第445話 「影の回廊」
闇。
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上も、
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下も、
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左右さえ存在しない。
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アルトは静かに目を開けた。
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# ◆アルト
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◆小さく
「……ここが。」
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◆一言
「影の中か。」
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# ◆空間
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足元だけが黒い床となり、
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その先には無数の扉が並んでいた。
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古びた木の扉。
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鉄の扉。
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豪華な金色の扉。
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どれも形が違う。
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# ◆声
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「ようこそ。」
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静かな声が響く。
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# ◆アルト
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「姿を見せろ。」
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# ◆???
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闇の奥から、
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一人の青年が歩いてくる。
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黒いスーツ。
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黒い手袋。
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そして、
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銀色の仮面。
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# ◆青年
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◆一礼
「初めまして。」
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◆名乗る
「私は《フットノート》。」
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◆続き
「オーサー様に仕える者です。」
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# ◆アルト
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◆笑う
「最近、名乗る奴が増えたな。」
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# ◆フットノート
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「怪盗には礼儀が必要でしょう。」
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# ◆アルト
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「お前は怪盗じゃない。」
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# ◆フットノート
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少しだけ笑う。
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◆一言
「その通りです。」
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◆続き
「私は怪盗ではなく。」
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◆一言
「影です。」
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# ◆回廊
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無数の扉が、
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一斉に開き始める。
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# ◆アルト
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中をのぞく。
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一つ目。
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幼い頃の自分。
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二つ目。
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初めて盗みに成功した夜。
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三つ目。
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仲間と笑い合った日々。
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# ◆アルト
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◆小さく
「記憶……。」
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# ◆フットノート
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頷く。
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◆説明
「ここは影の回廊。」
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「人の過去。」
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「後悔。」
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「願い。」
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「すべてが保管されています。」
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# ◆アルト
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「趣味の悪い倉庫だ。」
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# ◆フットノート
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◆静かに
「ですが。」
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◆続き
「主は宝には興味がありません。」
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◆一言
「人の『可能性』を集めているのです。」
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# ◆アルト
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眉をひそめる。
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「可能性?」
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# ◆フットノート
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開いた扉の一つを指差す。
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そこには、
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怪盗にならなかった未来のアルト。
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平凡な会社員として働く姿。
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# ◆アルト
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「……。」
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# ◆フットノート
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◆続き
「こちらは。」
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「仲間を失った未来。」
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別の扉には、
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一人で戦い続けるアルト。
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# ◆フットノート
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「こちらは。」
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「怪盗を辞めた未来。」
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# ◆アルト
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静かに目を閉じる。
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# ◆フットノート
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「すべて。」
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「あなたが選ばなかった可能性です。」
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# ◆アルト
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◆笑う
「だから何だ。」
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# ◆フットノート
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◆静かに
「主は、それらすべてを守ろうとしている。」
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◆一言
「一つも失われない世界を作るために。」
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# ◆静寂
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アルトは、
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目の前の無数の扉を見つめる。
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どれも、
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自分だったかもしれない人生。
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# ◆ラスト
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オーサーが盗もうとしているもの。
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それは宝でも、
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人でもない。
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"選ばれなかった未来"そのものだった。
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アルトは初めて、
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敵の理想の一端を知る。
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――続く。




