第492話 「盗めなかった真実」
地下施設。
---
赤い警報灯が、
---
静かに点滅している。
---
ゼロ。
---
二十年前に消えた伝説の怪盗。
---
その姿を前に、
---
クロノは動けずにいた。
---
# ◆クロノ
---
拳を握る。
---
---
「……なぜだ。」
---
# ◆ゼロ
---
静かに振り返る。
---
# ◆クロノ
---
「なぜ、今まで姿を隠していた。」
---
---
「私は……。」
---
---
「お前が死んだと思って。」
---
---
「怪盗を止めるために生きてきた。」
---
# ◆ゼロ
---
少しだけ目を伏せる。
---
---
「知っている。」
---
# ◆クロノ
---
「なら……!」
---
# ◆ゼロ
---
遮るように言う。
---
---
「だから戻ってきた。」
---
---
「私の失敗を。」
---
---
「次の世代に押し付けないために。」
---
# ◆静寂
---
アルトは二人を見る。
---
---
長い時間をかけて、
---
壊れてしまった関係。
---
それでも、
---
まだ切れていない絆。
---
# ◆アルト
---
「二十年前。」
---
---
「何があった。」
---
# ◆ゼロ
---
しばらく黙る。
---
そして、
---
古い予告状を広げた。
---
# ◆ゼロ
---
「私は。」
---
---
「世界最大の不正を暴こうとした。」
---
# ◆映像
---
地下施設の壁に、
---
二十年前の記録が映し出される。
---
巨大企業。
---
政府機関。
---
裏で繋がった権力者たち。
---
そして、
---
その証拠を盗もうとする一人の怪盗。
---
# ◆ゼロ
---
「この証拠が公になれば。」
---
---
「多くの人間が救われると思った。」
---
# ◆クロノ
---
「だが。」
---
# ◆ゼロ
---
うなずく。
---
---
「私は選択を間違えた。」
---
# ◆静寂
---
映像が切り替わる。
---
炎。
---
崩れる建物。
---
逃げ惑う人々。
---
# ◆ゼロ
---
「証拠を奪うことだけを考えた。」
---
---
「そこにいた人々を見る余裕がなかった。」
---
# ◆アルト
---
黙って聞く。
---
# ◆ゼロ
---
「結果。」
---
---
「証拠は失われなかった。」
---
---
「だが。」
---
---
「救えなかった人がいた。」
---
# ◆クロノ
---
目を伏せる。
---
---
「だから……。」
---
---
「私が怪盗を裁く必要があると思った。」
---
# ◆ゼロ
---
「違う。」
---
---
「クロノ。」
---
---
「お前は。」
---
---
「自分を許せなかった私の代わりに。」
---
---
「怪盗を憎むことで逃げていただけだ。」
---
# ◆沈黙
---
クロノの表情が揺れる。
---
# ◆クロノ
---
「……違う。」
---
# ◆ゼロ
---
「なら答えろ。」
---
---
「なぜ二十年も。」
---
---
「私を待っていた。」
---
# ◆静寂
---
クロノは答えられない。
---
# ◆アルト
---
ゆっくり口を開く。
---
---
「お前ら。」
---
---
「まだ終わってないんだな。」
---
# ◆二人
---
アルトを見る。
---
# ◆アルト
---
「ゼロは失敗した。」
---
---
「クロノは止めようとした。」
---
---
「でも。」
---
---
「どっちも本当は。」
---
---
「同じものを守ろうとしてた。」
---
# ◆ラスト
---
その瞬間。
---
地下施設の最深部から、
---
新たな警告音が響く。
---
# ◆システム
---
『最終保管庫、開放。』
---
『封印資料、確認。』
---
『資料名――』
---
一拍。
---
『怪盗アルト誕生記録。』
---
# ◆アルト
---
「……俺?」
---
# ◆ゼロ
---
表情が変わる。
---
---
「まさか。」
---
# ◆クロノ
---
「そんなものが……。」
---
# ◆ゼロ
---
静かに呟く。
---
---
「アルト。」
---
---
「君は知らない。」
---
---
「君が怪盗になった理由には。」
---
---
「二十年前の事件が関わっている。」
---
――続く。




