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影の盗賊(シャドウ・シーフ)  作者: A-LIGHT(I lie)


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613/616

第471話 「盗む理由」

 予告状。


---


 古びた紙は、


---


 アルトの手の中で静かに震えていた。


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# ◆アルト


---


 ゆっくりと裏返す。


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---


 そこには、


---


 一文だけ書かれていた。


---


> **あなたが最初に盗んだものを思い出せ。**


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# ◆静寂


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 その瞬間、


---


 世界が白く染まる。


---


# ◆回想


---


 幼いアルト。


---


 まだ怪盗ではない、


---


 一人の少年。


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 雨の降る路地裏。


---


 少年は、


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 膝を抱えて座り込んでいた。


---


# ◆少年


---


「……。」


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 何も言わない。


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 ただ、


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 泣くことさえできなかった。


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# ◆???


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 誰かが、


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 少年の前に傘を差し出す。


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# ◆声


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「どうした?」


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# ◆少年


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「……全部。」


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「なくなった。」


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# ◆声


---


 優しく笑う。


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「違う。」


---


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◆一言


「まだ残ってる。」


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# ◆少年


---


「何が。」


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# ◆声


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 少年の胸へ、


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 そっと指を当てる。


---


---


◆静かに


「諦めてない心だ。」


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# ◆静寂


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 景色が切り替わる。


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 少年は立ち上がる。


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 落ちていた一枚のカードを拾う。


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---


 そこには、


---


 手書きでこう記されていた。


---


> **『怪盗は、誰かの絶望を盗む。』**


---


# ◆現在


---


 アルトは目を閉じる。


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◆小さく


「そうだったのか……。」


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# ◆男


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 静かにうなずく。


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◆一言


「君は宝石から始まった怪盗じゃない。」


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「最初に盗んだものは。」


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◆核心


「誰かの絶望だった。」


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# ◆アルト


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 帽子のつばを押し上げる。


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 その表情には、


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 迷いがなかった。


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# ◆アルト


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◆静かに


「だから俺は。」


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「希望だけを残してきた。」


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# ◆男


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 満足そうに笑う。


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◆一言


「それでいい。」


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# ◆異変


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 黒い金庫が、


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 ゆっくりと音を立てて開く。


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 ギィ……


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 中には、


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 宝石も、


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 金貨も、


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 武器もなかった。


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 ただ一枚、


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 真っ白なカードだけが置かれていた。


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# ◆アルト


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 カードを手に取る。


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---


 何も書かれていない。


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# ◆男


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 静かに告げる。


---


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◆核心


「そのカードは。」


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「まだ書かれていない予告状だ。」


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---


「君が最後に盗むものを書き込め。」


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# ◆ラスト


---


 白紙の予告状。


---


 それは、


---


 怪盗アルトだけに許された、


---


 世界で一枚しか存在しない予告状だった。


---


 アルトはペンを握る。


---


 そして、


---


 最初の一文字を書こうとした、その瞬間――。


---


 部屋全体が激しく揺れ始める。


---


――続く。


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