第478話 「盗めないもの」
深夜。
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総合病院。
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白い廊下に、
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アルトは警備員へ紛れるように歩いていた。
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# ◆レイン
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イヤホン越しに報告する。
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「監視カメラ十二台。」
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「警備員は六人。」
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「侵入経路、確保しました。」
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# ◆アルト
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軽く笑う。
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◆一言
「盗みにしちゃ、ずいぶん物々しいな。」
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# ◆クロ
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『患者さんには迷惑かけないでよ?』
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# ◆アルト
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「当然。」
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「怪盗は静かに仕事する。」
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# ◆病室
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四〇七号室。
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写真に写っていた少年は、
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窓の外を見つめたままだった。
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# ◆アルト
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ノックをする。
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「入っていいか?」
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# ◆少年
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返事はない。
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それでも、
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小さくうなずいた。
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# ◆アルト
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病室へ入り、
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窓際へ並ぶ。
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◆笑う
「夜景、好きなのか?」
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# ◆少年
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「……別に。」
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# ◆静寂
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しばらく、
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会話は続かなかった。
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# ◆アルト
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「予告状を出しに来た。」
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# ◆少年
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初めてアルトを見る。
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「……予告状?」
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# ◆アルト
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胸ポケットから一枚のカードを取り出す。
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そこには、
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> **予告状**
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> 今夜。
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> あなたの笑顔を盗み返します。
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> 怪盗アルト
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# ◆少年
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思わず吹き出す。
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「笑顔を……盗み返す?」
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# ◆アルト
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「そう。」
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「盗まれた物は、取り返すのも怪盗の仕事だ。」
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# ◆少年
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少しだけ口元が緩む。
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「変な人。」
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# ◆アルト
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「よく言われる。」
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# ◆少年
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予告状を見つめる。
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「でも。」
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「笑顔なんて、もうない。」
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# ◆アルト
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静かに椅子へ座る。
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◆一言
「誰に盗まれた?」
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# ◆少年
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長い沈黙。
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やがて、
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震える声で答えた。
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「……僕だ。」
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# ◆静寂
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その一言だけで、
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アルトはすべてを悟った。
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誰かに傷つけられたのではない。
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少年は、
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自分自身を責め続けていた。
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# ◆アルト
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帽子を深くかぶる。
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◆静かに
「なら。」
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「今回の相手は、お前自身だ。」
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# ◆ラスト
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アルトは病室の窓を開ける。
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夜風が静かに吹き込む。
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怪盗アルトが盗むべきものは、
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宝石でも、
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運命でもない。
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たった一人の少年を縛る、
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見えない"罪悪感"だった。
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――続く。




