第470話「最初の怪盗」
白い光。
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視界がゆっくりと晴れていく。
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アルトが目を開くと、
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そこは図書館でも、
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白い空間でもなかった。
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石畳の屋上。
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夕焼けに染まる街並み。
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そして、
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一人の男がフェンスにもたれかかっていた。
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黒いロングコート。
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使い込まれたシルクハット。
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右手には一本の古びたステッキ。
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# ◆???
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男は振り返り、
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穏やかに笑う。
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◆一言
「遅かったね。」
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# ◆アルト
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短剣を構える。
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◆低く
「誰だ。」
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# ◆???
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男は帽子を軽く持ち上げる。
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◆静かに
「私は怪盗だ。」
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「ただ、それだけだよ。」
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# ◆アルト
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「名前は。」
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# ◆???
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一瞬だけ考え、
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苦笑する。
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◆一言
「忘れた。」
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# ◆静寂
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アルトの表情が険しくなる。
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# ◆???
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男は空を見上げる。
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◆続き
「いや。」
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「忘れたんじゃない。」
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◆核心
「必要なくなった。」
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# ◆アルト
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「意味が分からねぇ。」
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# ◆男
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ステッキで街を指す。
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◆静かに
「怪盗は。」
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「宝を盗む。」
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「希望を盗む。」
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「運命を盗む。」
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◆間
「だが最後には。」
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◆核心
「自分の名前さえ置いていく。」
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# ◆アルト
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「……。」
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# ◆男
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アルトへ歩み寄る。
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◆一言
「君も、その時が来る。」
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# ◆アルト
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「つまり。」
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◆続き
「俺は名前を失うのか。」
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# ◆男
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首を横に振る。
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◆静かに
「違う。」
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「名前に縛られなくなる。」
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# ◆異変
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その瞬間、
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男の姿が一瞬だけ揺らぐ。
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若い姿。
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老人の姿。
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女性。
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子ども。
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無数の姿へ変化し、
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再び一人の男へ戻る。
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# ◆アルト
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◆驚き
「今のは……。」
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# ◆男
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◆穏やかに
「私は一人じゃない。」
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「歴代すべての怪盗の記憶。」
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「その集合体だ。」
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# ◆静寂
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アルトは短剣を下ろす。
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# ◆男
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黒い金庫へ目を向ける。
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◆低く
「その中には宝なんてない。」
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# ◆アルト
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「じゃあ何がある。」
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# ◆男
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アルトを真っ直ぐ見つめる。
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◆核心
「君が怪盗である理由だ。」
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# ◆ラスト
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金庫の鍵が、
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ひとりでに回り始める。
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長い年月、
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誰にも開けられなかった最後の金庫。
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その扉が、
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ゆっくりと開き始めた。
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そして中から、
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一枚の古びた予告状が風に乗って舞い上がる。
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> **『最後の盗みは、自分自身から始まる。』**
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アルトは静かにその予告状を受け止めた。
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――続く。




