第447話 「静かな空間」
白い光を抜ける。
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アルトの目の前に広がっていたのは、
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どこまでも静かな空間だった。
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天井も壁も見えない。
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ただ、一脚の椅子と、
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一枚の机だけが置かれている。
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# ◆机
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机の上には、
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二つのティーカップ。
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湯気が静かに立ち上っていた。
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# ◆???
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「冷める前にどうぞ。」
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# ◆アルト
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声の方へ視線を向ける。
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一人の青年が椅子に座っていた。
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黒いスーツ。
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黒い手袋。
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仮面は付けていない。
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穏やかな笑み。
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年齢はアルトと同じくらい。
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# ◆青年
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ゆっくり立ち上がる。
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◆一礼
「初めまして。」
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◆名乗る
「私は《オーサー》。」
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# ◆静寂
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互いに視線を交わす。
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だが、
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殺気はない。
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# ◆アルト
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◆小さく
「ずいぶん普通の奴だな。」
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# ◆オーサー
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苦笑する。
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◆続き
「よく言われます。」
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# ◆アルト
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「俺をさらってまで何の用だ。」
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# ◆オーサー
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椅子へ座るよう促す。
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◆静かに
「戦う前に。」
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「話がしたかった。」
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# ◆アルト
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少し警戒しながらも腰を下ろす。
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# ◆オーサー
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ティーカップを手に取る。
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◆続き
「あなたは怪盗です。」
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「私は違う。」
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# ◆アルト
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「違う?」
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# ◆オーサー
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◆静かに
「私は。」
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◆一言
「世界の編集者です。」
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# ◆アルト
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「編集者……。」
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# ◆オーサー
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机へ一冊の本を置く。
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真っ白な表紙。
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タイトルだけが刻まれている。
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**『世界』**
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# ◆オーサー
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「世界とは一冊の物語です。」
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「誰かが選び。」
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「誰かが失い。」
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「誰かが泣く。」
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# ◆アルト
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「だから書き換える?」
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# ◆オーサー
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静かにうなずく。
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◆続き
「ええ。」
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「悲劇を消し。」
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「後悔を消し。」
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「選ばれなかった未来も残す。」
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◆一言
「誰も失わない世界を作るために。」
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# ◆アルト
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しばらく黙る。
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そして、
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静かに尋ねる。
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◆続き
「その世界で。」
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「笑えるのか。」
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# ◆オーサー
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少しだけ表情が止まる。
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# ◆アルト
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◆続き
「悲しみも。」
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「失敗も。」
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「選択もない世界で。」
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◆一言
「本当に生きてるって言えるのか。」
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# ◆静寂
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オーサーは答えない。
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ただ、
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ティーカップを見つめる。
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# ◆オーサー
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◆小さく
「……やはり。」
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「あなたなら、そう答えますか。」
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# ◆アルト
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「俺は。」
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◆笑う
「完璧な世界なんて盗まない。」
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◆続き
「不完全だから守る価値がある。」
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# ◆ラスト
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穏やかな対話は終わる。
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オーサーは静かに立ち上がり、
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白い本へ手を置く。
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◆オーサー
「では。」
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「互いの答えを証明しましょう。」
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二人は同時に一歩踏み出す。
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思想と思想。
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怪盗と編集者。
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物語の未来を賭けた戦いが、
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ついに始まる。
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――続く。




