第482話 「封印された事件」
地下へ続く階段。
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アルトは静かに足を踏み入れる。
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コツ……
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コツ……
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靴音だけが、
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暗い通路に反響する。
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# ◆レイン
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「地下深度、およそ三十メートル。」
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「人工施設です。」
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# ◆クロ
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『こんなの、地図に載ってないよ。』
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# ◆アルト
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「載せられない場所なんだろ。」
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# ◆最深部
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やがて、
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巨大な鉄扉が姿を現す。
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扉には、
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無数の新聞記事が貼り付けられていた。
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銀行強盗。
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美術品盗難。
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誘拐事件。
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横領事件。
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その中に、
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一枚だけ、
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赤い糸で囲まれた記事がある。
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# ◆アルト
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ゆっくりと近づく。
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記事の日付は、
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二十年前。
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> **"怪盗X、爆発事故で死亡か"**
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# ◆アルト
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目を見開く。
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「……X?」
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# ◆オーサー
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記事を見つめる。
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「これは……。」
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「怪盗アルトより前の時代です。」
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# ◆クロ
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『でも変だよ。』
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『新聞なのに写真が切り抜かれてる。』
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# ◆異変
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その瞬間、
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施設全体に放送が響く。
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# ◆怪盗狩り
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『ようこそ。』
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『最後の証拠保管庫へ。』
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# ◆アルト
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「ここは何だ。」
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# ◆怪盗狩り
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『怪盗が救った事件ではない。』
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『怪盗が壊した事件を保管する場所だ。』
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# ◆静寂
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アルトは黙る。
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# ◆怪盗狩り
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『君は怪盗の美学を語る。』
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『希望を返すと語る。』
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『ならば見ろ。』
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『救えなかった者たちを。』
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# ◆異変
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壁一面のモニターが点灯する。
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ある事件では、
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怪盗の介入によって犯人を取り逃がした。
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ある事件では、
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盗まれた証拠が裁判で使えなくなった。
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ある事件では、
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救われた一人の裏で、
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別の誰かが犠牲になっていた。
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# ◆レイン
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「こんな記録……。」
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「誰も公開していません。」
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# ◆アルト
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画面を見つめたまま、
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一言も発しない。
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# ◆怪盗狩り
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『君は正義ではない。』
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『英雄でもない。』
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『君は選び続けた。』
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『だから、救われなかった者もいる。』
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# ◆静寂
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その言葉は、
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アルトの胸に重く響く。
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怪盗である以上、
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すべての人を救うことはできない。
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その現実から、
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目を背けることはできなかった。
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# ◆ラスト
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暗闇の奥から、
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一人の男がゆっくりと姿を現す。
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黒いスーツ。
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白い手袋。
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胸には一枚の銀色のバッジ。
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男はアルトを見据え、
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静かに名乗った。
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「私は怪盗狩り。」
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「怪盗を憎んでいるのではない。」
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「怪盗という存在を、終わらせるために来た。」
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アルトは帽子のつばに手を添えた。
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初めて、
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怪盗という生き方そのものが裁かれる戦いが始まる。
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――続く。




