第442話 「夜鴉の番人」
午後十一時。
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海沿いに建つ、
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石造りの博物館。
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《夜鴉の羅針盤》は、
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地下展示室に保管されていた。
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# ◆地下展示室
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重厚な鉄扉。
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幾重にも張り巡らされた警備網。
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そして、
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展示ケースの前に立つ一人の男。
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# ◆???
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黒いロングコート。
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顔を覆う漆黒の仮面。
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胸元には一枚の古びた予告状。
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# ◆男
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◆静かに
「遅かったな。」
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# ◆アルト
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歩みを止める。
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◆小さく
「お前が番人か。」
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# ◆男
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ゆっくりとうなずく。
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◆一言
「私は《レイヴン》。」
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◆続き
「《夜鴉の羅針盤》を百年以上守り続ける一族の末裔だ。」
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# ◆レイン
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「百年以上……。」
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# ◆レイヴン
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展示ケースへ視線を向ける。
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◆静かに
「宝ではない。」
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◆続き
「約束を守っている。」
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# ◆アルト
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少し笑う。
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◆一言
「その考え方、嫌いじゃない。」
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# ◆突然
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館内の照明が一斉に消える。
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# ◆クロ
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『停電!?』
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# ◆セラ
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『違う! 電源は生きてる!』
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『光だけが消されてる!』
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# ◆静寂
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闇が展示室を包み込む。
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誰の姿も見えない。
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# ◆声
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「予告どおり。」
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「いただこう。」
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# ◆オーサー
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どこからともなく声だけが響く。
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# ◆アルト
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目を閉じる。
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◆小さく
「気配は……。」
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# ◆レイヴン
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「来る。」
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# ◆一瞬
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ガラスケースが砕け散る。
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甲高い警報音。
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# ◆警報
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『ケース破損!』
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『遺産が移動しました!』
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# ◆レイン
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「もう盗まれたのか!?」
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# ◆アルト
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破壊されたケースを見つめる。
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しかし、
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その表情は変わらない。
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# ◆アルト
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◆静かに
「……違う。」
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# ◆レイン
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「何が?」
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# ◆アルト
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床を指差す。
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砕けたガラスの中央。
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そこには、
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一枚の黒い羽根が落ちていた。
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# ◆レイヴン
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羽根を拾い上げる。
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◆低く
「これは……私の羽根だ。」
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# ◆全員
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「!?」
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# ◆レイヴン
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ゆっくり拳を握る。
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◆続き
「盗まれたのは遺産ではない。」
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◆一言
「私の"守る資格"だ。」
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# ◆静寂
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展示ケースの中を見つめるアルト。
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そこには、
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《夜鴉の羅針盤》が、
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まだ置かれたままだった。
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# ◆ラスト
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オーサーは、
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宝を盗まなかった。
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奪ったのは、
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「番人」という存在そのもの。
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怪盗の歴史を崩す盗みが、
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静かに始まっていた。
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――続く。




