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影の盗賊(シャドウ・シーフ)  作者: A-LIGHT(I lie)


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625/652

第483話 「裁きなき法廷」

静寂。


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 地下施設の最深部。


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 アルトと怪盗狩りは、


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 十メートルほどの距離を挟み、向かい合っていた。


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 どちらも武器を抜かない。


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# ◆怪盗狩り


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 ゆっくりと銀色のバッジを外し、


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 机の上へ置く。


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◆静かに


「今日は戦いに来たのではありません。」


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# ◆アルト


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 帽子のつばに触れる。


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「なら、何しに来た。」


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# ◆怪盗狩り


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 真っすぐアルトを見つめる。


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「あなたを裁きに来ました。」


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# ◆クロ


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『裁く……?』


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# ◆怪盗狩り


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 部屋の中央へ歩き出る。


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 床に白い線が浮かび上がる。


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 円形の紋様。


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 その中心には、一脚の椅子。


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# ◆怪盗狩り


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「ここは法廷です。」


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「裁判官はいません。」


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「検察官も弁護士もいません。」


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◆一言


「あるのは事実だけです。」


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# ◆アルト


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 迷うことなく椅子へ腰掛ける。


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# ◆レイン


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「アルト!」


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# ◆アルト


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 振り返らない。


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「いい。」


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「逃げる理由はない。」


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# ◆怪盗狩り


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 小さくうなずく。


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 指を鳴らすと、


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 空中に一枚の映像が映し出された。


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# ◆映像


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 十年前。


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 宝石店強盗事件。


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 アルトが宝石を盗み出した夜。


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 その混乱に乗じて、


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 一人の子どもが誘拐されていた。


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# ◆怪盗狩り


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「あなたは知りませんでした。」


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「ですが。」


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「結果として。」


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「救えなかった。」


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# ◆アルト


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 目を閉じる。


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「……ああ。」


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# ◆怪盗狩り


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 次の映像。


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 七年前。


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 アルトが盗み出した企業の機密データ。


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 その暴露で不正は明らかになった。


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 しかし、


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 倒産によって職を失った社員もいた。


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# ◆怪盗狩り


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「悪は暴かれました。」


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「ですが。」


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「生活を失った人もいました。」


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# ◆静寂


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 部屋が静まり返る。


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# ◆怪盗狩り


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 アルトを見据える。


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◆核心


「あなたは。」


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「人を救ってきた。」


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「同時に。」


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「人を傷つけてもきた。」


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「違いますか。」


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# ◆アルト


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 しばらく沈黙する。


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 やがて、


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 ゆっくりとうなずいた。


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「違わない。」


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# ◆クロ


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『アルト……。』


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# ◆怪盗狩り


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 少しだけ驚く。


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「否定しないのですか。」


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# ◆アルト


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 静かに立ち上がる。


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「否定したら。」


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「傷ついた奴らまで嘘になる。」


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「俺は英雄じゃない。」


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「失敗もする。」


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「間違えることもある。」


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# ◆怪盗狩り


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「ならば。」


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「怪盗を辞めるべきです。」


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# ◆アルト


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 首を横に振る。


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◆静かに


「辞めれば。」


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「俺が救えたはずの誰かも。」


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「今度は救われなくなる。」


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# ◆怪盗狩り


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 初めて言葉を失う。


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# ◆アルト


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「だから。」


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「裁かれるなら受ける。」


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「責任も背負う。」


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「でも。」


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 帽子をかぶり直し、


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 怪盗狩りを真っ直ぐ見据える。


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◆力強く


「誰かを救うことだけは、やめない。」


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# ◆ラスト


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 長い沈黙が流れる。


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 やがて怪盗狩りは、


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 静かに目を閉じた。


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「……その答えを。」


---


「私は二十年間、待っていました。」


---


 その一言で、


---


 この裁きが単なる復讐ではないことを、


---


 アルトは悟るのだった。


---


――続く。


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