一つの古びた記録媒体。
---
そして、
---
一枚の写真。
---
# ◆アルト
---
写真を拾い上げる。
---
そこには、
---
幼い少年が写っていた。
---
まだ怪盗でもない。
---
ただ普通の少年。
---
# ◆アルト
---
表情が固まる。
---
---
「……俺だ。」
---
# ◆クロ
---
『昔のアルト……?』
---
# ◆レイン
---
記録媒体を解析する。
---
---
「日付……。」
---
---
「二十年前です。」
---
# ◆静寂
---
アルトの顔から、
---
いつもの余裕が消える。
---
# ◆アルト
---
「待て。」
---
---
「俺が二十年前……?」
---
---
「そんな記憶はない。」
---
# ◆ゼロ
---
静かに答える。
---
---
「当然だ。」
---
---
「君は忘れさせられた。」
---
# ◆アルト
---
「誰に。」
---
# ◆ゼロ
---
一拍置く。
---
---
「私に。」
---
# ◆全員
---
「……!」
---
# ◆クロノ
---
ゼロを見る。
---
---
「お前が……?」
---
# ◆ゼロ
---
目を閉じる。
---
---
「あの日。」
---
---
「私は一人の少年を助けた。」
---
# ◆回想
---
二十年前。
---
燃え上がる研究施設。
---
泣き叫ぶ子ども。
---
逃げ場を失った人々。
---
その中に、
---
幼いアルトがいた。
---
# ◆ゼロ
---
「彼は。」
---
---
「すべてを見ていた。」
---
---
「大人たちが隠した真実を。」
---
# ◆アルト
---
「……。」
---
# ◆ゼロ
---
「だが。」
---
---
「その記憶は。」
---
---
「少年には重すぎた。」
---
# ◆クロノ
---
「だから消したのか。」
---
# ◆ゼロ
---
うなずく。
---
---
「記憶を奪った。」
---
---
「怪盗として。」
---
---
拳を握る。
---
---
「最低の盗みだ。」
---
# ◆静寂
---
アルトは、
---
しばらく何も言わなかった。
---
# ◆アルト
---
やがて、
---
静かに笑う。
---
---
「……なるほど。」
---
# ◆ゼロ
---
「怒らないのか。」
---
# ◆アルト
---
首を横に振る。
---
---
「怒ってる。」
---
# ◆ゼロ
---
顔を上げる。
---
# ◆アルト
---
「でも。」
---
---
「それだけじゃない。」
---
---
「知りたい。」
---
# ◆ゼロ
---
「何を。」
---
# ◆アルト
---
写真を見る。
---
---
「俺は。」
---
---
「何を見たんだ。」
---
# ◆異変
---
記録媒体が、
---
自動的に再生される。
---
古い映像。
---
ノイズだらけの画面。
---
そこに映ったのは――
---
幼いアルト。
---
そして、
---
もう一人の少年。
---
# ◆映像の少年
---
幼い声で笑う。
---
「アルト。」
---
「約束だよ。」
---
# ◆アルト
---
息が止まる。
---
---
「……誰だ。」
---
# ◆映像
---
少年は、
---
カメラへ向かって言う。
---
「いつか二人で。」
---
「世界一の怪盗になろう。」
---
# ◆静寂
---
映像の最後。
---
少年の顔がはっきり映る。
---
# ◆アルト
---
目を見開く。
---
「……嘘だろ。」
---
# ◆クロノ
---
「知っているのか。」
---
# ◆アルト
---
震える声で答える。
---
---
「忘れてた。」
---
---
「でも。」
---
---
「ずっと夢に出てきた。」
---
# ◆ラスト
---
映像の少年の名前。
---
記録には、
---
こう残されていた。
---
> **アキラ**
---
アルトが怪盗になった理由。
---
失われた記憶。
---
そして二十年前の事件。
---
すべての始まりは、
---
一人の少年との約束だった。
---
――続く。




