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影の盗賊(シャドウ・シーフ)  作者: A-LIGHT(I lie)


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629/672

第493話 「始まりの記録」

 地下施設。


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 最終保管庫。


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 重い扉が、


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 ゆっくりと開いていく。


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 中から現れたのは、


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 宝石でも、


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 金庫でもなかった。


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 一つの古びた記録媒体。


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 そして、


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 一枚の写真。


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# ◆アルト


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 写真を拾い上げる。


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 そこには、


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 幼い少年が写っていた。


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 まだ怪盗でもない。


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 ただ普通の少年。


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# ◆アルト


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 表情が固まる。


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「……俺だ。」


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# ◆クロ


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『昔のアルト……?』


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# ◆レイン


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 記録媒体を解析する。


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「日付……。」


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「二十年前です。」


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# ◆静寂


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 アルトの顔から、


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 いつもの余裕が消える。


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# ◆アルト


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「待て。」


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「俺が二十年前……?」


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「そんな記憶はない。」


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# ◆ゼロ


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 静かに答える。


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「当然だ。」


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「君は忘れさせられた。」


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# ◆アルト


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「誰に。」


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# ◆ゼロ


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 一拍置く。


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「私に。」


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# ◆全員


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「……!」


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# ◆クロノ


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 ゼロを見る。


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「お前が……?」


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# ◆ゼロ


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 目を閉じる。


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「あの日。」


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「私は一人の少年を助けた。」


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# ◆回想


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 二十年前。


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 燃え上がる研究施設。


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 泣き叫ぶ子ども。


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 逃げ場を失った人々。


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 その中に、


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 幼いアルトがいた。


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# ◆ゼロ


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「彼は。」


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「すべてを見ていた。」


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「大人たちが隠した真実を。」


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# ◆アルト


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「……。」


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# ◆ゼロ


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「だが。」


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「その記憶は。」


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「少年には重すぎた。」


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# ◆クロノ


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「だから消したのか。」


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# ◆ゼロ


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 うなずく。


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「記憶を奪った。」


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「怪盗として。」


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 拳を握る。


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「最低の盗みだ。」


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# ◆静寂


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 アルトは、


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 しばらく何も言わなかった。


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# ◆アルト


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 やがて、


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 静かに笑う。


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「……なるほど。」


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# ◆ゼロ


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「怒らないのか。」


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# ◆アルト


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 首を横に振る。


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「怒ってる。」


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# ◆ゼロ


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 顔を上げる。


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# ◆アルト


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「でも。」


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「それだけじゃない。」


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「知りたい。」


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# ◆ゼロ


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「何を。」


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# ◆アルト


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 写真を見る。


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「俺は。」


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「何を見たんだ。」


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# ◆異変


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 記録媒体が、


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 自動的に再生される。


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 古い映像。


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 ノイズだらけの画面。


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 そこに映ったのは――


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 幼いアルト。


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 そして、


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 もう一人の少年。


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# ◆映像の少年


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 幼い声で笑う。


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「アルト。」


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「約束だよ。」


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# ◆アルト


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 息が止まる。


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「……誰だ。」


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# ◆映像


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 少年は、


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 カメラへ向かって言う。


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「いつか二人で。」


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「世界一の怪盗になろう。」


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# ◆静寂


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 映像の最後。


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 少年の顔がはっきり映る。


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# ◆アルト


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 目を見開く。


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「……嘘だろ。」


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# ◆クロノ


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「知っているのか。」


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# ◆アルト


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 震える声で答える。


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「忘れてた。」


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「でも。」


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「ずっと夢に出てきた。」


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# ◆ラスト


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 映像の少年の名前。


---


 記録には、


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 こう残されていた。


---


> **アキラ**


---


 アルトが怪盗になった理由。


---


 失われた記憶。


---


 そして二十年前の事件。


---


 すべての始まりは、


---


 一人の少年との約束だった。


---


――続く。


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