第473話 「予告状の夜」
夜。
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世界中の空へ、
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黄金の予告状が舞う。
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誰が配ったのか。
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誰も知らない。
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それでも、
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カードは必要な人の手にだけ届いていた。
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# ◆少女
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病室の窓際。
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震える手で予告状を開く。
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> **あなたの絶望を、今夜いただきます。**
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少女は苦く笑う。
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「そんなこと……。」
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「できるわけない。」
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# ◆青年
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就職活動に失敗し続けた青年。
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机に突っ伏していた視線の先に、
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一枚の黄金のカードが落ちる。
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# ◆老人
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写真立てを抱え、
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一人で涙を流す老人。
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その肩にも、
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静かに予告状が舞い降りる。
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# ◆世界
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同じ夜。
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何万枚もの予告状が、
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世界中へ届いていた。
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# ◆忘却図書館
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アルトは静かに目を閉じる。
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# ◆オーサー
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「本当にやるんですね。」
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# ◆アルト
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笑う。
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◆一言
「予告したからな。」
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# ◆フットノート
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「ですが。」
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「絶望は宝石ではありません。」
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「どうやって盗むのですか。」
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# ◆アルト
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帽子を押さえる。
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◆静かに
「盗みってのは。」
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「相手から奪うことじゃない。」
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◆続き
「相手が手放したくなるようにすることだ。」
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# ◆オーサー
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その言葉に目を見開く。
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# ◆アルト
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「だから俺は。」
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◆核心
「誰の心にも、無理やり手は突っ込まない。」
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「絶望を捨てるかどうかは。」
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◆一言
「本人が決める。」
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# ◆静寂
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その瞬間。
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世界中の黄金の予告状が、
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一斉に白い光へ変わる。
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しかし、
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光ったカードもあれば、
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何も変わらないカードもあった。
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# ◆アーカイブ
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「反応が違う……?」
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# ◆境界執行者
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『解析完了』
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『受け入れた者には変化が発生』
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『拒絶した者には変化なし』
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# ◆アルト
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静かにうなずく。
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◆一言
「それでいい。」
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# ◆ラスト
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怪盗は強奪しない。
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心の奥底にある扉を開く鍵を示すだけ。
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絶望を手放すか。
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抱え続けるか。
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その選択は、
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誰にも盗めない。
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アルトは夜空を見上げる。
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「さて。」
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「次は、俺自身の絶望を盗みに行く。」
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その言葉を残し、
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アルトは静かに歩き出した。
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――続く。




