第481話 「怪盗狩り」
廃遊園地。
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錆びついた門をくぐる。
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アルトの足音だけが、
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夜の静寂に響いていた。
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# ◆レイン
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通信を開く。
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「周囲に熱源なし。」
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「人の気配もありません。」
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# ◆クロ
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『でも、誰かが見てる。』
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# ◆アルト
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静かに笑う。
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◆一言
「それが狙いだ。」
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# ◆異変
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園内の照明が、
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一斉に点灯する。
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止まっていたはずの観覧車が、
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ゆっくりと回り始めた。
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メリーゴーランドから、
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古びたオルゴールの音色が流れる。
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# ◆園内放送
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『歓迎します。』
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『怪盗アルト。』
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『私はあなたを盗みに来ました。』
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# ◆アルト
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「名前は?」
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# ◆園内放送
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『ありません。』
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『怪盗を狩る者に、名は不要です。』
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# ◆クロ
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『怪盗狩り……?』
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# ◆アルト
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目を細める。
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「なるほど。」
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「依頼人じゃないな。」
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# ◆静寂
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その瞬間。
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観覧車のゴンドラが一つ開く。
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中から、
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黒い封筒が落ちた。
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# ◆アルト
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拾い上げる。
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中には一枚の写真。
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そこに写っていたのは、
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十年前の新聞記事だった。
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> **『世紀の怪盗、逮捕』**
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写真の男は、
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手錠を掛けられ、
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それでも笑っていた。
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# ◆レイン
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「データベースを検索……。」
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「おかしい。」
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「この記事自体が存在しません。」
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# ◆オーサー
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写真を見つめる。
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「記録から消された事件……。」
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# ◆アルト
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新聞記事を折りたたむ。
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◆静かに
「こいつが始まりか。」
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# ◆園内放送
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『第一問。』
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『怪盗とは、何ですか?』
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# ◆クロ
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『クイズ!?』
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# ◆アルト
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迷わず答える。
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◆一言
「盗む奴だ。」
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# ◆園内放送
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沈黙。
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数秒後、
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オルゴールが止まる。
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『不正解。』
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# ◆異変
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地面が震える。
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遊園地の中央にあった噴水が割れ、
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地下へ続く巨大な階段が現れる。
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# ◆園内放送
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『怪盗は、盗む者ではない。』
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『返す者だ。』
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『奪われたものを、本来あるべき持ち主へ返す者。』
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# ◆アルト
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その言葉に、
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表情が変わる。
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湊の依頼。
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これまで救ってきた人々。
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自分は確かに、
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「盗む」ことで、
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誰かへ何かを返してきた。
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# ◆アルト
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小さく笑う。
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「……一本取られた。」
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# ◆ラスト
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アルトは地下へ続く階段を見下ろす。
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そこには、
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無数の予告状が散らばっていた。
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すべて、
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差出人は同じ。
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> **怪盗狩り**
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そして、
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一番奥に置かれた最後の予告状には、
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ただ一行だけ記されていた。
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> **『本当の怪盗になりたければ、過去を盗み返せ。』**
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アルトは静かにその予告状を手に取る。
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怪盗狩りが求めているのは、
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財宝ではない。
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アルト自身も知らない、
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"失われた事件"だった。
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――続く。




