第485話 「帰還」
警報音。
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赤い非常灯が、
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地下施設を染めていく。
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# ◆レイン
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「侵入経路を確認!」
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「ですが……。」
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「監視カメラに姿が映りません!」
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# ◆クロ
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『見えないってこと!?』
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# ◆怪盗狩り
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静かに目を閉じる。
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「違う。」
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「映らないのではない。」
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◆低く
「映せないんだ。」
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# ◆アルト
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「知ってる相手か。」
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# ◆怪盗狩り
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小さくうなずく。
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「忘れた日はありません。」
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# ◆静寂
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通路の奥から、
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ゆっくりと足音が近づいてくる。
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コツ……
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コツ……
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コツ……
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一定の間隔。
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焦りも、
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迷いもない。
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# ◆異変
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閉ざされていた鉄扉が、
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ひとりでに開いていく。
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誰も触れていない。
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それでも、
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鍵だけが外れていく。
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# ◆アルト
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目を細める。
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「鍵開けじゃない。」
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「鍵のほうが開きたがってる。」
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# ◆静寂
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やがて、
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一人の人物が姿を現した。
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黒いロングコート。
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白い革手袋。
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古びたシルクハット。
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その姿は、
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どこかアルトに似ていた。
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# ◆クロ
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『あれ……。』
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『怪盗……?』
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# ◆怪盗狩り
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震える声で、
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その名を呼ぶ。
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「……ゼロ。」
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# ◆アルト
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「ゼロ?」
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# ◆ゼロ
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男は静かに帽子を取る。
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その瞳には、
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敵意も、
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怒りもなかった。
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# ◆ゼロ
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◆穏やかに
「久しぶりだ。」
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「クロノ。」
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# ◆怪盗狩り
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怪盗狩り――クロノは、
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その場で立ち尽くす。
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# ◆クロ
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『生きてたの……?』
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# ◆ゼロ
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わずかに笑う。
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「死んだことになっていたほうが。」
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「都合が良かっただけだ。」
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# ◆アルト
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「お前が。」
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「二十年前の怪盗か。」
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# ◆ゼロ
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アルトを見る。
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その視線は、
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後輩を見るようでもあり、
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未来を見るようでもあった。
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# ◆ゼロ
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「君がアルトか。」
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「思っていたより。」
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「いい目をしている。」
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# ◆怪盗狩り(クロノ)
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声を震わせる。
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「なぜ……。」
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「なぜ今さら戻ってきた。」
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# ◆ゼロ
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ゆっくりと答える。
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「終わらせるためだ。」
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「二十年前。」
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「私が盗めなかったものを。」
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# ◆ラスト
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ゼロは懐から、
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一枚の古い予告状を取り出す。
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紙は黄ばみ、
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端は焼け焦げている。
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そこには、
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たった一行だけ記されていた。
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> **『今夜、世界から"真実"を盗み出す。』**
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アルトは息をのむ。
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二十年間、
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誰にも果たされなかった最後の予告状。
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その続きを巡る物語が、
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いま始まろうとしていた。
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――続く。




