第443話 「資格を盗む怪盗」
地下展示室。
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《夜鴉の羅針盤》は、
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まだガラスケースの中にあった。
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しかし。
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番人・レイヴンは、
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膝をついたまま動けずにいた。
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# ◆レイン
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「遺産は残ってる!」
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「なのに、何が盗まれたんだ?」
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# ◆レイヴン
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震える手で胸元を押さえる。
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◆小さく
「……感じない。」
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「羅針盤との繋がりが。」
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# ◆ノワール
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「繋がり?」
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# ◆レイヴン
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静かに目を閉じる。
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◆説明
「番人は代々、遺産と契約を結ぶ。」
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「盗むためではない。」
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「守るための契約だ。」
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# ◆アルト
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「その契約を盗まれたってことか。」
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# ◆レイヴン
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力なくうなずく。
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# ◆クロ
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『そんなこと、本当にできるの!?』
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# ◆アーカイブ
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苦い表情を浮かべる。
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◆静かに
「記録にはありません。」
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「ですが……。」
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◆続き
「前例がないから、不可能とは言えません。」
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# ◆その時
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展示ケースの中の《夜鴉の羅針盤》が、
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ゆっくりと回転を始める。
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# ◆セラ
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『反応してる!』
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# ◆羅針盤
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針は北を指さない。
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ゆっくりと回り続け、
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やがて一点で止まる。
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# ◆クロ
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『方角を示してる!』
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# ◆アルト
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針の先を見る。
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◆小さく
「追えってことか。」
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# ◆アーカイブ
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首を振る。
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◆一言
「違います。」
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◆続き
「新しい番人を選ぼうとしている。」
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# ◆静寂
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羅針盤の針が、
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ゆっくりと動く。
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レイヴンを通り過ぎ。
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警部も。
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レインも。
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ノワールも。
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カイザーも。
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そして。
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# ◆アルト
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針が、
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アルトの前で止まる。
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# ◆全員
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「!!」
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# ◆レイヴン
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驚きの表情で見上げる。
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◆かすれ声
「あり得ない……。」
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「契約は一族しか結べないはずだ。」
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# ◆アルト
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苦笑する。
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◆一言
「俺は盗みに来たんだけどな。」
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# ◆異変
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《夜鴉の羅針盤》が、
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淡い青い光を放つ。
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ケースの鍵が、
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独りでに外れた。
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# ◆アーカイブ
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◆静かに
「選ばれました。」
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「遺産は血筋ではなく。」
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◆一言
「意思を選んだ。」
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# ◆ラスト
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アルトはゆっくりと、
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《夜鴉の羅針盤》へ手を伸ばす。
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その瞬間、
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館内にもう一枚の予告状が舞い落ちる。
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> **予告**
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> 新しい番人を、
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> 今夜いただく。
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> ――オーサー
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標的は遺産ではない。
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今度は、
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アルト自身だった。
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――続く。




